告られアタック
中二病を絶賛発症中の姐さんとある意味こじらせている主人公の話です。
朝。
「Good morning! 姐さん♪」
「あぁ、あはよ」
いつもの挨拶。
今は姐さんの家の前にいるわけだ。
「今日も制服姿が決まってますね! まぁ姐さんは何でも似合うと思いますけど♪」
「……ナマハゲの衣装でもか?」
「……」
「……」
「似合いますよぶはっ!」
姐さんの愛の鉄槌が俺の鼻に炸裂。
「てめぇ、俺を馬鹿にしてんのか! ……しっかし、なぁ~んか、このやり取りって懐かしい気がする」
「こういうパターンっすか? そうですねぇ~、なんか調子出てきました。(ボトボト)」
「ん? そうか。じゃあ……やるか?」
「ぶっ!! あ、朝から? 姐さん正気っすか?(ボトボト)」
大胆すぎる。しかも、人が見ているかもしれない道路だというのに。
勿論、今鼻血が出ているのは鼻っ面にグゥをくらったからだ。
「ね、姐さん、そこまで積極的になってくれると嬉しい限りですがね、やっぱりちょっとは自重しとかないと……」
「じゃあ行くぞ! 『サイクロン・インパクト』!!」
拳が竜巻の如く突っ込んできた。
「ぶほぉぉぉおぉぉぉおおおおぉ~~~~」
不意打ちだった。
空中で回転しながら吹っ飛ばされ、近くの民家の塀に叩き付けられた。
「どうだ? この技は昨日完成したばかりの物なんだが……体力消耗が激しいのが欠点だな」
あぁ、そういうことですか。俺はてっきり“あっち”方面の話かと思ってしまいましたよ。
この時、俺はたいそうガッカリした顔をしていたのだろう、
「まさかとは思うが、お前今やらしいこと考えてただろ?」
言い当てられてしまった。もう、穴があったら入りたいわ!
「あ、あそこに穴が空いてるぞ」
「おぉ、ナイス! ……・ってマンホールじゃないか!? って今の声姐さんじゃない」
「おいっす、竜輔」
声がしたほうを振り向くと、聡が立っていた。
「さぁ~とぉ~しぃ~。てめぇ、俺を下水まみれにしたいのか!」
「いやいや、そういうんじゃなくて」
「あ、そうか。自分の神通力を自慢しに来たんだな? そうかいそうかい、そりゃ~ようございましたな! お得意の力であのマンホールに蓋でもしとけよ!」
前も言ってたように聡は神通力(つまり超能力)が使えるエスパーなのだ。
と言っても読心術専門らしいから蓋を閉めるなんてできっこないが……。
「それはそうと、いいのか? “姐さん”行っちまったぜ?」
「のわぁ~、待ってくださいよぉ姐さ~~ん!」
まったく、聡のせいで調子がまた狂ってしまった。
学校着いたらしばいてやるぅ~と心に誓った。
学校。
「おはよう、清原君」
え~と、あなた誰ですか?
教室に入ると一人の女子に声をかけられたのだ。
黒髪を結びもせずに背中まで伸ばしているので、ホラー映画の“あの人”みたい。
しかし、顔まで髪で隠しているわけではないからして、決して怖い印象はない。
「お、おはよう」
とりあえず、挨拶。
「氷見院さんもおはよう」
「う、おはよう」
姐さんもなんか動揺している。
え~と、マジで誰だっけこの人?
「姐さん、この方は誰ですか?(ヒソヒソ)」
「馬鹿、同じクラスだろ! 岩倉さんだ!(ヒソヒソ)」
あぁ、そういえばそんな人いたなぁ。
俺ってば姐さんしか見てないから、顔と名前が一致しているのは姐さん以外だと……聡しかいない!?
「フフフ、あのね~清原君に“大事な”話があるの。ちょっといい?」
「え!? 俺に?」
「そうなの。じゃあ氷見院さん、ちょっと借りるわね」
この時の姐さんの顔は険しかった。
そして、姐さん以外の女子に連れ去られるのは初めてだ。
「で、話って何?」
岩倉さんに連れ去られて今は部室棟にいる。
もう朝練の時間は終わっていて、誰もいない。
と突然、岩倉さんが手を握ってきた。
「お願いがあるの。今私ね先輩と付き合ってるんだけど、なんか相性が合わないみたいで別れようと思っているの。
でも彼って結構しつこいの。でね清原君って喧嘩強いでしょ?
ちゃちゃっと片付けて欲しいってわけ。勿論お礼はするわ。なんでも言って」
つまり、付き合っているカレシをやっつけてほしいんっすね?
「あー、なるほど。でも、そういう仕事なら、姐……氷見院さんのほうが向いてると思うよ?」
「そうじゃなくて、他に好きな人がいますって感じにしときたいの。ダメ?」
なぁ~んか、どこかで似たようなことがあったような……。
「だ、大体わかったよ。でも、それなら俺じゃなくともいいと思うなぁ。カッコイイ人なら沢山いるわけだし……」
言葉が途中で切れたのは、岩倉さんが目に涙を浮かべ始めたからだ。
オォ、カミヨ、コレハワタシニアタエラレタシレンナノデスネ?
「わかんない? 私、清原君のことが好きなんだよ」
うわっは、ラブレターは最近沢山貰ってるけど、直で言われるのは初めてだ。
しかも、何故かドキドキしていたりする。
馬鹿屋郎!! 俺には姐さんという大事な人がいるではないか!
馬鹿馬鹿馬鹿。俺って最低だな。
激しく自己嫌悪する。
しかし、泣き始める岩倉さんも放っておけない。なんと言うか、男の義務ってやつか?
「まぁまぁ、落ち着いて。その……カレシのことについては引き受けるよ」
「本当? じゃあ早速昼休みにでも♪」
うわっ、気が早いお方で……
しかし、うまくやり込められた気がする。
涙は女の武器ってやつ?
それから昼休みになって。
「何だよ、てめぇは!」
「あぁ……悪いんだけどさ、岩倉さんと別れてくれないかな?」
なんで俺がこんな事言わなきゃなんないのかが、か~な~り疑問だ。
声をかけたのは、察しの通り岩倉さんのカレシというやつだ。
第一印象はホスト! 見るからにホスト!
もう、こいつのあだ名は今日からホスト! ホストになる為だけに生まれてきたような顔をしてやがる。将来なりうる職業もホストだ、それ以外はぜってぇぇ~~認めん!
「んだよ、てめぇ、京子を狙ってんのか?」
ホスト男の名は伊集院というらしい。
金持ちの匂いがする名前だ。
偏見だ。
「い、いや、決してそうわけじゃないんだ。俺には将来を誓い合った人がブふっ!!」
「そりゃ、だぁ~れのことかな?」
後頭部を殴ってきたのは姐さんだった。
「え、姐さん!? なぜここに??」
「話は聞いた。あいつをぶっ飛ばすんだったら俺がやる。お前は後ろで観戦してろ!」
姐さんはブレザーを脱いで俺に投げ渡す。
う~ん、姐さんの“にほひ”が染み付いててこれまた最高。
極楽に浸っている間に、いつの間にか周りにギャラリーが集まっていた。
「おいおい、まじでやるのか、あの子?」
「お前知らねぇの? あいつ確か“鮮血の拳”とかって異名が……」
どこからともなく、俺は知らない言葉が出てくる。
鮮血の拳?? 何それ? まぁいっか。
姐さんの目が燃えている。今日は一段と輝いてますねぇ。
「あんた誰?」
「なんだ誰だと聞かれても、答えないの普通だが今日は特別に!
2年2組、氷見院柳。あんたには恨みはないが、ここで俺のストレス解消相手になってもらうぜ!」
ね、姐さん、それって偽者の方の3バカの言い回しっすね。
「ふ、ふざけやがって! 女のくせに!」
「関係ねぇだろ!? そういう事は俺に勝ってから言えっての!」
「この野郎!!」
伊集院はジャブを放ってきた。
姐さんは勿論避ける。
「おせぇ!」
体制を低くして、足をはらう。
伊集院はバランスを崩して床と接吻していた。
「うわぁ、汚な」
姐さんは短い感想を呟きながら、腹を蹴り飛ばす。
伊集院の体が宙に浮く。
地面につくまでに立て続けに拳やら蹴りやらを叩き込み、最後に背骨にかかと落とし。
重力を無視した技だ。
これぞ奥義、『メガトンダイナマイトグレイトぉ』!
伊集院は痙攣しながら気絶した。
「ふぅ~、すっきりしたぁ~」
いい汗かいたと言わんばかりの清清しい顔をしている。
「すごいっす、姐さん! ってあちゃ~」
確かに姐さんの戦いっぷりには感動した! しかし、
「どうした?」
「……岩倉さんと別れてくれってのが目的だったのに、倒しちゃったら……どうなるんっすか?」
「あー……いいんじゃねぇの? ある程度は痛めつけてやったし、後になってもこっちの言う事なら聞いてくれんだろ?
つーか、反抗させねぇよ」
さすが姐さん、暴力に物を言わせる作戦ですね。
賛成です。
社会的モラルうんぬんはこの際、横に置いておこう。
「わ、わかりました。行きましょう! ここにいると空手部とかに勧誘されるかもですよ?」
「うお、それはまずい」
姐さんと足早に教室に戻った。
とりあえずミッションコンプリートだ。
放課後。
「そういうわけで解決したし、納得してもらえた?」
「うん、ありがとう。でも、まだ解決してないことがあるわ」
俺は岩倉さんに報告していた。
「え!? 俺って変なことしちゃった?」
「ううん、そんなことじゃなくて……返事、まだもらってないから」
「え~と、なんだっけ?」
思い出せない。何か聞かれた?
あ~も、はやく言ってくれないと姐さんに置いてきぼりにされるんだけど。
「あなたのことが好きってことに対しての返事よ」
真剣な眼差しで俺を見る岩倉さん。
考えるまでもない。俺は姐さんと生涯を共にすると決めているんだ。
しかし言葉が……出ない。
「あ、えっと……その~」
「どう?」
「い、いや~、岩倉さんみたいな人ならさ、いくらでもいい男が見つかると思し、俺なんかだと勿体無いよ。それに俺、好きな人いるし」
「……氷見院さんがいいんだ?」
「う、うん……」
気分が悪くなった。
この後の岩倉さんの行動が未知数であるため、俺はその場を立ち去った。
割とこういう場面は経験してきたはずなのになんだかモヤモヤする。
そうだ! 姐さん成分を補給しようじゃないか、グフフ。
校門の前に姐さんが立っていた。
「姐さぁぁぁ~~~~~ん!!」
俺は無意識のうちに姐さんに抱きついた。
「おい、こんなとこで抱きついてくるんじゃんねぇよ! 離せ!!」
「う~ん……やっぱ姐さん最高っす!」
「な、何があったんだよ?」
「いやいや~、姐さん成分の補給っす♪」
その夜、俺はなかなか眠ることができなかった。
それはわずかながらに脳裏によぎった言葉……
“俺は本当に姐さんのことが好きなのか?”
主人公は喧嘩だけはかなり強い設定ですが、今思えばメンタルが弱すぎますねー。
読み返してみると、このまま最終回1話手前まで持っていっても違和感がないのですが、どうしても出したいキャラがいるもので、まだまだ続きます。




