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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4 伊忌島からの凱歌 後編
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第50話 キャット&ウルフ 後編

 「各機地上戦準備!キャッシードが突き崩した間に上陸せよ!」

「エムル、そうはさせるか!」

エムルの部隊にヒヅルは向き直る。


「ハヤテ、残弾1!パージシテ身軽ニスベキ!」

「チィっ!」

アマテラスのウェポンラックからハヤテが外れると共に、ミサイルの雨が降り注ぐ。


「セイラか!」

「敵は……排除」

「お前の相手は私だーーッ!」

イゾルディアの着地に合わせ、マドゥ=クシャが飛び蹴りを入れる。


「またウザ猫」

「何度でも!」



 猫といえばキャッフェの方はと言うと。

「逃げるだけじゃ勝てないよ〜、ワンちゃん」

ワイヤーを使って逃げるヤクシャを追っていた。


「なぁ、リィロン。俺が尻尾巻いたらそん時はよろしくな」

「一緒ニ死ネ、ト?」

「俺の代わりにお前が討て、ってこたァ!」


腕と腰のワイヤーを使い空中を右へ左へ逃げるウォルノ。

エネルギー残量からショックカノンを避けるのが精一杯である。

「こうしてる間にも、俺らのホームが危ねェってのによ」



 遠くカンナギが海上で敵の攻勢を受け止めている様子は、ウォルノにもありありと分かる。

「くそっ、敵が多すぎる!」

「プレディ、弱音を吐くよりもガンで落とす!」


「リン、こっちはPSを5機落とした!」

「カルジさっすがぁ!私も!」

ジェゴ3人組が艦上で奮戦する。


「隊長、こっちはなんとか……うあっ!」

「「リン!」」

リンのジェゴが敵の砲弾を喰らって片足を持っていかれる。



 「あっちはあっちでそろそろヤバいな。

リィロン、南の方角にワイヤーを!」

「逃げてばかりじゃ勝てないんだゾッ!」


猛烈に追いかけてくるキャッシードを振り払い、ワイヤーで逃げるヤクシャだがショックカノンを一発もらってしまう。


「ガッ!チキショウッ!もう少しだってのに」

「コッチニ逃ゲテモ島ノ東端ニ追イ詰メラレルダケダゾ!」

「違うな」


ウォルノが短くリィロンに反論する。

「違うな、そこまで着きゃ俺の勝ち、だぜ」

「そんにゃ高く飛んだところで!!」


追いかけるキャッフェが高く飛んだ瞬間を、ウォルノは逃さなかった。


「よし今だ!!テールワイヤー!射出!!」

真っ直ぐキャッシードの顔めがけてワイヤーが伸びる。


「当たれェェェ!」

「にゃんと!?」


勝った!と思った矢先。

「なーんてにゃ♪」

即座に人型に戻り、ブーストダッシュで真上に避けられる。

飛ばしたテールワイヤーは虚しくも、砂浜の方へ空を切るのみであった……。


「……な、なんてこった!!」

「エネルギー残量3%、コノ先海。文字通リ崖ップチダナ」



 「万策尽きたねこの負け犬さん♪」

着地をし、キャッシードに振り返る。

「ハァ〜〜ッやめやめ」

コックピットを開き、両手を上げ、立ち上がる。


「ん?降伏するつもり?」

血に染まる海岸地帯を背に、丘に降り立つキャッシード。

キャッフェが見上げると、コックピットから出てくる1人の青年の姿があった。


「オウ、聞こえてんだろ。猫女のパイロット。

この通りだ、もう勝負はついたろ?

つーわけでゲームセットだ」


とは言え、キャッフェもそんな簡単に敵の言葉を信用はしない。

ビームピストルを真っ直ぐ、ヤクシャの胸に構える。

「抵抗の意思無し、ということかにゃ?」

「抵抗する意味がねェ。

俺の機体はもう動けねェし、逃げようにもこの先は海だぜ?」


「……。ならその胸に隠した拳銃も捨ててもらう」

「チッ、バレバレってか。ホレよ」


見透かされていた。

胸から拳銃とナイフを遥か下の岩場へ放り投げる。

今度こそウォルノ自身、丸腰だ。


「ところであんた『猫に鰹節』って言葉知ってるか?」

「は?負け犬と世間話など」


「まぁ聞けよ。鰹節、っつーのは猫の好物だ。

だから猫の近くに鰹節置いておくのはあぶねェ、転じて『油断できない状況』ってのを指す諺さ」


キャッフェは脈絡の無い話に戸惑いを隠せない。

この男は一体何の話をしているのだろう。


「貴様、私が油断をしていると愚弄する気?」

「ちげェさ。アンタの乗りこなし、俺の作戦を見破る目、今の今まで全く油断すら無かったぜ。

むしろ、油断できない状況は俺だった」


「にゃめるな!念には念を、手を頭の後ろに置いて背中を向けろ!」

「はいはい、だが見てくれよ。

俺はこの立派な尻尾の下にだって、もうブツは隠してないぜ」


そういった瞬間、ウォルノは"尻尾を巻いた"。

「そう、今の今まで、な」

「テールワイヤー回収!尻尾ヲ巻キ取ルニイ!」


ウォルノがテールワイヤーを飛ばしたのは、キャッフェに当てるためでは無い。

"それ"に引っかけるためだ。


テールワイヤーの先は、海岸の岩に立てかけたハヤテの引き金にグルリと巻きついている。

ワイヤーが巻き取られると同時に、ハヤテの引き金が引かれる!!


発砲されたハヤテの砲身の先は……

「東南東112.5度、地上から傾斜30度の砲身の先。

ここまで上手く誘導できるとはなァ」


「!!!まさか!?」

「もう遅ェ」


撃ち出された弾は真っ直ぐに、キャッシードの左胸を撃ち抜いた。

「油断できねェから俺は"それ"を猫から遠ざけたんだぜ」

「んにゃああぁぁ!左半身動力消失、機能停止!

戦闘続行不能!この嘘つき!!」


「『勝負はついた』とは言ったが」

人差し指をビシッと地に伏した猫に突き立てる。

「『俺の負けだ』とは一言も言ってねえぜ?」


キャッフェがセンサー画面を思い切り叩く。

「くっ、くっそおおぉぉぉぉ!!」

負け猫の遠吠えが大空に響くのだった。


「リィロンありがとなァ!

尻尾を巻いた瞬間のこと、よろしく頼んで正解だったぜ!」

ンニイ、と短くコックピット内から返答がかえる。


座席に戻り、ウォルノが一息つく。

「しっかし勝負に勝って試合は負け……ミッション・アンコンプリート、だな」


その言葉と共に、エネルギーダウンしたヤクシャの目がライトダウンした。

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