↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4.5 感情の万華鏡
PR
87/120

第69.3話 御伽噺の解釈は

 「ナギヒコ様。伊忌島にてカンナギ隊及びイチマルキュウ部隊が、ラインハルト隊を迎撃・撃破したとの報告が入りました」

ナギヒコの執務室に、そんな一報が入った。


背を向けて一報を聞く彼の顔は、見えない。

「……そうか、ありがとう。

準備が完了次第、カンナギ隊を極東中央行政府へ招きたまえ。

勿論軍備も整えられるよう」

優しく、深い声で指示を出す。



その命令に従った憲兵が退室した。

誰もいない中、ナギヒコのため息が響く。


「ふぅ……、そうかクニヒト。

我が旧友は逝ってしまったか。

あの時、ワシが時の上層部にもっと食ってかかっておれば」

後悔、無念、懺悔、悔悟。

複雑な感情が絡み合ってその表情ににじみ出る。




その時、扉がカチャリと開く。

「お辛いのですか?お祖父様」

「コトハか。すまぬな、心配させて」

愛しい孫の顔を見るやいなや、威厳ある祖父の振る舞いをする。


「いいのです。辛い時は辛いと言ってくださいまし。

誰かを悼む時、素直な感情を表すのは何も悪いことではございません」

静かな、優しい慈愛に満ちた口調だ。


「ありがとう、コトハ。

ワシも良い孫たちを持ったものだ」

孫の頭を、大きな手で撫でる。




「こんな悲しいことを繰り返さぬよう。

私達も在り方を、今一度神話の言葉のように悔い改めなければなりませんわ」

「神話のように、か」



「太古の昔。大地は唸り、青き天空は割れ、天より聖なる方舟いでしことあり。

聖なる方舟、海を、山を、この世の栄えし生命を赤より紅く染め上げた。


総てを紅く染めし後、新たな生命に啓示与えけり。

『私のかわいい子供たちよ、目覚めなさい。


汝ら、花朽つる価値無き者にて、愚か憐れみ得がたき者ばかりなり。

我より伝えられし深き懺悔と導きの名の下に、汝ら悔い改めたる新しき物語を唄い給え』」


コトハはつらつらと、九重共和国に伝わる神話をそらんじた。




「ワシはな、『深き懺悔と導き』とは、亜人の存在と思っておった」


神話の解釈。

そんなものは人それぞれだ。

ナギヒコにはナギヒコの生き方を反映した解釈がある。


「だが、それだけではなく。

知恵ある隣人や、草木・生命。

すべて女神が気付きを人類に与えるものではないかと。

今になってワシは思うのだ。


人類は愚かで、今この瞬間すら戦争をしている。

だが同時に。

ありとあらゆるものから、学んでは前に進める生き物であると思っておる」


綺麗事。彼自身もそう思っている。

それと同時に、人は受け入れて変わっていけることも事実だ、と確信している。



「厳格で慈愛に満ち、人を信じ続けるお祖父様らしい解釈ですわ。

では、私たち姉妹が考えてたことも話してよろしくて?」


ナギヒコは嬉しそうににこやかに

「シュウカとコトハも、言葉の解釈を考えたのか。言ってみなさい」

と返答する。まだ小さいと思っていた孫たちの成長が嬉しいのだろう。



「私達は、至らぬゆえに神にこの地上に残る罰を与えられてしまった。

もし、人類が争わぬ平和な民になれた時、初めて物語を進められる。


争わずに全ての人が分かり合い、負の感情を減らせる世にするよう努力すること。

それが他の生命と調和できる鍵であり、新しい進化があるのではないかと。


そう思いましたの」



頭を撫でていたナギヒコの手を取り、"何か"を渡しながら語る。

「お前達らしい、優しくて理想的な答えだ。

そのためにまずは魔の手から共和国の民達を守らねばな」


「あら、そのためにカンナギ隊を組織したのではなくて?」

「それもそうだな」

一瞬の沈黙。

守るための力、それを行使したことでナギヒコの大事なものは守れたのだろうか。




「さて、傷ついた彼らを癒す準備を進めねばならぬ。

お前も評議会の面々に、説明と指示を出す必要があるだろう」

「そうですわね。

お祖父様、無理なさらぬよう……それでは」


コトハが一礼して部屋を出る。

執務室にしては簡素な部屋の中央に取り残されるナギヒコ。

握られた手の中を開くとそこには、コトハに渡された折り紙の鶴が佇んでいた。




「人が育ち羽ばたいていけること。

それが可能性でも、ワシも信じ続けたいものだ」


ラインハルトが海中に沈んでから30分後。

他愛無い祖父と孫の会話であった。

【ライナーノーツ】

1 タイトル元ネタ:東方Project 二次創作東方ボーカル「御伽噺のカラクリは」

聞きながら書いたんだ許せ…許して?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。