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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4 伊忌島からの凱歌 後編
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第43話 葛藤の心気楼 ~conflict mirage~ 後編

 「さて、何言われたよ。

お前の顔見てたらよ、分かるぜェ」

ひたいを、ウォルノに軽くグーで小突かれる。


「……言われたんだ。

『お前は俺と同じだ。自分自身のために戦ってるだけだ』って」

言葉を続けるのを彼は優しい目つきで促す。


「戦争を自分の楽しみに使ってるんだ。

同じだって、僕も。

戦争を用いてるだけ、自分の理由に」

日が陰る。外で太陽に雲がかかったのだろう。

部屋の空気が少しひやりとする。


「そうか。俺よ〜ォ、前に聞いたよな。

『お前の戦う理由はなんだ』って。

それは、あの頃から変わってねェ……か?」


彼と初めて会った日のことを、まるで昨日のことのように思い出す。

目を閉じれば、蜃気楼のように2人の会話が立ち登る。


輸送機の中、彼が戦う理由を問われて

『殺された家族の復讐のためだ』

と答えた時。


ウォルノは

『期待外れで、下らない』

と一刀両断したのだ。



「あの時からは、変わった……のかな。

僕が、『戦う』という方法でこの国の希望になることだ、って思ってる。


この国は、この世界は戦争で悲しいことが溢れてて。

それを無くすには、誰かが戦争を終わらせなければならない。


戦争を終わらせる、そのための力……それが僕ら兵士で、FSで。

それらを持った僕が戦争を集結させることで、僕みたいに悲しい思いをする人がいなくなるんじゃないかって。


ウォルノも言ってたよね。敵の兵士を捕縛した時に

『別に命拾いしたやつのことをわざわざ殺す必要もまた無い』

って。


思ったんだ、彼らも誰かにとって大事な人で。

戦争がなくなれば、その人達も死ななくて済む。



だから僕はその戦いを終わらせる存在”希望”になろうと思ってる」



堰を切ったように、今自分が思っていることを、ただまるで書き殴ったように伝えることが精一杯だった。


今まであったこと、考えたこと。

それらが多すぎて自分の思いをまとめて話せていないことはヒヅル自身が重々承知であった。


それでもウォルノは真剣に聞いてくれていた。

彼の、獣毛に覆われた手がヒヅルの頭に伸びる。


ぶたれる、となぜか思いとっさにビクッとなってしまう。

しかし、そうではなかった。


「ハァン、あの時よりは前に進んだみてェじゃねェーか」

優しい言葉と共に、彼は頭を投げた。


「俺ァ、あの時はまだなんも知らねえガキだとばかり思ってた。

ところがどうもそうじゃあねぇじゃねーか。


学がある、自分を変えていく努力してる。

だから俺はお前を相棒だと思ってんだ」


ありがとう、と言いたいが雑多な感情が喉を塞ぐ。



「で、だ。

まあーァまだまだ戦う理由としては強固なモンじゃあねぇけどよ。


それでも俺は、お前とラインハルトは違うと思うぜ?


あいつは戦争って盤面で人殺しを楽しんでる。

不幸と絶望を振りまいている。

確かにそりゃあ自己中心的だ。


だが、ヒヅル。お前はどうよ?

『誰かが不幸じゃない世界』を求めて戦おうとしてんだろ?


ならそれは自分本位じゃなく誰かのため、ってことじゃあねェか?


そこには大きな差があるだろうよ」



ヒヅルのベッドシーツを掴む手に、ぎゅうと軽く力が入る。


「ありが……と……う」

感情を押し除けて出てきた出せた言葉はそれが精一杯であった。


「ヘッ、いいってことよォ。

ま、まだまだだがお前も一歩成長だな。

戦う理由のために、そんなに悩んでたとまでは気づかなかったぜ」


「だって、そんな簡単に答えなんて出せるわけがない。

分からないよ、昔を思い返してみてさ。

戦う意味をそこに見つけるよって」


そこでウォルノはハァ〜とため息をつき顔に手を当てる。


「なんつーか、お前そういうとこネガティブ思考だな?


もっとシンプルで、もっと簡単でいいんだよ。

……いや、俺も悪かった。

俺があの時、期待外れなんて言葉を選んだから難しく考えすぎたんだな、すまねェよ」


ヒヅルは何をそんなにウォルノが謝っているのか、今ひとつピンと来なかった。

どうやらそれは顔にありありと現れていたようで


「いや、いいんだ。

今のお前が分からなくても、この先のお前が理解してくれりゃあいい」


「…………。そか、ありがとう。

なんだか少しだけ、元気が出たよ」


窓から入る日差しが強くなった。


「バカヤロウ、敵の言うこと間に受けてんじゃあねぇぞ!


そんな影くれぇ断ち切れ、言葉の幻影(マジック)に騙されやがって!

1人で無理なら、俺がいる。フィリスや艦長、ジェイのおっさんだってそうだ。


お前が思ってる以上に、みんなお前のことが大事なんだよ。

それを忘れんな!」



いつものニカッと笑った笑顔。

それがここまで頼もしく感じたことがあっただろうか。

僕にとっての"希望"、それそのものがウォルノなのかもしれない。


「ところで、ウォルノの戦う理由って今なら聞いてもいいかな?」


「イエス、とは言えねえな。

ま、お前の決心ってのは、まだまだ気持ちって砂で出来た砂状の楼閣よ。


いつこうやって崩れるか分からねェ。

だから、俺が答えを言っても仕方ね〜ェのよ。


お前の決心に、しっかりとした地盤と大黒柱ができたら教えてやるさ」

意地悪そうな笑顔を満面に浮かべるウォルノ。


だけれどそんなのも、悪くない。

僕は僕の答えをこれからも見つけていけばいい。


前に進めばいい。

前に進んで、もっと揺るぎない戦う理由を見つける。

今は、今はそれでいいんだと心から思えた。


そう思うと、ヒヅルは顔いっぱいに笑顔を見せるのであった。


外は完全に外かんかん照りの気持ちのいい天気となった。

それはまるで、1人の元気になった少年の心を映しているようであった。




…………ジェーンが一連の2人の様子を扉越しに聞いていた。

「はぁぁん……今日の夜はあの2人で決まりねぇ」

どうやら元気になったのは1人ではなく、2人であったようだ。

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