第24話 洗脳怪人デンパ―モンキーの攻撃
「う、うききぃ……。もう少しだったのに……」
「な、なんだ一体っ?」
頭に銀色の被り物をしたサルみたいな怪人を押し退け、慌てて立ち上がった俺は大阪1号の側まで離れる。
「大阪1号、どうなってるんだ? なんでお前がここにいるんだ?」」
「その名前で呼ぶなっちゅーに。まあええ。ワイがここにおるんは、こっそりついて来るようシルバーライトの嬢ちゃんから言われとったからや。もしも事件が起こったらすぐに駆け付けられるようにって言われてな」
「そうだったのか。けどそれなら教えといてくれればよかったのに」
「サプライズで現れたほうが格好良いって嬢ちゃん言ってたで」
「あそ……」
まあ焔ちゃんらしい考えである。
「まあそんで、こいつがうしろからお前になんかしようとしてたから、ワイがぶつかって吹っ飛ばしてやったっちゅうわけや」
「そうなのか。あれ? でも、俺のうしろには木島さんがいたはず」
「そいつがそれに変身したんや」
「えっ?」
木島さんが怪人に?
俺はまさかと思いつつ、サルみたいな怪人を見つめた。
「お、おい。怪人役って2人もいたか?」
「いや、怪人役はひとりだけのはず……」
「じゃああれって……」
スタッフや出演者たちが動揺し始める。
「きっきーっ! バレたらしょうがないね。あたしはデッツの怪人、デンパ―モンキー様よ。九条とホムラが仲良くしている光景にイライラして油断したお前を洗脳してやろうと思ったのに、この変なバイクに邪魔されたのさ」
「サルの怪人に変なんて言われとーないわ」
「ききっ、まあいい。作戦変更だ。このまま正面からお前を洗脳して、ゼラムス様のもとへ連れて行ってやる。きっきっきっ」
「くっ……」
……これはまいった。
ここにはスタッフや出演者がいて変身できない。変身できなければ、怪人と戦うことは……。
「あ、ホ、ホムラさんがいないぞっ!」
「えっ? あ、ほ、本当だっ! 九条さんもいないっ! どこへ行ったんだ?」
今までいた焔ちゃんと九条がいなくなっている。
スタッフや出演者たちは怪人出現に加え、2人がいなくなったことに慌てふためいているが、俺は焔ちゃんの動向に察しがついていた。九条は知らんけど。
「――あははははっ!」
そしてダンジョンの上に見える崖から笑い声が聞こえる。
「正義を愛するスーパーヒロインっ! シルバーライト参上っ! とうっ!」
崖からジャンプした焔ちゃんは、地面へと着地をする。
「弱き者を洗脳して悪事を働こうなんて言語道断っ! このスーパーヒロイン、シルバーライトがお前を退治してやるっ!」
シャキーンとポーズを決める焔ちゃん。
やっぱり変身していた。
しかし番組収録よりもやる気に溢れてハイテンションである。
「緊急ライブ配信も開始したから応援よろしくっ!」
――緊急ライブ配信キター!
――あのサルみたいな奴がデッツの怪人?
――あれはダンシングモンキーって魔物の遺伝子を持った怪人っぽいな
――じゃあ攻撃は洗脳系か
――おっさんいない
――今日はおっさん休み
――おっさんだから仕事でしょ
おっさんはここです。
無職のおじさんですいません。
と、謎の謝罪を心の中でしながら俺も変身するタイミングを探った。
「ききーっ! だったらまずはお前から洗脳してやるっ!」
そう言ってデンパ―モンキーは手に持ったバナナを口に放り込む。
それから変な踊りを始め……。
「食らえっ! デンパ―洗脳ビームっ!!!」
銀色の被り物からビームが発射される。
「ひゃあっ!?」
焔ちゃんは横へ飛んでそれをかわす。と、
「うわあっ!?」
うしろにいた探検隊のメンバーがビームを食らう。
「しまったっ!」
「う、うう……」
デンパ―モンキーのビームを食らった探検隊メンバーは前屈みになり、そして、
「うきききききーっ!!!」
サルのような奇声を上げた。
「きき、はずしたか。まあいい。次ははずさないっ! ききーっ!」
ふたたびバナナを食べて踊ってビームを放つ。
「わっ!? ほっ!?」
シルバーライトは避け、デンパ―モンキーは食べて踊ってビームを放つ。
それが何度も繰り返される。
「こ、これじゃあこっちから攻撃は……うわぁっ!?」
「ききーっ! 早く洗脳されろーっ!」
避けているがかなりギリギリだ。
当たるのも時間の問題に見えた。
――おいおい大丈夫か?
――避けてるけどあぶなっかしいな
――シルバーライトちゃんには当たってないけど……
――おっさん早く来てくれー!
――おっさん早く来い
――金やるから早く来い【青スパ100円】
――困ったときのおっさん頼み
俺も早く変身しなければ。
今は誰も俺を気にしていない。
「この隙に……」
俺は岩陰へと駆けて行く。
「へ、変し……と、その前に」
服が破れてしまうので、急いで脱ぎ捨てる。
「よし、改めて変身っ!」
ポーズを取ってベルトを掴み、変身と叫ぶ。
そしてドラゴンブラックになった俺が岩陰の外へ出て行くと、
「うききききーっ!」
「うっきーっ!」
「ききっき―っ!」
焔ちゃんの避けたビームを食らってしまったスタッフや出演者たち全員が、デンパ―モンキーに洗脳されて喚きたてていた。
「はあ、はあ……」
「ちょこまかとすばしっこい奴。けど、これで終わりうきーっ!」
「うっきっきーっ!」
「ききっきーっ!」
「えっ? あっ」
洗脳された者たちが焔ちゃんを押さえつける。
「きききーっ! これでもう逃げられないきーっ! 食らえっ!」
「待ていっ!」
「うきーっ!?」
ビームを放とうとするデンパ―モンキーを蹴り飛ばす。
――おっさん来た!
――ヒーローは遅れてやって来るってか?
――おっさん来た! これで勝つる!
――おっさんVSサル怪人
――俺たちのおっさん
――おっさんがんばえー
「きっき。現れたか仮面ドラゴンブラック。しかしもう遅いうきーっ」
「むっ」
俺の周囲にも洗脳された者たちが集まって来る。
「洗脳されているだけの人間を攻撃できるか? ききっ、できないよねぇ。そいつらに抑えられている隙にお前を洗脳してやるききーっ!」
「うっきーっ!」
「きーっ!」
「……っ」
ここから炎かウロコ飛ばしで……。
いや、デンパ―モンキーの周囲にも洗脳された者たちがいる。下手に攻撃をすれば巻き込んでしまうため、迂闊に手が出せない。
「きっきっき。それじゃあバナナを……うきーっ!?」
余裕の声音を吐いていたデンパ―モンキーが不意に焦りの叫びを上げた。




