表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4 伊忌島からの凱歌 前編
48/120

第34話 Green-Eyed Monster

 「誰、アナタ……私は知らない」

蛇腹剣を伸ばさず斬りかかる。


「知らない……あなたも、セイラも」

「違う、僕だ!僕だよ!!僕なんだ!!!」


ヒヅルの叫びは虚しく、ビームセイバーと蛇腹剣が鍔迫り合う音に吸い込まれる。


「お前はエムル様の、ブラダガムの敵。排除」

「もう、思い出せないのか……ッ!」


小さい頃からのセイラとの平和な日々が甦る。

アサガオを2人で育てたこと。

算数を教えてあげたこと。

家族みんなで夕飯を囲んだこと。


そして、片手だけを遺して目の前から消えた、あの日のこと。



 「邪魔……消えて」

力で押し切られたアマテラスは、イゾルディアの蹴りと共にそのまま空へ吹っ飛んでいく。


「ダメ、なのか……」

ヒヅルの中で何かが折れる。

放心する中、ビスクドール2機が逃さずその背後を取る。


「やらせるかーーーーッッ!」

フィリスが、ビーム乱射をしながら、突撃する。

そのままビスクドール達を阻み、イゾルディアに回転蹴りで特攻する。


「ウザい猫」

「アナタがいるから!」


回転蹴りを剣で受け止めて、弾き返す。


「ヒヅル、しっかりして!……うああッッッ!」

バック宙をするマドゥ=クシャに、ビスクドール達が背後からまるでサッカーボールを弄ぶかの如く蹴りを入れる。

その後方、バシャンと音を立ててアマテラスは海へ沈んでいくのであった。



 冷たく暗い水面の下。

セピアー色の記憶が、まるで活動写真のように脳裏に浮かんでは消えていく。


「セイラ……僕の知ってるセイラは……どこなんだ…」


虚空に手を伸ばすヒヅル。

その度にセピアー色のそれは、触れることもできず、消えていく。


嗚呼……そうか。

僕が、僕が守れなかったから。

セイラという人間はこの世にいなくなってしまった。


何も出来なかった……。

そんな兄なら君に拒絶されて殺されても……仕方ないんだ。


『太極図システム パイロット適合率 13%』


アマテラスの目が消え、より深い蒼に染まっていく。

その刹那、大きな衝撃が海上からヒヅルの元に伝わった。


「ヒヅル!いつまでアナタきゃあっ!!

助けに……来なさいよ!」

フィリスの声が、仄暗いコックピットに響く。


「私だけじゃなく、みんなが死んでもいいの!!

また、失ってもいいの!?」


!!!!

「そうだ」

一筋の光が、海底に差し込む。


ヒヅルが小声で呟く。

「ここで諦めたら」

呼応するかのように、アマテラスの目にも光が宿る。


「僕はまた、きっと後悔する!!」



『太極図システム パイロット適合率 121%』

Genetic(ジェネテック) Code(コード)

Fragments(フラグメンツ)AL-VANA(アルヴァーナ)”』

ヒヅルの瞳が、また再び突如青竹色に輝き出した。




 イゾルディアが、マドゥ=クシャの右手を切り飛ばす。

「猫じゃなくて、ダルマね」

「攻撃武装、全損……!両腕既に欠損!

もう、ダメ!ヒヅル……化けて出るわよ!」

「さよなら。ビスクドール、一斉射撃」

「了解」


その瞬間、マドゥ=クシャの目の前に水柱が飛沫をあげた。

「……また来たの」


「ヒヅル?!」

突如として、海中から飛び出したアマテラスは、そのままビームセイバーを横に薙ぐ。

その一閃がビスクドールの一体の羽根を切り裂いた。


「背後」

残ったビスクドールが、後方よりセイバーで斬りかかる。


「イゾルディアだけでも帰さなくては……ガッ……!?」

おそらくパイロットも、何が起きたか分からないまま、痛みも知覚するより早く死んだに違いない。

コックピットが一瞬で潰れ、パイロットが血飛沫と肉塊になる。


ヒヅルは、驚異的な反射で振り向くと、なんとそのままスナイパーライフルの銃床で思い切りコクピットを潰したのだ。


「銃で殴るな、という決まりはない」

そのまま念入りにライフルごと敵を真っ二つに切り裂いた。


振り向かず、背部ビーム『日照』でイゾルディアの手足を狙う。

「見えてるの?ヒヅル?」

「そこに」


すかさずビスクドール隊が入り、セイバーでビームを切り払う。

イゾルディアが、まだ動けるビスクドールを連れて撤退を始める。

「部隊半壊。撤退を優先」


「捕縛優先、取り戻さないと」

「深追いするから!」

フィリスもマドゥ=クシャの姿勢制御をしつつ、ヒヅルを止める。



着信の音とともに、ヒヅルの画面にミランダが映る。

 「フィリスの言うとおりよ。

戻ってきなさい、ヒヅル」

「ですが、まだ」

ミランダが通信でヒヅルを制する。


だが想い虚しく、アマテラスのエネルギーダウン寸前を告げる警告音が鳴り響く。

「そうネー!敵は去ったヨ!

ヒヅルもアマテラスもお腹ペコペコ、帰って肉まん食べて元気出す!」

チョウの明るい声がヒヅルの脳裏に届く。


「……そうか。僕は。

一旦は島に希望をもたらしたんだね」

呼吸が浅く、汗をかきながらヒヅルは我にかえった。


それを見つめるフィリス。

ヒヅルの姿を見て驚くものの、同時に彼の力に、本当に希望たる何かを感じずにはいられなかった。


「僕は、君がセイラでもメアリーでもいい。

この戦いを終わらせて、君を……」

「そう、あなたの目には」


海の向こう、小さくなっていく影。

そこにヒヅルが何を見ているのか、フィリスには分からない。

そして何故か、その姿にフィリスは一抹の不安。

いや、不安とは違うどこか燻った何かが芽生えた気がした。


「なんなの、『メアリー』って」




_________。

 「イゾルディア、帰投しました」

「収容しろ、各部点検!

ビスクドールはフライトユニットの廃棄と交換をしろ!」


作業員たちは、イゾルディアがラインハルト艦隊のドックに戻る様子を眺める。

コクピットが開き、メアリーが降りてくる。


「メアリー様、ご無事で。

……顔色が優れませんがいかがしま……ぐぅっ!」


話しかけた整備員の横っ面にメアリーの裏拳が走る。

「うるさい」


…………、その時メアリーの脳裏にヒヅルの顔が浮かぶ。

そして。

知らない記憶。


アサガオ、算数、そしてこれは、父、母……あ、に?

「あなたは……邪魔者……知らないしらないシラナイう、うああぁぁぁ!!」


急な頭痛に倒れもがくメアリー。

「早く救護室へ運べ!!

誰かメアリー様に鎮静剤を!!」


即座に近寄ってきた医療班が大量の鎮静剤を打ち込む。


「急な発作。原因は不明」

「一体なんなんですかね。この御仁は」


医療班の1人が答える。

「ただの生体パーツ、ですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ