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第31話 怪人地獄アント現る

 ―――デッツ幹部グイドリッジ視点―――


 筆頭幹部のギューイザルに呼ばれたあたしは、デッツ本部にあるギューイザルの幹部室へと来ていた。


「グイドリッジ、新アジトの建設計画は順調か?」

「はい。作業員を増員しておりますので、予定以上に建設は順調です」


 アジトの建設は誘拐した探索者どもにやらせている。

 探索者どもは体力があるので建設作業をやらせるには丁度良い。しかし大勢を誘拐するのは手間だ。探索者は武器を持っているので誰しもが激しく抵抗し、生かして捕獲するのが難しい。


「作業員を増員か。例の怪人がうまくやっているようだな」

「はい。奴の能力を使うことで探索者の誘拐が容易となりました」


 新しく作った怪人の能力で探索者を大勢、攫うことができた。おかげで新しいアジトの建設は予定よりも早く進んでいた。


「ふむ。そろそろネットで騒がれ始めてるな。DGはなんとかなるが、仮面ドラゴンブラックに勘付かれたらまずいのではないか?」

「奴に勘付かれるのは時間の問題でしょう。ならば向こうが動く前に、こちらから動いて対処をすればよいだけです」

「できるのか? ゼラムスは手間取っているようだが?」

「あたしはゼラムスと違いますよ。必ず奴を捕獲して見せましょう」

「頼もしいな。期待している」

「はい。吉報をお持ちください」


 そう言ってあたしは部屋を出た。


 ドラゴンブラックを捕らえて自分の怪人にすれば、他の幹部よりも多く功績を上げることができるようになる。


 ゼラムスなんぞにあれは渡さない。

 必ずあたしのものにしてやると意気込んだ。


「地獄アント」


 自分の幹部室へと戻ったあたしはイスに座って怪人の名を呼ぶ。


「ぎゅらぎゅら……ここにおります」


 声は床の下から聞こえた。


「仮面ドラゴンブラックを捕獲する作戦はどうなっている?」

「問題ありません。すべて順調です」

「必ず捕獲するんだよ。失敗は許さない」

「もちろんでございます。ではさっそくに動きましょう」


 そして気配が床下から遠ざかっていく。


 奴の能力を使えばいかにブラックドラゴンの遺伝子を持つ強力な改造人間でも、捕獲から逃れることは難しいだろう。


 奴を捕獲したらゼラムスはどんな顔をして悔しがるか?

 想像するだけで顔がにやけた。



 ―――零乃甚助視点―――



 ダンジョンで探索者が地面に飲み込まれるという事件はネットで話題になっていた。


「テレビではそんなにやってないんだな」


 居間のテレビを眺めながら思う。


「うーん、これはますますデッツが怪しいね」


 隣で焔ちゃんが言う。


「どうして?」

「デッツってマスコミの偉い人とも関わってるんだよね。だからデッツに都合の悪いことはあんまり報道しないの」

「そ、そうなんだ……」


 テレビに出ている焔ちゃんの言葉だしかなり信憑性がある。


「マスコミが悪の組織と繋がってるだなんて、この国は大丈夫なのかな……」

「なに言ってるの? 悪の組織なんて世界中にあるけど、どこの組織もマスコミとは懇ろだよ。悪の組織ってお金持ってるからね。表の商売やってテレビのスポンサーになってたりするの」

「嫌なこと聞いたなぁ。けど、そんな悪の組織と繋がっているようなところで働いていて、焔ちゃんは平気なの?」


 正義感のある焔ちゃんなら嫌がりそうだが。


「おかげでデッツの情報とか手に入ることがあるからね。正義のスパイみたいなもんだよ」

「もしかしてそのためにアイドルやってるの」

「うん。マスコミの偉い人や政治家にはデッツと関わってる人がいるってネットの噂で聞いてね。だったらタレントになれば、デッツの情報が入るんじゃないかと思って始めたの」

「アグレッシブだねぇ……」


 若さもあるんだろうけど、たいした行動力である。


「正義のためにはガンガン行動しなきゃね。デッツを倒したら今度は世界の悪と戦うんだよ。がんばろうね甚助さん」

「お、俺も世界の悪と戦うの?」

「当たり前でしょ。甚助さんも正義のヒーローなんだから」


 これは大変だ。

 しかし焔ちゃんと一緒なら嬉しいかも。


「まあけど、それはまだ先のこと。今はダンジョンの地面に人が飲み込まれる事件を解決しなきゃね」

「なにかわかったことある?」

「うーん……それがあんまり。仲間が地面に飲み込まれたっていう報告はSNSでたくさん見かけるんだけど、犯人の目撃情報は全然ないね」

「そっか」

「こうなったらダンジョンへ行って、人が飲み込まれる瞬間に犯人を捕まえるしかないねっ! よし行こう甚助さんっ!」

「えっ? 今から?」


 もう夕方なんだが……。


「今この瞬間も被害に遭ってる人がいるんだよ? 正義のヒーローに時間は関係無いの。さ、行くよ」

「う、うん」


 焔ちゃんが行くというのならばしかたない。

 俺はテーブルに置いてあるスマホを手に取ってソファーから立ち上がる……と、


「うん?」


 俺のSNSにDMがきていた。


「なんだろう? うん? これは……焔ちゃん」

「どうしたの?」

「これ……」


 俺はDMの内容を焔ちゃんへ見せる。


 内容はこうだ。


『以前、仲間が地面に飲み込まれた際に仮面ドラゴンブラックさんと会った探索者です。あのあと仲間を探すためにダンジョン内を回ったところ、地面に飲み込まれた被害者たちが捕まっている場所を発見しました。怪人や戦闘員の姿があったのでデッツの仕業でしょう。しかし自分ひとりでは助けることができません。DGはデッツと繋がりがあるという噂もあり信用できないので、仮面ドラゴンブラックさんへ協力を求めることにしました。どうか仲間や他の被害者を助けるために力を貸してください』


「……これは有力情報だね」

「うん。以前会った場所で待ってるから今すぐ会いたいってある」

「丁度良いね。それじゃあ今からこの人に会いに行こう」

「わかった」


 この情報の通りならば、被害者が捕まっている場所へ行って怪人を倒せば解決だ。


 恐らくその怪人が探索者を地面へ飲み込んで誘拐をしたのだろう。

 しかし固い地面へどうやって飲み込ませたのかは謎で、それが不安であった。

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