第73話 譲れない"モノ" 後編
「興味深い話、とな」
ジェイが促す。
その一言に、場の空気が張り詰める。
「これ、元々は古代遺跡から発掘された技術やってのは知っとるか?
しかも、ただの戦闘用システムやなくて、もっと別の目的があるんや」
ケロを撫でながら、サチハラは意味深に微笑んだ。
古代遺跡からの発掘物に、シキ・ヤサカが手を加えたことはたしかにデータにある。
「もっと別の目的?」
誰もが気になった言葉に、ミランダが眉をひそめ切り込む。
機械と人を一体として動かすことが本来の目的ではないというのか。
「今は紅白のロボット動かすのにつこうてるみたいやがな。
本当は別に機械と機械、人と機械だけを繋ぐんやなくても……ええんやで?」
その言葉は"あること"を示唆している。
まさか、そんな。
勘の良い一部は気づいてしまった。
「そんな非人道的な使い方が!?」
「ほう、、、流石やね。
そう。『人と人を繋ぐ』機械でもある。
それは、個人を集団としてまとめ上げる使い方ができるっちゅうこっちゃ」
けらけらとした態度で残酷さを含んだ言葉を放つ。
要は集団を一つの理念・思想に沿って洗脳・行動させる事ができることと同義だ。
「そんなことを一体誰が望んで?」
「さぁ?大昔に宗教家でもいたんちゃう?
ただ、あんた達は使い方の片鱗を、見て感じて戦って知っとるんちゃうか?」
ウォルノが顔を歪める。
そうだ、彼が初めてビスクドールたちと戦った時の、見事な連携はその要素を含んでいる。
途端、ケロは撫でられながら機械的なゴロゴロ音を立てている。
「サチハラの言う理論には欠落アリ。
それには繋ぐための大規模デバイスが必要や!
んなもん地球上を探してもアリはしないで?」
「ほぉん、ケロの言う通りやな。
んなモンは今の地球上では見てないわ」
今はなくても、"この先"見つからないとも限らない。
ウォルノがサチハラに迫った。
「おい、てめェ。一体何を企んでいる?」
「べつに、なーんも企んでおらんで?
こっちは取引しただけや」
サチハラは平然と構える。
重い沈黙が訪れる。
この場の誰もが、新たな情報を前向きに捉えられるものとは思わなかった。
不意にミランダがこの場を支配する静寂を破る。
「この技術の全容解明ができれば、人類に新たな時代が訪れるかもしれぬ。
だが、その扉は光と影がある。一旦は私たちの胸にしまっておきましょう。
1番に私達の"戦果を広げない"意思は譲ることはできぬ。
この技術の影はそれに繋がりかねません」
「懸命やろなあ。
ま、紅白の機体以外の紛い物……じゃなくて量産型じゃそんな大それたこともできへん。
さて!少なくとも情報は渡したし、対価として廃材とか貰い受けよか。
おっちゃん、案内頼むで」
リンドウに続く形で、サチハラが島内へと消えていった。
後味の悪い対価と、空を覆う曇り空が、彼らに残されるのであった。




