第48話 濡れ衣を着せられる田島丘鉱業
「い、射束っ!」
治療を終えた服部さんの病室へ白髪の男性が慌てた様子で入って来る。
「あ、服部さんのお父さんですか?」
「は、はいっ」
服部涼八さん。
田島丘鉱業の社長で、服部射束さんのお父さんだ。
「あの、射束は……」
「お医者さんの話では、命に別状は無いようです。安静にしていればすぐに良くなるだろうと、そう言っていました」
「そうですか……」
涼八さんは眠る射束さんを見下ろしながら、ホッとしたような表情を見せる。
「あなたがたが射束を助けてくださったのですか?」
「あ、いえ、俺たちはその……」
「助けたのはドラゴンブラックさんとシルバーライトさんです。わたしたちは彼らの知り合いで、射束さんのことを頼まれたんです」
マスクとサングラス姿の焔ちゃんが代わりに説明した。
「そうだったんですか。直接に会ってお礼を申し上げたかったのですが……」
「2人は正義のヒーローです。お礼なんて必要無いって言ってましたよ」
と、やや誇らしげに言う焔ちゃん。
こういうセリフを言ってみたかったのか、どことなく嬉しそうである。
「いやでも……」
「正義を愛する2人が必要無いと言っていますから。それよりも服部さん、射束さんを襲ったのはデッツの怪人です。これ以上、射束さんにオリハルコンの採掘を任せるのは危険だと思いますよ」
「それは……その」
「……余計なお世話だよ」
ベッドの上で射束さんが目を開けてそう言った。
「い、射束っ!」
声を上げる涼八さんを横目に、射束さんは身体を起こす。
「自分が未熟なのは認める。助けてくれた2人には感謝しているし、2人に頼まれてあたしに付き添ってくれたあんたらにも礼を言う。けど、オリハルコンの採掘はうちの事情だ。口は出さないでもらいたい」
「射束、お前こんな怪我までして……」
「父さん、あたしがオリハルコンを取りに行かなきゃダメなんだ。あたし以外の誰かにじゃ信用できない。そう言ったのは父さんだろう?」
「それはそうだが……」
どうやら秘密の採掘場はこの2人しか知らない様子だ。
他の誰かに頼めば、そこから場所が広く知られてしまうかもと危惧しているのだろう。
「うちが売っているのはオリハルコンだけじゃない。バランドバーンがデッツと関わっていると知った以上、お前を採掘へ行かせるわけにはいかない」
「ちょっと待ってください。バランドバーンがデッツと関わっているという証拠は掴んでいるのですか?」
射束さんの調べでバランドバーンが田島丘鉱業を目障り思っているのは事実らしい。しかしデッツと関わっているという根拠には乏しかった。
「いや、証拠はありません。ただ、なにかよくない連中と付き合っているらしいということくらいしか……。けど、採掘へ向かう射束がデッツの怪人に襲われたのでしたら、間違いありません。バランドバーンはデッツと結託して、うちが知っているオリハルコンの採掘場を探り出す気なんです。他の採掘場へ向かう探索者を襲ってオリハルコンの採掘を邪魔しているのも恐らくデッツでしょう」
「けどそれならDGが取り締まるんじゃないですか?」
デッツが採掘を阻んでいればDGが取り締まるだろう。
やりたい放題させている理由が無い。そう言った報道も聞かないのは不自然だった。
「それは……わかりません。何度かDGに捜査をするよう訴えたのですが、進展は無いようで……」
「うーん……」
相良のようにデッツと繋がっている者がDGには多いのだろうか?
だとすればまともに捜査しない理由にも頷けた。
「これは詳しく調べてみる必要があるね」
と、焔ちゃんは腕を組んで言う。
「うん」
バランドバーンとデッツの繋がりを明らかにして世間へ知らせる必要がある。そうすればオリハルコンの高騰問題も解決に至ると思った。
「調べるって、あなたがたがですか?」
「ええまあ。俺たちは仮面ドラゴンブラックとシルバーライトの手伝いみたいなことをやってまして」
「そうなんですか。あの、もしなにかわかったら教えてください。私でできることがありましたらお手伝いもしますので」
「わかりました」
「じゃあわたしたちは帰ろうか甚助さん」
「そうだね。じゃあ射束さん、お大事に」
「ああ。仮面ドラゴンブラックとシルバーライトに会ったら、あたしが礼を言いたいってことを伝えてくれるか?」
「わかりました」
まあもうすでに伝わっているんですがね。
そんなことを考えつつ、俺たちが病室を出ようとしたとき……。
「しゃ、社長っ!」
病室へ誰かが駆け込んで来る。
様子からして田島丘鉱業の社員だと思った。
「住岡君、ここは病院だ。もう少し静かに……」
「す、すいません。しかし大変なんですっ」
「どうしたんだ?」
「とにかくテレビのニュースを見てくださいっ」
「テレビ?」
涼八さんは個室の病室にあるテレビをつける。と……。
「……採掘が難しく高騰の続いているオリハルコンですが、DGの捜査によって田島丘鉱業が反社会勢力と結託して採掘を阻害していることが判明しました」
「なっ……」
ニュースを見た涼八さんは絶句の表情であった。
「な、なんだこれは? どういうことなんだっ?」
「わかりません。私もたまたまニュースで見て驚きました……」
田島丘鉱業が反社会勢力と結託なんて完全にデマだ。
なぜこんなことになっているのか?
DGの捜査で判明というところに大きな闇を感じた。
「ふ、ふざけるなっ!」
テレビを前に射束さんが叫ぶ。
「うちが反社会勢力と結託なんて、なんでこんなデタラメが報道されてるんだっ! テレビ局に抗議へ……ううっ」
ベッドから出ようとした射束さんが胸を抑えて呻く。
「射束、まだ動いちゃダメだ」
「けど父さん、こんなデタラメを報道されて黙っているわけにはいかないだろっ」
「会社のことは私に任せてお前は傷を治すことに専念しなさい」
「しかし社長、このままでは社長がDGに逮捕される可能性もあります。一体どうしたら……」
「どうにかするしかないだろう。とにかく会社へ戻るぞ」
慌てた様子で涼八さんは部下を連れて病室を出て行く。
「これは急いで調べないといけないね」
「うん」
このままデマが真実としてまかり通れば田島丘鉱業は世間から非難を受け、社長が逮捕されて会社が倒産ということになってしまうかもしれない。
そんな不正義は許されないことだ。
「あんたたち、すまない。あたしの代わりに会社を救ってくれ。頼む……」
「もちろんです。俺たちがバランドバーンとデッツの関わりを必ず明らかにしますので、射束さんは安心して怪我を治してください」
そう言って、俺たちも病室を出た。




