第79話 "読み合い"
ハイデスア地下。
ここには秘密裏に持ち込まれた遺跡のヘブンズ・ギフトが整理されている。
シードルが連邦への渡航で忙しい隙に、シキはこっそり忍び込んだ。
「データチェック、スキャンとコピー開始。
さてどんなものが新たに発掘されたのか、チェックしてみますかね」
持ち込まれたオーバーテクノロジーの数々。
それは、単なる過去の異物では無い。
明らかに時代に見合わないものや、今の技術では解析のできない金属も含まれている。
中にはそのままFSの素体があったりする場合もある。
過去にその姿を見た時から、漠然とシキは感じて取っていた。
『その昔も、巨大な機動兵器を使った戦争があった』
ということを。
「ほう、これは興味深い。
以前までの発掘成果では核融合の理論のみでしたが……今回のデータを見るに実際に作るだけじゃない。
効率的な小型化ができそうですね。
こちらは詳しく解き明かさないとですが、もしかすると……ハッ!」
人の気配を背後に感じ振り返る。
おかしい、監視カメラのデータはダミーにすり替えたはず。
見つからないよう、細心の注意を払ったはず!
「おやおや?盗みとは感心しませんね」
「何も盗んでいませんよ。ジュゼ・フ・シードル」
大きな鉄壁の空洞中に明かりが灯る。
古さびた機械のような一部や、赤錆びた鉄塊群、そしてFSの素体が巨人の骨の如く安置されていた。
眼鏡の奥の冷たい瞳、マントを羽織りいたずらな笑みを浮かべる男。
シードルが扉に寄りかかり佇んでいた。
「ぬけぬけと。『技術』を立派に盗んでいるではないですか。
私の目の届く範囲で」
「これは手厳しい。それより良いのですか?
かのシードル様ともあろう方が、ヴァッカ連邦への根回しと訪問の準備をせず、こんなところで油を売っていて」
こいつ、連邦の国際裁判所への訪問に向け、準備をしていたはず。
今回は違うのか?一体どうすれば。
脳内はピンチを切り抜けるため試行錯誤、想定外のシキが思考をする。
「余暇を過ごす時間くらい、私でも。
例えば、こうして古代のロマンに思いを馳せたり、ね」
シキの横を通り過ぎるシードル。
両手を掲げ、丁寧に安置された太古の巨人たちを仰ぎ見る。
「敵ながらですね、あなたも。
僕が出し抜こうとしていたのを見抜くとは」
「敵?あなたの敵とは?」
振り返りざまに問いを投げかける。
「そろそろあなたも気づいたのではないですか?
真の敵はブラダガムではないことに」
「…………」
「無視か、黙秘か……ククッ。まあいいでしょう。
今日のところはオイタの一つは許します。
今回は兵器転用できる以上に、重要なデータはありません」
「……開発に活かすなら見逃す、と」
「なんとあなたの察しの良い。
では早速新たなプロジェクトを献上して頂きましょう」
なるほど、ここに忍びこみ易くしたのもシードルの罠だったというわけだ。
いっぱい食わされたという悔しさが胸に込み上げる。
その想いを抱えて部屋を出ようとした時
「ああ、それと」
シードルが甘く、意地の悪い声をかけてきた。
「なぜ、あなたも遺跡の文字を読めるのですか?」
……。
とある疑問を問い返し、切り返そうかしかけたが、罠の可能性もある。
そう思った彼は答えることもなく、部屋を出るのであった。




