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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4 伊忌島からの凱歌 後編
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第58話 ラスト・デタッチメント

「カンナギ、発艦!」

「相わかった、艦長」


ヨシヒロが操舵を開始し、滑走路から飛び立つ。


「本艦は、今回最前に立ち、その後島までさがり海岸へ誘い込みます。

機関砲、全砲門準備!敵を一機でも多く落とせ!」

「全砲門開け!!同時にチャフグレネード準備!」


ジェイもここぞとばかりに火器管制指令を飛ばす。



「全FS発進ネ!ヒヅルからどうぞ!」

「ヒヅル・オオミカ、アマテラス!行きます!」

「フィリス、マドゥ=クシャ、出ます!」


皆々カタパルトから華麗に、島上に降り立つ。

夜明けの空は紫、藍、橙色のグラデーションに彩られている。

その中で緩やかに吹く、海風の匂いだけをヒヅルは感じた。


「見えた。ゴブ、ビスクドール多数!海上はPSと、歩兵部隊!」


ヨシヒロの一言と共に、海の彼方から"それ"は押し寄せてきた。

 相対するエムルの眼中にも、要塞のような小島が映りはじめた。


「エムル様。こちらはボイハール隊。

マイクロミサイルで島上の砲台へ攻撃開始します」

「あぁ」


ぼんやりとしてしまっていた。

(さっきから味方に配慮など!)

(僕が今まで知る君は、それこそ独りよがりで)


あの島が見えた時、ヒヅルの言葉が脳裏に響いた。

朝焼けに染まる周囲を見回すと、味方部隊が既にミサイルを撃ち始めている。

俺が仲間意識を持つ、など。

ただラインハルトに言われた『責任を持て』を遂行している以上の気持ちなど。


ではメアリーは?

彼女が今隣にいないことを思う。

何故か不安になる、イライラする、落ち着かない。

そうなったのも、元を辿れば……。



「やはり。やはり、ヤツに傷を入れてやらねば!」

「エムル様!まだ突撃には!」

誰の声も聞こえない。ヤツは島の中央か!



「メドラード、真っ直ぐに突撃してくるネ!」

「迎撃は!」

「もうやっておる、艦長」


島とカンナギから無数に撃たれる機関砲を掻い潜るメドラード。

そして、ついに


「貴様には気が済まないだろうがああーーァ!」

「来たな!!」


アマテラスの元に辿り着き、一太刀を振りかざす。


「大振りすぎる!」

「小狡い手ばかり使う貴様が!」


ヒヅルから見たエムルはいつもと明らかに違った。

初めて会った時の無駄のない洗練された動きは、今は微塵も感じられぬ。

それは感情的で、暴力的だ。

一旦空へ逃げ、距離を取る。


「逃すか!ビームダガーなら!」


バスターソードをトンファー状に収納し、逆手にビームダガーを持つ。

と、そこへ

ダダダダダダッ!


「くっ、歩兵どもか!」


地下壕出口から機関砲をイチマルキュウ部隊がエムルに向けた。


「雑魚どもが!」


ビームガトリングを向けるが、そこで一瞬エムルが止まった。


「!?どうしたんだ?」

「…………違う、あくまで俺の目的は貴様だ!」


ガトリングを納めてヒヅルに向き直り、再び斬りかかる。

空まで切り掛かってくるメドラードにセイバーで対抗する。

明るくなり始めた空の下。

2機は縦横無尽な軌道で斬り合いと激しいチェイスを展開し始めた。




「ヒヅルはメドラードと交戦中ネ!」

「こちらジェイ。フィリス!前方よりの別部隊がある程度捌いたら、ヒヅルに加勢!

残りはワシらが片付ける!!」

「了解!」


即座に投げクナイを炸裂させ2機、更にカギヅメで前後より挟み込んできた敵を2機、落とす。



「今です!山を中心に艦砲射撃!」


オールアイがすかさず絶え間ない攻撃の指示を出す。


「うわぁぁァァ!」

「こちら山間部砲台!敵艦砲射撃により部隊が……ナガワ!?しっかりしろ、死ぬな!」


伊忌島の砲撃部隊が、無情にひとつひとつと沈黙する。

それは、まるで屍となった兵士を表しているような静けさだった。



「オールアイ大尉、先発隊、島に上陸!歩兵隊、船を降り突撃!!」


生身の兵達が、ゾロゾロと海岸に降り立つ。

ライフルを片手に進軍し続ける。


「ははははっ!撃ち返しの手も弱まったし、九重軍も大したことないな!」

「このまま押し切」バタッ

「?どうした、おい!?ウッ」


一人、また一人と帝国兵士は何が起きたか分からぬまま、屍となって砂浜に横たわる。



「敵を誘い込めた!

イチマルキュウ部隊、絶え間なく海岸に一斉掃射!地下部隊も全ての銃火器を!」


上陸するPSや生身の兵士たちへ、雨嵐の如く弾が降り注ぐ。

あるものは胸を貫かれ、あるものは頭を吹っ飛ばされた。


「オラオラオラオラァ!!機関砲が弾切れならライフルを、んで次はグレネード!それでも無くなったら石を投げろ!!」


あっという間に海岸線が死体の山で埋め尽くされていく。

既に血の川が海へ向かって流れていくほど、凄惨を極めている。

地獄のような光景が広がる。

この場にいる誰もが死力を尽くした戦いが、今始まったのだ。

【ライナーノーツ】

1 タイトル元ネタ:「デタッチメント作戦」は第二次世界大戦末期、硫黄島の戦いにおけるアメリカ軍の作戦名。

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