第3章 144話
第3章 宇宙の漂流者
勝彦とクー太が、惑星サルガスを出てから3日が経っていた・・・。
アルテミス号は、ダークマターエネルギーを回収したエネルギーを使用して超長距離空間転移を行い、ちょうど地球から8000光年くらいのところを航行している。
勝彦とクー太は、初めての超長距離空間転移も成功して、何事もなくシンピ星に向かっていたのである。
・・・・そう、今のところ勝彦の気持ち以外は、すべて順調に物事は進んでいたのだった。
でも、あれから3日経っていたというのに、勝彦の気持ちは深く落ち込み、ふさぎ込んでいた。
彼らの手紙を読み、クー太に励まされた後、一見、勝彦はサルガスの出来事を吹っ切れたかのように見えていたが、時間が経つにつれ引きずっていたのである。
サルガスを出てからの3日間、勝彦は明らかに元気がなく、ずっと黙って宇宙空間を眺めている日々を送っている。クー太は何度も勝彦に話しかけるが、いつも反応出来ずにいた。勝彦は、クー太に話しかけられてもただうなだれるだけで、銀河系の中心部をただひたすら眺めているだけだった。
「ねえ、勝彦君!!」
勝彦が宇宙を眺めている中、また、いつもの様にクー太が話しかけてくる。
「・・・なんだ?」
勝彦は少し反応したが、また宇宙を眺める。
「僕ね、勝彦君と今こうやって一緒に居られるだけで、ものすごく幸せなんだよ!」
と、クー太はニコリと笑って笑顔で微笑む。
「クー太、お前・・・」
勝彦は改めてクー太の方を見つめた。
今まで、クー太は勝彦を心配して声をかけ続けてきたが、今回は明らかに違う感じだったからだ。
今までは「大丈夫?」とか「元気出して!」とかだったが、今、勝彦に向けるクー太の顔は明らかに違っていた。
勝彦も、今までクー太が何とか元気づけてくれようとしているのは気づいていた。でも、どうしても気持ちの切り替えができないでいたのだ。
「僕はね、地球にいた時の記憶をものすごく覚えているんだよ。地球にいた犬だった時、毎日勝彦君が学校から早く帰ってこないかなって、ただ・・・それだけを毎日思っていたんだよ・・・でも、僕は犬として死んでしまっても、魂だけは勝彦君との楽しかった日々をずっと覚えていたんだ!本当は・・・死んでしまったら、前世の記憶は忘れるものだけど、僕と勝彦君が一緒にすごした思い出は全く忘れなかったんだ!これは僕の中で勝彦君との思い出がすごく印象に残るくらい楽しかったからなんだよ!」
と、ニコニコ微笑みながらクー太は勝彦に話しかける。
「・・・・・・・・」
そんなクー太を、勝彦はただ、黙ってクー太の話を聞いていた。
クー太の真剣な話は明らかに勝彦を気遣ったものである。すべての話を聞かなくても、勝彦の心にはクー太の気持ちが痛いほど伝わっていた。
「だから僕は・・・ベルウイング星から地球にやってきたんだ。魂に刻まれた勝彦君のとの思い出を、心の中に残してね!魂に刻まれた大切な思い出は、忘れられないものなんだよ!だから・・・大丈夫だよ!!きっと次に生まれ変わった時、ジャネさん達は一緒に幸せになってるよ!きっと争いのない平和なところで・・・」
ここで、クー太の真剣な話を聞いて・・・「ふうー!」って天を仰いで吹っ切れた様な声を出す。
「ごめんな!クー太・・・気を使わせてしまってよ!もう大丈夫だよ!本当は俺、サルガスを出た段階でとっくに吹っ切れていたはずなんだ!なのに・・・いつまでも、ウジウジしてすまんな!」
と、勝彦はさっきまでの暗い顔から一転して、急に明るくふるまった。もちろん、それは心配してくれるクー太の事を心配させまいと、明るくふるまった。
でも、正直、クー太に言われたからと言って急には気分を切り替える事は出来なかった。勝彦は何度も何度も、何故助けられなかったのか自問自答していた。 それだけ、サルガスでの出来事は勝彦の心を闇の淵に陥れていたのである。
「そんな事ないよ!!僕は勝彦君の事を信じているから!」
と、クー太は疑いのない純粋な笑顔を向ける。
「うう!!」
クー太に見つめられて何故だか照れてしまった。
(な、何だ?このドキドキは、こいつは男だ!こいつは男だ!)
と、自分に言い聞かせて落ち着かせる。
「ば、バカやろうー!いつまでもウジウジしていたら、またクー太に殴られるだろ?」
と言って、ぷいっと顔を背けた。
「あわわわ!!あれは・・・その・・・ご、ごめんなさい・・・」
勝彦の言葉を聞いてクー太はあわてて取り繕う。
そんなクー太を見て、勝彦は自然と笑みがこぼれる。
「あははははは!!大丈夫だって!おかげで目が覚めたよ!ありがとなクー太・・・」
勝彦は穏やかな気持ちで、クー太を眺めた。
あわてたクー太の姿を見て、心が落ち着いてきた。さっきのクー太の真剣な言葉は、確かに心に響いてきたし、胸に来るものがあった。
でも、今のクー太の笑顔の方が100倍破壊力があったし、気が付くと冥王星に行く前の時の様ないつもの明るい雰囲気に変わっていた。
(ホント・・・クー太には頭が上がらないな・・・)
困った時、悲しんでいる時、犬の時からクー太はいつもそばにいてくれる。
(ありがとうな、クー太・・・)
勝彦は心の中で何度も感謝していた。
「勝彦君・・・」
そう言って、クー太は微笑みながら勝彦を見つめてくる。
勝彦とクー太は目を見つめあい、二人の間に気まずい空気が流れた。
(なんだ?どうしたんだ?何故クー太は何も言わない?それに、何でこんなにドキドキしているんだ、俺は・・・?)




