友の変化 その2
俺が宗太郎に仕掛けたハッタリは全部で2つ。
1つは鉄球が爆発すると言うこと。あれはハカセからもらっていた予備の鉄球で、鉄球自体には何の効力もない。ただの鉄の丸い玉だ。
もう1つは俺の言った約束。今回で言うと、幼馴染のお願いに対して"ノー"と答え続けなければ、それに反応して爆発するところ。そんな自動的に反応する機能は勿論ない。もう一度言うが、ハカセが操作していなければ、ただの鉄の丸い玉だ。
正直に言おう。あの時点で宗太郎を最終防衛基地に帰しつつ、その動きを制限できる素材は持ち合わせていなかった。安定を取るのであれば、あの時点で殺しておくのが良かったのだろう。
他の人間ならそうしていたが、宗太郎は俺の復讐するべき対象の1つなのだ。たった一晩で殺すわけがない。たった一晩で苦しみから解放されるなんて、俺の味わった苦しみからしたら割に合わない。
せいぜい俺の作り上げた偽の縛りで苦しみ、悩み、幼馴染に迷惑をかけてくれ。
ここまでの話をハカセとしていたのだ。
「オヌシのやりたいことも理由もわかった。じゃが……騎士団のことじゃ。俺の命なんてどうでもいい! みないな感じで話してしまうかもしれんぞ?」
「いや、おそらくそれはない」
「なぜじゃ?」
ハカセの疑問はいたって当然だし、護衛騎士団は幼馴染に陶酔している。だが、問題なのは、その場合宗太郎が発する情報が俺絡みなところだ。
「東一のやつら……その中でも特に護衛騎士団は幼馴染をずっと見ていた。だからこそ、幼馴染にとって俺がどういう人物か理解していたはずだ」
少し恥ずかしい自覚の仕方だが、男友達の中では、俺が1番親しい存在だったはずだ。だからこそ最初の頃は恋愛感情を抱いたし、周りから妬まれいじめを受けた。
……なのに助けてはくれない。そんな微妙な立ち位置にずっと居続けられたからこそ、俺は我慢が効かなくなってしまった。
……話を戻そう。とにかく俺は幼馴染にとってある程度特別なポジションにいた。そしてそれは当然、護衛騎士団も不服ながら理解していたはず。
「だからこそ言えない。言いたくない。黒ジャケットの正体が俺だとわかってしまったら、あのクソ幼馴染は間違いなく黒ジャケットの存在を追ってしまうからな……東一に俺はもういないのに、東一に俺がいた頃の状態に逆戻りしちまうってわけだ。そんなの、あいつらにとっては不本意の塊。いやむしろ最悪だろ?」
「……なるほどなるほど。考えたものだのう」
ハカセはペストマスクの上からアゴを撫でる。表情からは何も読み取れないが、褒められていると純粋に嬉しくなる。ハカセなら尚のことだ。
「今頃宗太郎は幼馴染に慰められているだろ。そして悩むはずだ。桃鈴様はこんなにも俺を大事にしてくれているのに、俺は知っていることを秘密にしたままで良いのか? ……ってな。でも言ってしまったら桃鈴様を巻き込んで爆発するかも……だから悩む。苦しむ。言い淀む。言わないことよる違和感は不信感に変わり、信頼関係にわだかまりを生む」
「ふーむ……」
「まだそこまでの状況には至ってないだろうが……幼馴染は宗太郎のメンケアで夢中だろ。もしかしたらそれはそれで他の騎士団に羨ましがられるかも……どちらにしろ、ハカセには悪いことは1つもないぜ」
「だと、いいのじゃが……まぁいい。地獄まで一緒に行くと言った仲言った仲じゃ。どうなろうとついて行ってやるわい……で、明日からの動きについてじゃが……」
2人の漢が語り合う中、戦争を照らす赤い太陽は、粛々と夜明けへと進んでいく。




