第78話 マイ・メッセージ
「センセー、接続OKです。
あとはシミュレーターの結果次第ですねえ」
「分かりました、では実験開始です」
シミュレーターに乗せられた亜人奴隷が次々とターゲットを落としていく。
現れた瞬間には敵味方を判別し、360度全てに目がついているようだ。
「す、すげー……今までの共和国のシステムじゃあこんなの実現できませんで。
一体どうやってこんなのを開発したんですかい?」
「簡単です。神経系の接続を以前より強化しました。
合わせて反応系に使う素材も、電気伝達度が高い素材を使用しています。
これにより、思考から機体の反応までが以前より大きく強化されたのがこのシステム"ハルモニアシステム"のミソです」
シキが携帯機器の画面をいじいじしながらも、淡々と語る。
もう片手は解説図をサラサラとホワイトボードに書いていく。
なんと器用な男だろう、と今更分かりきったことながら周囲は感心する。
そしてその白壁には、今までの散々と分かりにくい説明を反省してのことか、今回の図解は一段と分かりやすく、整理して書くことに気遣っている。
前は敵国の開発者程度の認識だった。
だが今や場所や所属に関係なく、同じ目標を達成するための仲間といった気持ちだ。
何かを作り、科学の発展を目指す者に国境などない。
その認識は、彼ら開発者達は皆同じ気持ちのようだ。
「……更に適合率の認証に使われているであろうシステム部を完全削除しました。
このシステムならあのシードルにも文句は言われないでしょう。
ただし、生産できる数には限りがあることと、長時間連続使用の実践データがないことが懸念点ですね。
神経系、特に脳をより強度に使用することでの悪影響は、実践投入しない限り未知数です。
では、報告書をまとめてください」
見慣れぬ機器をつかんだまま、腕を組んで全員の方を振り返る。
一つの目標に向けてともに走った仲間たちに指示を出す。
「了解しました、先生!
俺たちゃ、いつでもどこでも先生とモノづくりのためなら頑張りまさぁ!」
「どこでも……?僕が連邦や共和国に逃げても、ですか?」
底意地の悪い笑みで口元がゆがむ。
流石に試しすぎたか?
「センセーが応じるままに。なぁ、みんな?」
おうよおうよと口々に声が上がる。
ホウ……少し彼らをみくびっていたようだ。
だが、ともすればそれは漸く人手と頭脳が揃ったことを意味する。
シキからすれば仲間であると同時に、やりたいことのための人材を手に入れたも同然だ。
「ありがとうございます、皆さん。
それでは早速、僕の考える新しいプロジェクトを皆さんに手伝ってもらいましょうか」
やいのやいの言っていた声が止み、静寂が訪れる。
全員がシキの方を見つめている。
「新プロジェクトは『核融合炉開発』と新たに見つかった遺跡データを用いた『新機体開発』です」
「と、とうとう……?」
「新しく見つかったヘブンズ・ギフトのデータってもしかして……」
「歴史が変わる」
皆が口々に期待と不安の声をあげている。
核融合炉自体、机上の空論で成功しなかったものだったのだ。
実際にそれを作るとなると、事故が怖い気持ちも、試してみた気持ちも湧き上がるのは当然だ。
「慌てないでください。
僕は少し休憩します。皆さんも休んでください。
その後に資料を配布・解説いたします」
一言だけ告げてシキは研究室を出た。
先ほど腕を組んだ時に、小型携帯発信機と思しき機器に打ち込んだ打電をちらり、と見る。
「……さて。
タイムアウト無し。正常に送られたようですね。
あとはこの信号を、共和国の誰かが拾うだけですね」




