第51話 パンツを得るために
――は?
――なん……だと?
――シルバーライトちゃんの脱ぎたてパンツをおっさんに!?
――ちょっとなに言ってるかわからない……
――言葉通りやろ
俺もなに言ってるかわからない……。
もしかして焼き立てパンを作ってくれると聞き間違えたのかも……?
「ほしいでしょ? わたしの脱ぎたてパンツ」
やっぱり脱ぎたてパンツだった。
「そ、それは……まあ」
「なんやねん脱いだばっかのパンツて? そんな汚いもんいるわけないやろ」
「黙れ無機物!」
「無機物とかちょっと傷つくやん……。ワイだって生きてるんやで」
「ごめんね! けどお前にはわからんのだよ! シルバーライトちゃんの脱ぎたてパンツがどれほど貴重かが!」
「いや股を覆ってる単なる布やろ?」
「違う! 初めは単なる布でも、シルバーライトちゃんが穿くことによって、単なる布が男の夢へと進化するのだっ!」
「穿いたら汚くなるだけやん」
「黙れ無機物!」
「傷つくやん」
「ごめんね!」
しかしやはり無機物。
焔ちゃんの脱ぎたてパンツがどれほど貴重かを理解するのは難しいだろう。
――バイクには理解できんか
――シルバーライトちゃんが穿いた時点でもう単なる布ではない。聖骸布に相当する貴重な布へと変わるのだ
――俺ならもらった瞬間に被るわ
――俺ならもらった瞬間に匂い嗅ぐわ
――俺なら神棚に飾って毎日拝むわ
俺なら被って匂い嗅いで神棚に飾って、1時間に1回その神棚の方向へ向かって拝み倒すわ。
「パンツほしいならパンダに負けて死んだりしないよね? がんばって」
「う、うん」
これはあのパンダを倒す戦いではない。
焔ちゃんの脱ぎたてパンツを入手するミッションである。
――おっさんが勝ったらシルバーライトちゃんのパンツがおっさんのものに……
――それはいかん
――俺はパンダを応援する
――パンダ推し
――負けるなパンダ
――シルバーライトちゃんのパンツを守れ
――おっさんは死ね
――おっさんは死ぬ
なにこいつらひどくない?
いやまあ、気持ちがわからなくもないけど
「俺は勝つぜ! 勝ってシルバーライトちゃんのパンツを被ってやるからなっ!」
――させるか
――おっさんからパンツを守る戦いが始まる
とは言え、あのパンダは強敵だ。
パンツほしさに無理をすれば返り討ちに遭う。
と言うか、そもそもここにあのパンダがいると確定したわけでもないのだが。
「あ、あそこっ、見てドラゴンブラックさん」
「うん? あっ」
採掘場へ2人の男が現れる。
ひとりはバランドバーンの社長。もうひとりは白黒スーツの男だった。
「おいどうするんだっ? このままじゃ俺は終わりだっ!」
バランドバーンの社長が焦りの表情で声を上げる。
「落ち着けよ社長」
「これが落ち着いていられるかっ! だいたい、あのときお前が来なければこんなことにはならなかったんだっ!」
「俺のせいにするなよ。追跡用ドローンに気付かなかったのは社長だぜ?」
「うるさいっ! それよりもどうするんだっ? 俺をこんなところへ連れて来て?」
「あんたはもう用済みだ」
「は? え……」
社長の側にドローンレーザーが近づいて来る。
「俺らとの繋がりが世間に知れて困るのはあんただけだ。こっちからすりゃあんたの代わりなんていくらでもいるんだからな。あんたが使えなくなったら、別の奴を用意すりゃあいい。デッツと組んで儲けたい奴なんていくらでもいるんだからな」
「き、貴様……っ」
「じゃあな」
「ぎゃあっ!?」
そしてドローンのレーザーによって社長は跡形も無く消え去った。
デッツからすれば大きな会社の社長も捨て駒か。
改めてあの連中が巨悪だと認識できたような気がした。
「バランドバーンの社長は自殺したってことにするか。まったく面倒なことをしてくれたもんだぜ。まあ、それほどたいしたことはねーか。DGへの批判がうるせーってゼラムス様は言ってたけど、マスコミを黙らせとけば馬鹿な世間なんてすぐに飽きて忘れるだろうしな。だが、仮面ドラゴンブラックとシルバーライトは仕留めておかないと同じことの繰り返しか……」
「その通りっ!」
と、焔ちゃんが飛び出す。
「っ!? てめえはっ!?」
「悪の闇を光で照らす正義の戦士っ! シルバーライト参上っ! シャキーン!」
「お、俺は正義を守るドラゴンの戦士っ! 仮面ドラゴンブラックっ! シャキーン!」
「ワイは……」
「がるるるるっ!」
「あ、はい。すみません……」
焔ちゃんに睨まれて大阪1号は声を引っ込めた。
「お前たちの邪悪な企みはわたしたちが阻止したからねっ!」
「違うな。邪魔をされただけだ。バランドバーンのような会社はまた用意すればいいからな。ここでてめえらを殺してやり直せばいいだけのことだぜっ! ぱふぁふぁーっ!」
白黒スーツ男がレーザーパンダへと姿を変える。
「飛んで火にいる夏の虫とはこのことだぜーっ! おい戦闘員どもっ! こいつらをぶっ倒しちまいなーっ!」
「ギギギー!」
採掘をしていた戦闘員たち十数人がわらわらと集まって来る。
「ふん。戦闘員なんかじゃわたしたちの相手にはならないよ」
「戦闘員だけならそうかもな」
そう言うレーザーパンダの周囲にレーザー付きドローンが集合した。




