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もうひとつの魂日和  作者: 朱潮 一初


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10.魔女様からの贈り物

 窓から差し込む柔らかい光が、ウハナの意識を深い底から掬い上げた。


「ふぁ~……ぐっする眠った感じがする……心の疲れが取れた気がするなぁ」

 ぐっと体を伸ばして体を起こし窓の外を見た。外から室内を覗くものが何もなく、夜明けとともに目覚めるために昨夜はカーテンを閉めずに眠りについていた。


「おはよう。気持ちのいい朝ね」

 ウハナはデスクの上に置いてある、ヴェルカーに貰った水晶のフラスコに朝の挨拶をした。


 身支度を手早く済ませてウハナは自室を出て台所に向かった。

 ウハナが台所に着くとすでにセバスが朝食の準備を終わらせていた。

「おはようございます。セバスさん。朝食のお手伝いにきたのですが、もう終わっているようですね」

「ウハナさん、おはようございます。もっとゆっくり休んでもよかったのですよ。それでは、こちらを食堂に運ぶのをお願いします。スープは私が運びますので、ウハナさんは運び終えたら執務室に魔女様がいますので声を掛けてください」

「はい。わかりました!」


 セバスが用意した朝食をサービスワゴンに乗せて食堂に運び終えたウハナは、執務室の扉をノックした。

「どうぞ・・・」

 中から魔女様の声がしてウハナは執務室の扉を開けた。


「おはようございます。魔女様。朝食の準備が整いました」

「おはよう、ウハナ。昨夜はゆっくり休めたようね。魂の色が良い感じよ」

「はい。心が軽くなった気がします」

「それはよかったわ・・・ボダエーマに魂が馴染んだようね。では、食堂に行きましょうか・・・今日は忙しくなるわよ・・・ふふふっ」


 魔女様と一緒に食堂に入ったウハナは円テーブルに腰を下ろした。セバスも温かいスープをサーブし終えると席に着いた。

「では、いただきましょう」

「「いただきます」」

 食事をする時間ごとを味わうように、食堂には緩やかに静かな時が流れていった。


 食事を終えセバスが食器を下げるために席を立った。ウハナもセバスに倣うように席を立とうとしたが、セバスに目で制止され、魔女様から声がかかった。


「今日のスケジュールを伝えるわね。このあと準備をしたらヴェルカーにアメジストの原石を届けて、その足でピストスのところに行きましょう。ウハナはヴェルカーに貰った水晶のフラスコを持って行ってね・・・ちょっと待ってて」


 魔女様はすくっと立ち上がり食堂を出た。すぐに戻ってきた魔女様は光沢のある黒い布とツタで編んだ籠を手に持っていた。


「フラスコをこの布に包んで、この籠で持ち運ぶといいわ。この布には外部から干渉を受けないように術式を施してあるの。もし落としたとしても外からの衝撃が伝わらないから割れないわよ。このツタの籠はウハナ専用にするといいわ。フラスコが二つ入るくらいの大きさに見えるけど、実際の容量はその数倍はあるから何かと便利よ・・・はい、どうぞ」

「……ありがとうございます。大切にします!」

 ウハナは魔女様から黒い布と籠を受け取り、大切そうに胸に抱いた。


『・・・ほう、なるほど・・・そうなるのね』

 魔女様はウハナの様子を見ながら口角を上げた。ウハナは自分の身に起きている現象のことをまだ知らない。


 ウハナに伝えるのはまだ先がいいと判断した魔女様は、

「ウハナは自室に戻ってフラスコを持って来て・・・一時間後にエントランスに集合ね」

「わかりました。失礼します」


 食堂を出たウハナと入れ違いでセバスが食堂に戻ってきた。

「セバスは昨日の荷物の整理を引き続きお願いね」

「承知しました。ところで魔女様、ウハナさんはご自分が発光していることに気付かれないのでしょうか?あれだけ眩い光を発していたら、ご自分でも眩しいと思うのですが……」

「ウハナには目で感じる光の眩しさではなく、心に届く温かさに感じているのではないかしら」

「あぁ、なるほど……そうかもしれません」

 二人はウハナの背を見守るように微笑みながら頷きあった。


 ウハナは自室に戻り、デスクの上にある水晶のフラスコに声を掛けた。

「今日はね、魔女様と一緒にヴェルカーさんのところにアメジストの原石を届けた後、ピストスさんの所に行くのよ。あなたも一緒にね……ふふっ。ピストスさんはどんな方なのかしら。楽しみね!」


 ウハナの話に返事をするようにフラスコは光の粒子を走らせた。

「あら、あなたも楽しみなのね。魔女様が布をくれたのよ。ここに包まれていればあなたは守られるわ。少しの間、包まれててね……」

 ウハナはフラスコに話しかけながら黒い布でフラスコを包み込み、ツタの籠にそっと入れた。


 ツタの籠を持ちエントランスに降りていくと、セバスが魔女様に包みを渡していた。

「こちらが【アメジストの原石】です。こちらが【苗】で、こちらが【精霊水】です。すべてに札が付いていますので間違えないでください。あと、用事を済ませたら、まっすぐ帰ってきてくださいね」

「心配しなくても大丈夫よ。今日はウハナも一緒だから寄り道はしないわよ・・・ねっ」

 魔女様にパチリとウインクを向けられたウハナは、魔女様の魅惑的な魔力に当てられドキッと胸が跳ねた。

「……えっ……あっ、はい……」


「魔女様、ウハナさんが困っていますので、無意味な魔力の放出はおやめください」

「わかったわよ~・・・ウハナ行きましょう」

 困り顔で見送るセバスをかわし、ひらひらと手を振りながら魔女様は軽快に歩きだした。


「セバスさん、いってきます」

 セバスに会釈をしながらウハナは速足で魔女様の後を追った。







次回 7/8 更新

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