友の変化
変わり果ててしまった友の姿に俺は急いで近づき、老人に言い聞かせるように、わざとらしく大きな声で話しかける。
「おい! しっかりしろ! おい!」
「……ふ、へへ……おれは桃鈴様に嫌われたんだー……」
なんだか、髪の毛も白くなりそうな勢いでへこたれだす宗太郎だったが、諦めず何度も問いかけたおかげか、宗太郎の口から気になる単語が出た。
「桃鈴様に……嫌われた?」
「…………」
なんだ? 桃鈴様と言えば、最後に会ったのはここに至るまでの廊下で宗太郎の病室から出て行くのを見たのが最後だ。
(その病室の主が、桃鈴様に嫌われた?)
俺の中の心配が、一気に疑いへ置き換わる。
「なぁ……俺はお前の部屋から桃鈴様が出て行くのを見たんだ」
「……あ?」
「なぁ、桃鈴様はここで何を言っていたんだ? お前たちは何をしていたんだ? まさか、お前がこうなっているのは、この怪我ではなく、直前で話した桃鈴様が――――」
原因なのではないか。そう言おうとした瞬間、宗太郎の腑抜けた表情は一気に硬くなり、眉間に皺を寄せて怒鳴りつけてきた。
「ッ違う!! 桃鈴様は悪くない!! 悪いのはあの……ッ!!」
「お、おい……」
「そ、そうだ……俺が負けるわけないんだ……あんなやつにッ……!! ッ!! ああっ……!!」
叫びにも聞こえる声を上げると、宗太郎は突然頭を抑えて呻き始める。心配して肩に触れるがひどく湿っていて、手から伝わる感触からは、頭どころか肩にまで汗が滴っているのを感じさせた。
「な、なんだ……これ……」
宗太郎の変化は覚悟していた。包帯まみれになっていたり、骨が骨折してギプスに体が覆われていても不思議ではない。そう思っていたのだ。
蓋を開けてみればなんだこれは。体へのダメージは思っていたより多くはないのに行動がおかしい。まるで精神病にかかった患者を相手しているようだ。こんな宗太郎は想定していなかった。
しかし、1つだけ確信したことがある。
(桃鈴様の話をしただけでこの変わりよう……何かあったんだな……お前と桃鈴様の間に……何かあったんだな!!)
「宗太郎ッ……!」
「違う……俺は見捨ててない……間に合わなかっただけなんだ……俺は……お前なんかに……」
「落ち着け! とりあえず落ち着くんだ! 病み上がりなのに、問い詰めるような真似して済まなかった……だから少し落ち着け!」
とりあえず、少し聞いただけでこんな状態になってしまう宗太郎にはこれ以上聞きようがない。これ以上は他の患者の迷惑になってしまうと考え、必死に落ち着けようとするが、当然俺は精神科医でも何でもないため、いくら言っても落ち着いてくれなかった。
「ちょっとどうしたの…………あなた! 何してるの!」
結果、騒がしい病室を怪しんだナースの手により、宗太郎は取り押さえられ、俺は状況説明のために、保護者としてついていくことになった。
なぜこうなったのかなんて俺の方が聞きたい。そう言いたげな自分の口を必死に抑え込みながら。
――――
同時刻、新潟派閥側の森の中に、人知れず建てられたテントの中で、ハカセと田中伸太は人知れず話し込んでいた。
「ククク……しかし驚いたわい。まさか、あんなハッタリで騙すとは……リスクもあるはずじゃが……」
「だろ? ああやって焦ってる時にゃ、ハッタリが効きまくるんだよ」
語り合う2人の間には、ハカセのスキル用の鉄球が転がっていた。




