呪い
なんか投稿続いてるわ。
「……あ? ここは……」
俺が目を覚まして最初に見たのは見覚えしかない天井だった。
(ここは……確か……最終防衛基地の病室か……?)
それが病室の天井だと気付くと、俺はすぐに察しがついた。どうやら俺は誰かに回収されて、最終防衛基地まで運ばれたらしい。
「痛づ……」
意識が覚醒していく道中で、俺は黒ジャケットが田中伸太だったことを思い出す。
(あんなやつが……下から数えた方が早いぐらい弱かったあいつが……!)
信じられない。信じたくない。あんなやつが俺を倒して、かつ今日本中に名を轟かせているなんて考えたくないしあってはならない。
考えれば考えるほど、嫉妬か悔しさか、負の感情が湧き上がってくる。
(くっ……考えるのは後にしよう。とりあえず現状の確認を……)
「時間は……」
まだ痛む首を無理やり回し、時計の針を見やる。時間は朝の8時で、戦争中の起床時間としては遅めだが、日常生活の中では平均的な起床時間だ。
(俺がやられたのが深夜で……第二防衛基地から運ばれて朝の8時ってことは……)
俺が第二防衛基地に行ったのを知っていて、そんな芸当ができる人間を俺は1人しか知らない。
「桃鈴様……」
桃鈴様は俺を見捨ててはいなかった。自分を助けてくれたのだ。嬉しい感情が一気に頭の先端から足のつま先をかけ巡り、その勢いのままに口から感嘆の言葉が漏れ出る。
「ん? なぁに?」
普通なら別に漏れても問題なかった。桃鈴様がいなければ。
「…………」
「……ん?」
自分の首からギギギギと機械的な音を立て、声が聞こえた方向を見る。丹精な顔立ち、蠱惑的な声色、女性としての可愛らしさを感じる身長、身長とは対象的に豊かな乳房、はい。どこからどう見ても桃鈴様ですありがとうございます。
「……桃、鈴様」
「……なぁに?」
心を落ち着かせるのに約3分以上かかった。と言っておこう。
「はぁ……はぁ……」
「ど、どったの? 大丈夫?」
「だ、大丈夫です……目が覚めたらいきなりで……びっくりしただけなので……」
そんなこんなで時間をいただき、本人の目の前で喜んでしまったという恥ずかしさを抑え込むことに成功した。
「で、桃鈴様……ここにいるということは、やはり私を運んでくれたのは……」
「うん。僕だよ」
「やはり……私の失敗をカバーしてくれたのですね。ありがとうございます」
「いやいやー、気づけてよかったよ!」
ベッドから上半身を起こし、深々と頭を下げながら思う。さすがは桃鈴様だと。俺が第二防衛基地に行ったのを肉眼で見守っていてくれた唯一の人物ではあるが、それだけで俺が倒れたタイミングで助けてくれるとは、さすがは桃鈴様だ。運命にも愛されていらっしゃる――――
(……ん? 待てよ? ……気づけるのか?)
当然だが、第二防衛基地から最終防衛基地まではかなりの距離がある。それこそ、基地そのものが破壊されても気づけないほどの……
「桃鈴様……」
「あっ! ごめん! こっちから言ってもいい?」
なぜ気づけたのか、それを聞く前に桃鈴様から言わせてほしいとお声がかかった。コロコロと変わる顔にキュンとしつつ、発言権をお渡しする。
「あのさ、異能大臣も聞きたがってたことなんだけど……第二防衛基地を壊したのって、誰なの? 何があったの?」
なんだそんなことかと、俺の中で拍子抜けの感情が生まれる。そんなの簡単だ。犯人は黒ジャケットと犬だ。黒ジャケットも勿論だが、犬が馬鹿にならない強さをしている。初見では他の騎士団も怪しい……そう言おうとした時、とある可能性が俺の頭の中を駆け抜けた。
(…….黒ジャケットの正体は田中伸太だった。今の桃鈴様にそれを言っていいのか?)
今の桃鈴様は客観的に見て危ない状態だ。その引き金は間違いなく黒ジャケットの対決……正体を知った今考えると田中との対決の後で明らかに変わってしまった。
(思い返してみると、職員室に行く前の桃鈴様の表情は違和感を覚えるほど緊張感に溢れていた……単純に、犯罪者と対面する時の武者震いだとその時は思っていたが……まさか……)
思い浮かんだのは1つの可能性。あまり信じたくはない可能性。そんなことあるはずがないと思いつつも、黒ジャケットの正体が田中だったという異質を知ってしまった以上。この可能性もあるんじゃないかと心のどこかで感じてしまう。
「……宗太郎くん?」
「……!」
まずい。これ以上は不審に思われてしまう……どうする? 言ってしまうか? 俺の思い浮かんだ可能性のパーセンテージなど極僅かだ。そんな可能性にしがみついていては……
「……第二防衛基地を……壊したのは……」




