嘘の秘密
まさかの昼投稿
(さて、異能大臣のところに行こっかな〜)
橋波くんのお見舞いに行った後、僕はルンルン気分でとある場所に向かっていた。
(橋波くんは気付いてないかもしれないけど……こっちは感じちゃってるんだよね……このトランシーバーで)
僕は異能大臣との繋がりにより、本人の顔や本人だと決定付けるものを見なくても、黒ジャケットがどこにいたのか、私のスキルが届かない範囲でも特定することができる。
だから、現場に黒ジャケットが居たことに僕は気付いていたし、彼の魂の色を察したからこそ現場に向かい、橋波くんを発見できたのだ。
「そういえば……」
(橋波くんの体……やけに切り傷が多かったんだよねぇ……)
僕の記憶では、黒ジャケットに切り傷をつけさせるような攻撃手段はなかった。メインウェポンはあくまで素手である。いくら武器を持っていたと仮定しても、体の傷は切り傷よりも打撲の方が多くなるはず。なのに、発見当時の宗太郎くんの体には打撲の跡はほぼ見られなかった。
(僕が見ないうちに戦闘スタイルが変わっちゃったのか……それとも……)
そこで浮かぶ1つの可能性。
(伸太以外の……第三者の存在がいたのか)
まあいい。どうせいつか明らかになることだと切り替え、僕はとある場所に急いだ。
――――
異能大臣が1人佇む会議室。そこには異能大臣とテーブル、オフィスチェア以外何もなく、聞こえる音はタバコに火を付けるためのライターの音のみだった。
「……来ましたか」
そんな静寂を切り開くように、何の脈絡もなくそれは現れた。
「ごめんねー! 遅れた! 桃鈴才華10秒遅れで現着しましたー!」
桃鈴才華。戦争当初、異能大臣と秘密の同盟を結んだ同盟相手。その気になればトランシーバーでどこでも会話ができるが、重要なことはこうやって面談の形をとっていた。
「いいえ、この程度なら問題ありませんよ……では、話を聞かせてもらいましょうか?」
「うん! 僕が第二防衛基地に着いた時の話だよね……」
桃鈴才華は第二防衛基地に着いた時には壊滅していたこと、既に橋波宗太郎が倒れているだけで周りに誰もいなかったこと、橋波宗太郎から話を聞いたところ、自分がついた時には誰もおらず、後ろから攻撃されて気を失ってしまったと証言したことを異能大臣に伝えた。
桃鈴才華の話を聞いた途端に、異能大臣はあるひとつの可能性……いや、確定した真実について話し始めた。
「ふむ……その橋波くんの話は間違いなく」
「嘘だよねー」
「……ですね」
異能大臣の言葉の続きを奪うように、桃鈴才華が橋波宗太郎の証言は嘘だと言い切った。2人の表情には変化も1つもない。お互いに話を聞いた時から嘘だというのはわかっていたようだ。
「ふふ……ではなぜ橋波くんの証言は嘘だとわかるのですか?」
親が子を見るような微笑みを浮かべ、異能大臣は桃鈴才華に問いかける。
「それ答える必要ある?」
「何……ちょっとした謎解きゲームですよ。戦争で根詰まっているでしょう? 時間もありますし、少しはこういう風にポップに楽しみましょうよ」
お互いに空とわかっているのなら、わざわざ答える必要性は無い。ごく当たり前の疑問だが、異能大臣はストレス発散のゲームだと語る。
「……まぁいいよ! で、橋波くんの証言が嘘である理由だけどね……まず1個目として、答えるのを渋ってそうな感じだった割には、内容がしょっぱかったことだね。どこにそんな悩む理由があるんだって感じだったし、あの時点で何か隠してるんだろうなってのは目に見えてたよ!」
橋波宗太郎の口からもったいぶって出てきた言葉は、「自分は何も見ていない」「後ろから第二防衛基地を破壊した人物が出てきたので何もわからない」だった。これが真実なら悩む理由がわからない。むしろ橋波側から即答して叱るべきだ。
「ふむ……なるほど……で、2個目は?」
「発言の内容そのものだね! なんで後ろから攻撃した人物が第二防衛基地を破壊したってわかるのか……普通なら防衛基地を破壊されたんだから、複数人いると考えるのが自然でしょ? なのに橋波くんの口ぶりはまるでその人物単体だけで破壊されたみたいな言い方だったし……それって意味わかんないでしょ?」
通常、防衛基地は単独では破壊できない。それを可能にしているのは、今の所黒ジャケットのみで、それは異能大臣も把握している。たった1人の人間に破壊されたと周りに伝わると混乱を招いてしまうため伝達していないだけで、黒ジャケットが防衛基地を単独で破壊できる戦闘力を有していることは上層部も把握していることだ。
なので橋波宗太郎の口ぶりは明らかにおかしい。まるで黒ジャケットが基地を破壊しているところをリアルタイムで見ていたかのようだ。
「だから多分、橋波くんは黒ジャケットに遭遇して、壊してるところを間近で見たんだよ! そんで言葉を渋ってたのは、そこで何か黒ジャケットの秘密を知ったんだろうね! これでどうだ!」
体を小さくゆすって、異能大臣に向かって人差し指を前に出し、可愛らしくポーズを決める桃鈴才華。そのポーズは即興で考えたはずなのに、妙に可愛らしく様になっていた。
「……さすがですね」
余裕でゲームをクリアしたのを見て、異能大臣はポーズに反応もせず小さくうなずくと、賛辞のつもりなのだろうか、遅めの拍手を桃鈴才華に送った。




