第11話 マヨネーズは定番だよね。
宮廷公文書館。
先代の勇者が、たった3年前に召喚されていたとは。しかも、死因は毒キノコ。チート持ちとは、いったい何なのか。
「燈さん。こんな短期間で、また勇者が必要になったんですか? やっぱり、それほど魔族が脅威なのでしょうか」
「それはセレスティア王女様の趣味……いえ、聡明なる王女様の、深謀遠慮あってのことです」
「……今、趣味って言いませんでした?」
「いいえ、言っていません」
燈の好感度:32→37
(なんで上がるんだよ。このシステム、意味が分からない)
「勇者様。兵舎食堂に行かれるお時間では?」
「もうそんな時間か。また時間を作って来ますので、よろしくお願いします」
ごまかされた気もするが、食堂に呼ばれているのも事実だ。
歴代の勇者から、様々なレシピが伝わっているらしい。ただ、本物の味を知っているのは、当代の勇者だけ。つまり俺は、味見役だ。
元の世界で自炊していたので、料理は多少できる。だが、この世界は調味料が圧倒的に足りない。
味噌や醤油の自作は不可能だし、ウスターソースは熟成中に腐りそうで怖い。毒キノコで死んだ勇者の話を聞いたばかりなら、なおさらだ。
――兵舎食堂。
厨房では、腕組みをした恰幅のいい男が待っていた。料理長のガストンだ。
「やっと来たか、勇者。新作のマヨネーズだ、味見してくれ。今度は自信があるぞ」
「はあ、いただきます」
……うむ、普通に不味い。
いや、正確には、風味が強すぎて美味しくない。ベースの油のクセが強いのだろう。無味無臭のサラダ油なら、作り方は一応知っている。アブラナやエゴマの種子を搾って、脱臭・脱色すればいい。
ただ、テレビでアイドルが手作りマヨネーズを作っていたのを見ただけで、手順は正確に分からない。
「どうだ、勇者?」
「悪くはないですが、風味が気になります。やはり、クセのない油のほうがいいですね」
「勇者の言う透明な油は、大陸からの輸入品でな。高くて、兵士向けの食事には使えん」
「時間はかかると思いますが、自作は可能ですよ」
――料理長ガストンの好感度:78
(見えた。しかも、意外と高い)
味見と助言を繰り返してきたからだろうか。料理への情熱が、そのまま数字になったのかもしれない。
そのとき、奥のテーブルから、聞き覚えのある言葉が聞こえた。
『――いっただっきまーす』
この国で、食事の前に「いただきます」と言うのは、俺とセレスティアだけのはずだ。
読んでくださり、ありがとうございました。




