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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter5 The Breaks
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第77話 其れはレプリカの心

「心拍数チェック、異常なし。血圧・脳波ともに正常」

「傷の状態、完治。跡も残っておりません」

「では、覚醒させてくれ」


ブラダガム帝国・ブロイジアム研究所の一室。

台上で病衣を着せられ、管に繋がれた少女が目を覚ます。


「気分はどうだ?メアリー」

「はい」

「ふむ、受け答えは問題なし。早速テストをこれに受けさせたまえ」


少女、メアリーは虚ろな目で部屋を移された。

研究所所長、コーニッシュ・コニャックは自らの作品を見て笑みを浮かべるのであった。



数時間後、テストの結果がコニャック教授の元に送られてきた。

対照実験と比較して飛び抜けた数値を叩き出していることが見てとれた。


「素晴らしい……!

一般兵士のデータを超えているだけではない。

前回のメアリーのデータと比較しても、1.2倍の反応速度だ。

シュミレーターの撃墜数、タイムは勿論だが脳波の乱れもない。

思考深度をより深く調整した結果、不測の事態にも即座対応できる。

完全にFSの脳髄そのものとして申し分ない」

「お父様」


人に向けているわけではない笑みをうかべるコニャックに、メアリーはポツリと話しかける。


「私はどこからきて、どこに行くのですか」

「……前より深く思考ができるようになった影響か。

メアリー、お前はそんなことを考えなくて良い。

お前は敵を1人でも多く撃ち倒すため、生まれ出てたのだ。

この、私の手によって」


コニャックは内心、どきりとした。

以前より多角的な物事が考えられるよう外科的・薬物的処置は確かにした。

敗因の一つに、機械的で思慮に欠けることがあると判断したからだ。

実際に機械的で読まれやすい武器の扱いや、アドリブに弱いのは彼女のリリース時点で懸念されていたポイントだった。

だが、ここまで思慮深い話をされることは別。


哲学に至るほど、思考深度が上がっていることは完全に想定外。

何よりコニャック自身、己の行いが被人道的な強化措置を行なっていることへ自覚も悦楽もある。

ゆえに、メアリーは来た場所も向かう先も無い。


優れた生体パーツとして生み出され、そして兵器とともに終わる。

その事実を今の彼女に言えば、その刃は自分に向くかもしれない。


思考の拡張とともに機械からヒトに近づいてしまった。

微妙な、感情の揺れすら感知するほどに。


「私は、戦うために生を受けたのですか?」


虚ろでありながら、どこか見透かすような瞳でコニャックを見る。


「…そうだ。私の目指す最高傑作、最強の戦士となるための、特別な存在だ。

分かったか?お前の存在意義が。

そして今度は。心を持つが故に戦闘能力は向上する。

機械的な判断のみに依存せず、臨機応変に"味方を見捨ててでも"己を勝利へ導く事もできる。

それ以上でもそれ以下でもない」


メアリーは無言で頷いた。

しかし湧き上がるものはなんだろうか。

これを感情と、記憶と呼ぶのだろうか。


メアリーの脳裏には、自分の名を大声で呼び心配するエムルの声が残響のように響くのであった。


明日は、帝都ハイデスアに移送されるらしい。

研究所の外に降りしきる雨とは対照的に、帝都はきっと晴れだろう。

なぜか分からぬが、メアリーはそんな気がした。

【ライナーノーツ】

1.タイトル元ネタ:東方Project 二次創作楽曲「レプリカの恋」より。

2.キャラクターについて

コーニッシュ・コニャック→シードルのお酒「コーニッシュ」とコニャック。お酒統一はここにも。


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