第3章 145話
「そ・・それより、もうワープはしたのか?ダークマターエネルギーの件はどうなったんだよ?」
勝彦はまた顔を背けて慌てて言う。またいつもの理解できない感情が起こったのを感じたからだ。
(そ、そう言えば、サルガスを出てからどうなったんだっけ?)
勝彦はこの3日間、サルガスでの事が忘れられず、ずっと心ここに在らずというような日々を過ごしていた。だから、ここ数日の記憶があいまいだった。
「何言ってるんですか?サルガスを出発してすぐに超長距離転送しましたよ。気が付かなかったのですか?」
と、クー太は不思議そうに尋ねてくる。
「え?まじで?俺全然覚えていないぞ・・・」
「そうだね、仕方がないよ。ついさっきまで何を言っても「うん・・・」しか答えてくれなかったしね・・・」
(そういえば・・・・俺はクー太がこれまでずっと一生懸命笑顔を振り向けていたのを、ことごとくスルーしていた様な気がする・・・俺、やっぱり相当落ち込んでいたんだな・・・)
と、勝彦は改めて自分の落ち込み様を理解していた。
「そっか・・・すまなかったな・・・」
勝彦がそう言うと、また沈黙が続き二人の間に気まずい雰囲気が続く。
勝彦もクー太も、お互い落ち込んでいた時を思い出した。
(今度こそ話題を変えないと・・・)
「そ、それでさ、ちょっとはシンピ星には近づいたのか?」
そう言って勝彦は、落ち込んでいた時の話題をすぐに変える。
「うん、でもまだまだ先だよ。あと数回は超長距離転送をしないといけないしね」
「ということは、またダークマターエネルギーを回収しにいかないといけないんだな?」
「はい、そうです。今現在次の回収場所を調査中です」
と、アルテミスが答える。
(なんだか、アルテミスの声も久しぶりの様な気がするな・・・)
「調査中ってことは・・・まだ決まっていないのか?」
「はい、なにしろ、この宙域は銀河帝国領内です。この宙域の恒星や惑星に関するデータが少ないですから」
「じゃあどうすんだ?どうやってダークマターを探すんだよ?」
「そうですね、ちょっと時間はかかりますが、ダークマターのエネルギーの高い宙域に行って、一つ一つ回収できるか確認するしかありませんね・・・」
(つまり、行ってみないと解らないということか?)
「おいおい、それじゃあ逆回りの方が良かったんじゃないのか?」
「いえ、影響的には、ほとんど変わりません!結局、超長距離空間転移をすれば一度の転移で大幅に飛べることもありますから。現に、次の目的地の候補星は、ほぼ決まっています。ここで長い距離を空間転移できれば誤差の範囲内です」
「でもさあ・・・銀河帝国に見つかったら危険じゃないのか?」
銀河帝国領内ということは、クー太達の星と戦争中だと聞いている。もし、見つかったら、すぐに戦闘になったりするかもしれない。
「はい・・・かなり危険です。でも・・・これしか方法がありません!」
「きっと大丈夫だよ!いざとなったらアルテミスがうまく逃げてくれるよ」
と、クー太が楽観的なフォローをいれてくる。
「で、でもよ、いくら戦争中といっても、いきなり攻撃を仕掛けてくるようなことはないんだろ?」
(俺の記憶が確かなら、確か以前そういっていたはず・・・・)
「うん、絶対とは言えないけど、ちゃんとした理由があれば攻撃は仕掛けてこないはずだよ」
と、クー太はそう答えた。
「はい、それにリリア様の地位をうまく使えば交渉は可能なはずです」
と、アルテミスも付け加える。
「フーンだったら、大丈夫じゃん!むしろ今までいろんな危険な目にあって来たんだ。今回もきっと乗り切れるさ!」
「うふふふふふ・・・」
すると、ここでクー太がクスクスと笑う。
「な、なんだよ!」
勝彦は、クー太が急に笑い出したのが気になった。
「ううん・・・なんだか、いつもの勝彦君に戻ったなって・・・」
「う、うるさいな!もう忘れろよ!」
「うん、そうだね!僕達は早くシンピ星に行かないといけないしね!」
「ああ、そうだよ!いざシンピ星へ!ってな!」
勝彦は手を銀河の中心部に指さした。
銀河系はいつもと変わらず、ただ、渦を巻いて輝いている。




