第2章 143話
「クー太・・・」
勝彦は、二人の手紙と、クー太の言葉で、自分が我を取り戻していくのが自分でも分かった。勝彦の表情はみるみる希望に満ちた表情に変わっていく。
(そうだよ、俺は地球を救わなければならないんだ・・・)
ふと、視線が腕に巻かれたミサンガに移る。冥王星を出る時にキャロリンに巻かれたものである。キャロリン達は、命をかけて勝彦達を送り出してくれた。こんな所でのんびりしている場合ではない。
(ここで、俺が落ち込んでどうするんだ!このままでは、何も変わらない・・・地球の危機が早まっていくだけだ!)
「アルテミス・・・済まない。今までベストを尽くしてくれていたのに、怒鳴ったりして・・・」
勝彦は、さっきまで感情的になっていた自分を恥じていた。
(そう、アルテミスは、何も悪くない。アルテミスは自分が出来る最大限の事をやってくれていた・・・・)
それなのに、勝彦は自分自身の不甲斐なさを恥じて、他人に八つ当たりしたに過ぎなかったのである。
「いえ、私は自分が出来る事をやっただけです。私も勝彦殿の応えに、応える事ができなくてすみません!」
アルテミスは、あれだけ感情的に怒鳴ったのに謝ってくる。それを聞いて勝彦はのすごく自分自身が恥かしかった。
頼りなく、自分勝手な自分が悔しくて堪らなかった。
「ありがとな・・・クー太、アルテミス。地球を救うために色々やってくれているのに、俺ばかり足を引っ張って・・・」
勝彦は複雑な気持ちでクー太を見ていた。
自己嫌悪、自己反省、悲しみ、様々な感情が入り乱れて、何とも言えない気持ちだった。
でも、気持ちを切り替えなければならない。どうしても、やらなければならない事がある。
「そんなことないよ、地球は僕の故郷でもあるんだからね!」
「そうだな・・・あいつらに負けないように、俺も自分の使命と運命を受け入れないといけないな・・・さあ、行こうか!地球救うために!」
「そうだね」
「では、ダークマターを使用した超長距離転移に入ります。ここから先は5000光年以上先に飛ぶことになります。よろしいですね?」
「ああ、やってくれ!」
そう言って勝彦は、サルガス第六惑星を眺めれる所に移動した。
そして・・・・地球にそっくりなサルガス第13惑星をいつまでも眺めていた。あの星のどこかで、ジャネイロとシンシアとアレスは眠っているのである。
(俺は・・・彼らの事を絶対忘れないだろう。国の為に、国の事を思い、恋人と、友と過ごしていた彼らを・・・)
勝彦がサルガス第13惑星を眺める目には涙が流れていた。いつまでも、名残惜しそうに眺めていた。勝彦は・・・いつまでも心の中で、彼らの事を思い、馳せていたのである。
あの出来事は・・・・この星にとっては一つの歴史である。
もしかしたら、地球の過去でも、あのような悲劇の歴史の一幕があったのかもしれない。
だけど、それを知っている後世の人たちは、何も知らない。
後世の人達が知っているのは、国が亡び、国が興り、王が死に、新たな王が立つ、そのような歴史の結果しか、俺達は知らないからだ。
俺達の旅はまだ始まったばかりだ、無事に帰って来られるか分からない。
俺達が地球を救えるかどうかは、誰にも分からない。
もしかしたら、使命を果たせず、力尽きるかもしれない。
でも・・・もし、そうなっても、それもまた運命なのかもしれない。
今回の様に、ジャネイロや、シンシア、アレスが死んでしまったのも、また運命なのだから・・・・。
勝彦は、アレスにもらったネックレスを握りしめて、いつまでもサルガス第13惑星を眺めていた。
そして、しばらくしてからアルテミスは出発した。遠く離れた銀河の彼方へ・・・。




