第45話 オリハルコンの採掘場へ向かう
「悪の闇を光で照らすっ! シルバーライト参上っ!」
そう声高に言って焔ちゃんはポーズを取る。
「い、いつの間に……」
車の中にいたはずがいつの間にかいなくなっていた。
「シルバーライトだと? なんでここに……?」
「悪あるところに正義は常にありっ! お前らのような悪党が現れれば、それを倒すために正義が現れるのは当然のことっ!」
たまたまここを訪れたら、遭遇しただけだけどね……。
「ふん。まあいい。邪魔をするなら痛い目に遭わせてやるだけだ」
黒づくめが構えるバズーカ砲が焔ちゃんへ向く。
俺も早く変身しなければ……。
「ぐわっ!?」
「えっ?」
不意に黒づくめのひとりが吹っ飛ぶ。
なんだと思う俺の目に映ったのは、筋肉質な身体の若い女性だった。
「おいゴミども、とっとと失せな。あたしに殴られたくなかったらね」
女性は拳を前に突き出してそう言う。
彼女は探索者だ。
全身を覆う装備品からそれがわかった。
「なんだてめえは?」
「あんたに名乗る必要は無い。失せるか、殴られるかのどっちかだ」
「……ちっ、かわいくスマートに終わらせたかったんだけどよぉ、こいつはかわいくねーぜ。不細工だ。しかたねえ、引き上げるぞ」
白黒男はそう言って黒塗りの車へ乗り込む。
そして黒づくめの男たちとともに去って行った。
「な、なんとかなったか……」
俺が変身せずとも無事に追い払うことができてホッとする。
「戦いもなくて終わっちゃってちょっと残念」
「えっ? わあっ?」
いつの間にか元に戻った焔ちゃんが隣に立っていて驚いた。
「お、お嬢さんっ!」
「お嬢さん?」
鉱業所の人が筋肉質の女性をそう呼んだ。
「どうも三井さん。ダンジョンで採って来たオリハルコンを届けに来たんだけど、タイミングがよかったみたいだね」
女性は自分が乗って来たトラックを親指で指す
「ええ。お嬢さんに来ていただいて助かりました。ありがとうございます」
「お嬢さんはやめてよ。なんかそう呼ばれるとむず痒くてさ」
「す、すいません」
お嬢さん。鉱業所の人がそう呼ぶってことはもしかしてあの人……。
「ぶー。わたしが倒してもよかったのに」
「はは。まあ何事もなく収まってよかったじゃない」
「まあね」
と、やや不満そうに笑う焔ちゃんを乗せ、俺は車の運転席へと乗り込む。
「あ、お客さん。変なことに巻き込んで悪かったね。あたしは服部射束。こんななりだけどここの社長令嬢さ。これ名刺」
「あ、どうも」
荒っぽい見た目に反して丁寧な対応をしてくれたので、少しだけ困惑する。
「うちは今いろいろあるんだけどさ、またよろしくね」
「ええ。わかりました。それじゃ」
別れを言った俺は車を発車させた。
―――白黒男、黒田白男視点―――
「ふん。どうやらあの女、採掘場を知っているようだな」
帰ったと見せかけ、こっそり戻って近くで様子を窺っていた俺はニヤリと笑う。
あの女はオリハルコンを届けに来たと言った。
と言うことは、あのトラックに積んであるのもオリハルコンだろう。
「あの女をつければオリハルコンの採掘場がわかる。これはスマートでかわいい展開になって来たぜ」
近日中にゼラムス様へ良い報告ができそうだ。
それから俺は車へと戻り、女から目を離すなと命じた。
―――零乃甚助視点―――
「やっぱりデッツが関わってると思うの」
家に帰って来て雄太郎さんに原石を渡して居間に戻ると、唐突に焔ちゃんはそう言った。
「さっき鉱業所を襲撃に来た連中がデッツってこと?」
「それはまだはっきりしない。けど、わたしの中の正義があいつらをデッツだと教えてくれているの」
「そ、そう」
なんとも信憑性の薄い根拠である。
「とりあえずさ、明日、オリハルコンが採れる採掘場に行ってみようと思うの。探索者が採掘に行っても帰って来ないってことは、きっとなにかあるんだろうし」
「そうだね」
デッツが関わっているかはわからないけど、今までなにもなかったオリハルコンの採掘で探索者が戻って来ないのは気になる。
なにかしらの犯罪があるのではと、俺も疑っていた。
……
そして次の日。
「はーい。今日は今話題のオリハルコンが採掘されている場所へ行きまーす」
変身した俺たちは大阪1号に乗ってダンジョンを進みつつ配信を始める。
――お、話題のオリハルコンか
――S級がパーティ組んで行っても殺されるヤベーところだぞ
――トカゲおじさんがいるから大丈夫でしょ
焔ちゃんが言ったように、オリハルコンの採掘量が減っていることはかなり話題となっていることなので動画視聴者たちもご存知のようだった。
しかしS級パーティでも殺されるというのが気になる。
つまりはかなり強力な魔物がいる。もしくは別のなにかが……。
「オリハルコンの採掘場でなにが起こっているのか? 魔物か、それとも別のなにか大きな悪か? それを調べまーす。今日もわたしシルバーライトと」
「か、仮面ドラゴンブラックと」
「三波〇夫でお送りするやでー」
「古い古いっ! 大阪1号君それはネタが古いってーっ! もーっ! そんなのおじいちゃんおばあちゃんしかわかんないでしょーっ!」
――ぎゃはは
――何十年前に流行ったネタやねん
――わからん
おじいちゃんおばあちゃんしかわからないほどの古いネタを、焔ちゃんが知ってるのは謎である。
「おもしろいもんは何十年経ってもおもしろいんや」
「そもそも三波〇夫さんが今の人たちはわかんないでしょー」
「シルバーライトちゃんも今の人だと思うんだけど……」
知識が広いのか、たまたま知っていたのか、変わった子だ。
「オリハルコンの採掘場ってそんなに下層でも無いんだよね。それなのにS級パーティが殺されるっておかしいよねー。絶対にデッツが関わってるって、わたしの正義センサーが言ってるし」
「まあ行ってみればわかることだよ」
焔ちゃんの正義センサーが正しいかはなんとも言えない。
すべては行ってみてからわかることだった。
「うん?」
だいぶ下層まで降りて来たところで、前を走る車を見つける。
見覚えのある黒塗りの車だ。
「あれ? ドラゴンブラックさん、あの車ってもしかして……」
「どうだろう?」
黒塗りの車なんていくらでもある。
あのとき鉱業所に来ていた車とは……。
「あ、なんかもっと前のほうにトラックも走ってるよ」
「本当だ」
トラックのほうにも見覚えがあった。
それからややあってトラックが止まる。
それと同時に黒塗りの車も止まった。
――なんだなんだ?
――黒塗りの車がトラックをつけてたっぽい?
――なんかそんな感じだなー
「トラックから誰か降りて来たよ。あれ? あの人って……」
「うん」
トラックから降りて来たのは田島丘鉱業の社長令嬢、服部射束であった。




