第1章 42話
「そうだ、アルテミス!俺達をそこに転送できないのか!?」
勝彦は転送してくれとアルテミスに頼む。
「駄目です。冥王星内は、不正防止の為、転送妨害装置が機能しています。転送装置の上に乗っていただかないと転送する事ができません・・・」
「転送装置?」
「来た時に、転送された部屋の事です」
(あの部屋か・・・いきなり局長が挨拶に来た部屋だな・・・)
確かに、何もない殺風景な部屋に装置みたいな機械が置いてあるのを思い出した。
「お前達、よけない事を喋っているんじゃない!早く来るんだ!」
と、さっきまで部屋を警護して、道を通してくれた警官が怒鳴りつけてくる。
「リリア!」
「勝彦君・・・ごめん・・・」
リリアは勝彦に、申し訳なさそうに言った。
それを見ていた勝彦は、心の中で謝るのは自分だと思いながら警官の手を振りほどこうとする。でも、結局押さえつけられて身動きが取れなくなる。
結局二人は、そこから警官達に連れて行かれてしまったのだった。
数時間後・・・・。
結局勝彦は、ホテルの部屋に戻っていた。警官達に連れられて、そのままホテルの上層部の部屋に監禁されてしまったのである。
しかも、今度はスイートじゃなく、普通の部屋にリリアと別々の部屋に入れられてしまった。
当初、勝彦が考えていた計画は、これで完全に破綻したのである。
勝彦は、ホテルを取り囲んでいる観衆を味方につければ、物事がスムーズにいくと思っていが、どうやらは見通しが甘かった様だ。これでは冥王星から出る事は出来ない。
「くそー、こんな事になるなんて・・・」
勝彦は、部屋に閉じ込められてしまってから、部屋の中央を行ったり来たりしていた。自分のミスで、とんでもない事態に陥ってしまった事に焦っていたのだ。勝彦にとって、こんな事は計算外だった。これでは地球は救えない。
新銀河連合同盟の役人なら、重大な違反を見過ごすはずがない。そんな行動をとろうとすれば止められるに決まっている。
地球を救う事は、重大な違反だという事をクー太から聞いていたのに、管理局長の事を頭に入れずに行動に移したのがいけなかったのだ。リリアの立場を考慮してなかったのがいけなかったのである。
むしろ、その事によって逆に目立ってしまい裏目に出てしまったのがいけなかったのだった。今思えば、管理局長はこうなる事を予測していたのかもしれない。
何故なら、管理局長はリリアのお父さんから命令を受けていると言っていた。もしかしたら、リリアが地球に来る前に、リリアの父親から「もし、娘が地球を救う行動や言動を取る様な事があれば、止めるように」と言われていたのかもしれない。
だから、もしもの場合は、リリアをすぐに拘束できるように準備をしていたのかもしれない。冥王星に来て、すぐに挨拶に来たのも、おそらく様子を見に来たに違いない。
(局長の奴め!・・・)
だとすれば、リリアは自分の星を出る前から地球に行くことを父親から止められていたのだろうか?勝彦を連れてシンピ星に行く事に気づいていたのだろうか?
(リリア・・・・・)
だが、詳しい話はリリアと別々の部屋に入れられたので聞くことが出来ない。
(俺がやった地球を救う演説は、余計な事だったのかな・・・?)
勝彦は心の中で深く反省した。そして、うかつな行動をとった俺自身を心底恥じて悔いていた。
「くそー、一体どうすれば・・・」
勝彦は、部屋の窓まですたすたと歩いた。そこから外を見ると、集まっていた観衆はいなくなっている。おそらく、管理局長によって解散させられたのだろう。
「アルテミス、聞こえるか?」
勝彦は、試しにアルテミスを呼んでみた。
「はい、聞こえていますが?」
「俺達、捕まっても、お前とは話せるんだな・・・」
監禁されているのに、アルテミスと普通に会話が出来るのが不思議に思えた。
「そうですね、リリア様はベルイウングの王族で、新銀河連合同盟の議員でもありますから無下に扱えないのでしょう。それに、私達はまだ、何もしていません!宣言をしただけで、実際に何か行動を起こしたわけではないですからね」
「まあ、普通に考えたらそうだよな・・・・」
「ただ・・・多分この会話も盗聴されていると思いますので・・・」
と、こっそりと教えてくれる。
「そ、そうか・・・」
(だとすれば気軽にアルテミスに話しかけるのは良くないな・・・)
「それにしても、リリアは無事なのか?」
「はい、勝彦殿の隣の部屋におられるはずです」
「そっか・・・無事ならそれでいいよ。じゃあリリアは、俺と同じようにお前と喋っているんだな?」
「はいそうですね、リリア様は、勝彦殿に申し訳ないと言っていますよ・・・」
「そっか、だったら気にするな!俺も悪かった!と、言っといてくれ・・・」
「わかりました」
しばらくの沈黙の後・・・。
「勝彦殿、リリア様がありがとうと言っています」
「そっか・・・」
(アルテミスを介しての会話もなんだか変な感じだな・・・)
勝彦は部屋のベッドの前に立ち、そのまま仰向けに倒れこんだ。
目線を天井に向けると、天井が光っている事に気付いた。地球では、照明器具が取り付けられているのだが、ここにはない。直接、天井が光っているのだ。
(やっぱり、ここは地球じゃないんだな・・・)
と、勝彦はしみじみ思った。
それにしても、地球を救う為とはいえ、自分のせいでリリアが捕まってしまって、ホントに申し訳なかった。たしかに地球を救いたいと思っていた。
でも、リリアの好意を受けて、リリアが傷つく姿なんて見たくなかった。それに、自分を地球から脱出させるのって、どれ位の罪になるんだろうか?
勝彦は、地球に残された最後のチャンスだったとはいえ、少し悪い気持ちになった。
「なあ、アルテミス・・・・これからどうなるんだ?」
閉じ込められたものの、これから何が起きるのかさっぱり見当もつかない。
「聞いた話によりますと、ベルウイング星から、リリア様を連れ帰る為の、使者が派遣されているそうです。なので、それまでここに監禁される事になるでしょうね」
勝彦は、ここでベッドからむくっと起き上がる。
「おい!?それって・・・・どれ位かかるんだ?」
「わかりません、最悪数ヶ月になるかもしれませんね・・・」
「くう・・・数か月もこんなところで!?地球の危機が迫っているのに、俺は何もできないのかよ!?」
勝彦はそばにあった枕を手に取り、握りしめる。
(このままでは、シンピ星に行くチャンスが無くなってしまう。地球を救うチャンスは刻一刻と過ぎていっているというのに・・・。クソ!このまま、だらだらと閉じ込められたら、地球を救うチャンスは完全に自然消滅してしまうぞ!)
「くそー!俺が調子乗ったせいで!」
勝彦は、握りしめた枕を叩きつけた。




