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第22話 好きなタイプは正義感の強い年上の男

 ご想像にお任せします程度の答えを言うんじゃないかと思っていた。

 それがまさか好意があるとはっきり肯定するなんて……。


 まあしかし、これも本心とは思えない。

 スタジオを盛り上げるためのリップサービスだろう。


「こ、好意があるんですね? それはその、ラブのほうで」

「もちろんです」

「ええーっ!」


 ふたたび悲鳴がスタジオに響く。


「ほう、こんな良い男に好かれるなんて、焔もやるもんじゃのう」

「なに言ってるんですか。盛り上げるために言ってるだけですよ」

「しかし焔は綺麗な子じゃし、恋愛的な興味を持たれても不思議は無いじゃろう?」

「ま、まあ……」


 イケメン君も男だ。

 超絶にかわいい焔ちゃんに恋をしてもそこに不思議はなかった。


「いやーぶっちゃけますねー。まさかこの番組でカップルが成立しちゃうとか? さてじゃあホムラさんのほうにも聞いてみましょうか? 九条さんはこのように言われていますけども、ぶっちゃけホムラさんのほうはどうですか?」


 この質問に焔ちゃんはなんと答えるのか?

 本心は言わないだろうけど、俺は焔ちゃんの答えをドキドキしながら待った。


「良い人だと思います。それ以上は特に無いですね」


 ……答えは実に無難なものだった。


 カメラの前ならこう答えるのが正しいと思う。しかし実際はどうなのか? 九条が本気で恋愛的な好意を持っているとしたら、焔ちゃんはどうするのだろう? 焔ちゃんも女の子だし、やっぱりイケメンから告白されたら付き合ってしまうのだろうか?


 むちゃくちゃ気になった。


「あらら、九条さんフラれてしまいましたねー」

「はは、残念です」


 言葉とは裏腹に残念そうでもなく、九条は朗らかに笑って答えていた。


「ではホムラさんが好きな男性のタイプとか聞いてもよろしいですか?」


 焔ちゃんが好きな男のタイプ。

 それは俺もめっちゃ気になる。


「そうですね。年上で正義感が強くてわたしのことを誰よりも愛してくれる人です。あと、普段は頼りないけど、いざというときは勇気を出してくれるみたいな……」


 なんか思ったより具体的だな。

 しかし正義感が強い人というのはいかにも焔ちゃんらしかった。


「なるほどー。これを聞いて九条はどう思いましたか?」

「はは、僕にもまだチャンスがありそうだなって自信を持てました」

「おお、諦めていませんねー。2人の恋の行方を見守って行きたいところです」


 2人の恋の行方……。


 正義感はわからないけど、九条直哉は頼りになる男だ。

 俺なんかよりもずっと……。


 なんだか2人が本当にくっついてしまいそうで少し不安であった。



 ……



 それから夕方となり、焔ちゃんが雄太郎さんの家へとやって来る。


「ねえ甚助さん、一緒にゲームしよう」

「えっ? ゲーム?」

「うん。このあいだ一緒にやろうって話したでしょ?」

「そ、そうだね」


 社交辞令みたいなものかと思っていたけど、本当だったのか。


 俺は喜びで叫び出した気持ちを押さえて、焔ちゃんとゲームをすることになった。


 ……それから居間の大きなテレビを使って格闘ゲームを始めたのだが。


 ち、近い。


 焔ちゃんは俺の隣。

 しかも密着してゲームをプレイしていた。


「うわーっ、甚助さん上手だねー。勝てないよー」

「は、はは……」


 どうやら格闘ゲームは俺のほうが少しうまいみたい。手加減をしてあげたいが、焔ちゃんに密着されているという緊張で、それどころじゃなかった。


 もうゲームに全集中するしかない。

 意識を焔ちゃんに持っていくと、興奮して変な声を出してしまいそうだった。


「ほ、焔ちゃんはゲームたくさんやるの?」

「前はやってたよ。最近は忙しくて全然だけど」


 確かにアイドルや配信で焔ちゃんは大忙しだ。

 無職で暇なときはゲームやってる俺とは違う。


 しかしさっきまでこのテレビに映っていた焔ちゃんが、今は俺に密着している。

 なんとも不思議な気分であった。


「昼間の生番組って見てくれた?」

「えっ? あ、うん」

「えへへ、嬉しい。けど、本当のわたしを知ってる人にアイドルのわたしを見られるってなんか恥ずかしいね」

「そ、そう」


 アイドルのホムラちゃんはクールビューティーで冷たい印象。しかし実際の焔ちゃんは明るくて快活で、俺みたいな男とゲームをやってくれる温かい女の子だ。


 アイドルホムラを演じている事実を知られて、恥ずかしいというのはわからなくなかった。


「ごめんね。俺みたいな男が焔ちゃんの真実を知っちゃって」

「あ、甚助さんが悪いことはなにもないよ。知られたことは気にしてないし。けど、本当の自分を偽ってアイドルやってることを知られたら嫌われちゃうんじゃないかなって、それが心配かも」

「そ、そんな、嫌ったりしないよ。アイドルのホムラちゃんと本当の焔ちゃんは違うってだけだし。嫌う理由にはならないよ」

「そう? そっか。それならよかった」


 と、焔ちゃんはますます俺へと密着してくる。


「お、おおう……っ」


 ここまでくっつかれると焔ちゃんの体温も感じてしまう。

 女の子の良い匂いもして、俺はもうゲームどころではなかった。


「あうあう……」

「甚助さん緊張してる?」

「そ、そりゃあ、俺は焔ちゃんの大ファンだし、こんなにくっつかれたら……」

「わたしは甚助さんのファンだよ」

「俺の? いや、俺じゃなくてドラゴンブラックの、かな?」

「どっちも甚助さんだよ」

「それはそうだけど、ドラゴンブラックじゃない俺なんて普通だし……」

「普通じゃないよ」

「えっ?」

「命懸けで2回もわたしを助けようとしてくれた。絶対に勝てないってわかってるのに、そんなこと2回もできる人は普通いないよ」

「けど、それは焔ちゃんのファンなら誰だって……」

「いくら好きでも、推しのために死ねないって」

「そ、そうかな?」

「そうなの。ふふっ」

「お、おお……」


 焔ちゃんは俺の腕に自分の腕を絡めてコントローラーを握り直す。


 こんなのカップルやん!

 大好きな焔ちゃんにこんなことされたら俺もう……。


 今までも全力で好きだったけど、限界を超えて焔ちゃんのことが好きになってしまう。こんなことをしてくれるってことは焔ちゃんももしかしたら……。


 いやいやいや!


 そんなことはあり得ない。

 焔ちゃんは全男性の憧れと言ってもいいくらいの美少女スーパーアイドルだ。対して俺は普通の男で、恋人もいたことがない30歳の童貞。最高美少女の焔ちゃんが恋愛的な意味で俺に好意を持つわけがない。


 恐らく親切なおじさん程度の認識だろう。

 そうに違いない。


 焔ちゃんだって俺よりも九条のようなスーパー強者男性が好きなはずだ。テレビではああ言っていたけど、本心ではきっと……。


 ……本当は九条のことをどう思っているのだろう?


 聞いてみたい。

 しかしプライベートなことだし、聞いたらキモイって思われるかも……。


「うん? どうしたの甚助さん? わたしの顔じっと見て?」

「えっ? あ、い、いや……」


 焔ちゃんは俺の顔を見上げて首を傾げる。


 かわいい。

 いや、それはともかく……。


「その……あ、雄太郎さんに聞いたんだけど、昔は引っ込み思案だったって……」


 咄嗟に俺はそのことを思い出して声にした。


「ああ。うん。そうだよ。昔は結構、暗かったんだわたし」

「どうして明るくなれたの?」

「スーパーヒーローに助けてもらったから」

「ス、スーパーヒーロー?」


 それってどういうことだろう?


 咄嗟に聞いたことだが、知りたくなった。

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