第23話 バナナを食べる姿がエロい焔ちゃん
焔ちゃんがこちらへ来ようとするのを、九条が止める。
なにを話すのだろうと、俺はそちらへ耳をそばだてた。
「いつも俺を避けるよね? どうして?」
「九条さんだけではありませんよ。人付き合いは苦手なので」
「俺とは付き合ってほしいな」
九条は焔ちゃんの前に立ってそう言う。
イケメンスーパーアイドルの九条直哉にあんなことを言われたら、普通の女性は食い気味にイエスと答えるだろうが……。
「個人的なお付き合いはお断りします」
焔ちゃんは即行で付き合いを断った。
「はは、厳しいね。できれば俺との付き合いを断る理由を教えてほしいな」
「先ほど言った通りです。人付き合いが苦手なので」
「君みたいな女の子は初めてだよ。ますます好きになった」
「失礼します」
九条を避けて焔ちゃんはこちらへと歩いて来る。
しかしあれほどのイケメンから付き合いをしたいと頼まれて断るとは。
焔ちゃんの考えていることはよくわからなかった。
「おかえり焔ちゃん」
イスへと座った焔ちゃんに、俺はペットボトルの水を渡す。
「ありがとう」
「うん。けどよかったの?」
「なにが?」
「九条さんみたいなイケメンから誘われたのに断ってよかったのかなって」
焔ちゃんも女の子ならイケメンが好きなはず。
俺はそう思っていたのだが。
「興味無いし」
「そ、そうなの?」
「うん」
恥ずかしがってそう言っているという風でもない。
本当に興味が無さそうに言っていた。
イケメンが好きじゃないのかな?
いや、女の子なら誰だってイケメンは好きだろう。それに九条は顔が良いだけだじゃない。強くて金持ちでもある。女の子が好きな男の要素をすべて持っているのだ。興味無いなんてあり得ないような気がするのだが……。
「それよりもお腹空いたからくだものちょうだい」
「あ、うん」
焔ちゃんはくだものが大好きなようで、休憩中に食べるためとマネージャーさんが用意してたくさん持って来た。
「こちらにあります」
木島さんが箱いっぱいのくだものを持って来て、焔ちゃんの前に置く。
リンゴやらぶどうやらいろいろあるが、ほとんどはバナナだ。たぶん半分くらいはバナナだった。
「やっぱりバナナだね。おいしいしすぐ栄養になる」
焔ちゃんは箱からバナナを取ると皮を剥いて食べ始める。
……なんだろう? なんかエロい。
いやいやなにを考えているんだ俺は。
でもしかし……。
最近は身体を密着されたり、下着姿を見てしまったりしているせいか、焔ちゃんにエロい目線を向けてしまっている。
そのせいかバナナを食べる姿もエロく見えてしまっていた。
「バ、バナナ好きなんだね」
「うん。バナナ好き。ペロ」
「おおっ」
焔ちゃんはバナナをペロリと舐めて見せる。
それから俺に視線を向けて悪戯っぽく笑った。
な、なんだ? なんだその小悪魔的な笑顔は?
なにを考えているのか、焔ちゃんは目の前に立つ俺を見上げながらバナナを舐めるようにして食べていた。
もうエロく見えるではなく、完全にエロい。
焔ちゃんは明らかに、わかっていてそういう食べ方をしていた。
俺をからかっているのか?
というより、焔ちゃんってこんなにエッチな子だったのか。以前に持っていたクールビューティーなイメージとはまったく違っていた。
エッチな美少女は好きですか? 大好きです。
くそう、俺の性癖を知っているのかこの子は?
俺は清楚華憐でエッチなことはダメですな女の子よりも、エッチなことに興味津々で積極的な女の子が好きなのだ。
俺の身体に隠れているから、周囲にはバナナを食べる焔ちゃんの姿は見えない。
見えているのは俺とマネージャーの木島さんだけだった。
「こんな感じなのかな?」
「えっ? な、なにが?」
「ふふ、わかってるくせに」
焔ちゃんは唇をペロリと舐めつつそう言う。
ス、スケベな子だぜ……。
こんなの見せられたら下半身が性技のヒーローに変身しちゃうよ。
俺はもうバナナを食べる焔ちゃんから目が離せない。
けどこんなことを担当のアイドルがやっていたら、マネージャーさんは怒るんじゃないかな……。
「うん?」
しかし木島さんに怒る様子は無い。
バナナを食べる焔ちゃんを眺めながら、ゴクリと生唾を飲み込んでいた。
な、なんだ? もしかして木島さんもエロいと思って見ているのか?
それでいいのかこの人?
マネージャーとして大丈夫なのかなと思いつつ、俺もエロいと思いつつ焔ちゃんを凝視していた。
それから撮影が再開される。
コウモリ男爵が敗北して爆発するシーンは俺たちが休憩しているあいだに撮り終わったので、ここからは探検隊に九条を加えて進んで行く。
九条の登場は終盤ころになると事前に聞いたので、撮影はもうすぐ終わりだろう。焔ちゃんはなにか起こるかもしれないって言ってたけど、結局は無事に終わりそうだ。
焔ちゃん的にはなにも起こらなくて残念なのかな?
しかしまあなにもなければそのほうがいいだろう。
「ここは危険な道だ。ホムラさん、手を」
「はい」
台本通りなのだろう。
差し出された九条の手を焔ちゃんが握る。
焔ちゃんは別に好きで九条の手を握っているわけではない。
しかしなにか気持ちがもやもやして不愉快だった。
撮影、早く終わらないかな。
イライラした気持ちを押さえながら撮影を眺めていた。……そのとき、
「うきゃつ!!?」
「えっ? んがぁっ!?」
背後から叫び声が。
振り返った瞬間、なにかが俺にぶつかって来てそのままうつ伏せに倒れた。
「な、なんだ……? うわあっ!?」
背に圧し掛かっているぶつかってきたなにかを見る。
それはサルのような見た目をした怪人らしき者であった。
「な、なんで怪人が? あっ!?」
それを考える俺の視界に見覚えのある電動バイクの姿が入る。
「お、大阪1号っ?」
「その名前で呼ぶな言うてるやろ」
なんでこいつがここに?
怪人が俺の背で倒れている理由もわからない。
一瞬で2つの不可解な出来事が起き、俺はとにかく混乱していた。




