訪問アタック
少しアマいお話でもいかが?
※視点がまたしても入り乱れますが、元々分割していた話を無理矢理1つにつなげたためです。御了承ください。
<<竜輔視点>>
「……どうした?」
「いえ、別に……」
「……」
「……」
さっきからこんな調子だ。
あ~も、俺はいつからこんなに弱気になってしまったんだろう。
今、俺と姐さんは両思い(?)ってやつだ。なのに何故に言い出せないんだ!?
前はひたすら大胆かつ積極的にアタックしてたのに……
現在、教室にて昼食をとっている。勿論、姐さんと一緒にだ。
姐さんがちゃんとした“女子の格好”をし始めた日(その日の記憶がかなりトビトビなのが気にかかるが)以来、なぜか姐さんに話し掛けにくくなった。
これが普通なんだと言い聞かせるも、やっぱり、かあちゃんと似すぎている為か前より積極的になれない。そうか、髪の毛だ。髪型だけで人ってこんなにも変われるのか?
俺はただ明日、早く学校が終わるからデートに誘おうとしているだけなのに。
「……竜輔、どした? 熱でもあるなら早退したらどうだ?(ズズズ)」
「い、いえ、大丈夫ッス! 馬鹿は風邪をひかないでしょ?」
「まぁ、そうだな。(モグモグ)」
ははは、変わったな、俺。
「あ、そうだ。明日学校終わってから暇か?」
え!? 姐さんから誘ってくれた? ラッキー!
「は、はい~! 暇で暇で困ってたんですYO!」
「なら、ウチ来るか?」
「はい! お供させていただきます」
何故か敬礼してる俺。
姐さんは食べていた弁当を片付けながら俺を睨む。
「おい、いい加減に先輩と後輩みたいな喋り方ヤメロよな」
「ははは……以後気をつけます」
「“姐さん”言うのもナシだ!」
これまたキツイな。
この喋り方、板についちゃって直しようがないんだもんな。
でも、久々(?)の怒った感じの顔も最高だ!
そんなことを考えながら明日が待ち遠しい俺だった。
<<柳視点>>
翌日の午後。
誘った理由は気まぐれ。
ただ、やっぱりその……両思い?になったから一緒にいる時間を増やしたかっただけ。
まぁ、前の状態でも多すぎた気もするが……気にするな!
「ただいま~!」
「お邪魔しま~っす」
メイドの諸君が迎えに来た。
「お帰りなさいませ。あら、今日は清原様もご一緒で?」
メイドが出てきた。
私の身の回りのお世話を専門にしてくれる芹沢葉子さんだ。
「え~と、芹沢さん。後でこいつの分も持ってきてくださいな」
「はい、わかりました。ふふふ」
何がおかしいのかわからんが、とりあえずさがっていく氷見院家メイド軍団。
「まぁ、とりあえずお……私の部屋に行くぞ」
「は……じゃなかった、う、うん・・?」
何故か疑問系で答える竜輔。そんなに直すの難しいのか?
私も私で喋り方が曖昧だが……
そして、私の部屋に入る。
「まぁ、テキトーに座ってくれ」
「う、うん」
「……」
「……」
何、この沈黙は?
そういえば何するか考えもしなかった。
宿題でもやる?
馬鹿! 私もそんなに真面目じゃないし、こいつものってこんだろ!?
ううう、誤算だ。数学は得意な方だが……
さて、どうする?
沈黙。
何、この空気は?
この前入った時とえらく違う。
大好きなネェ……や・・なぎさんの部屋。
小さなテレビ、一世代前のゲーム機、ビデオデッキ、机、ベッド、本があまり入っていない本棚。
“南京錠”や“チェーン”、“封印と書かれたお札”で厳重にロックされたクローゼット、サンドバッグ、10㎏のダンベル2個。
(((((ガクガクブルブル)))))
トレーニング機材はともかく、クローゼットの中には一体何が!?
あぁ~も、そんなことはどうでもいい!
この状況を打開する手立ては……あれしかないな。
「や、柳……さん?」
「うひゃうお!! な、何だ?」
驚きすぎだ。驚いた顔もいいけど。
「え~と、そのぉ~……し、宿題をば教えていただけないかと……」
「お、おう、宿題だな? やろうやろう、まさかお前から勉強の話になるとはなぁ」
とりあえずクリア!
とにかく、今日でた英語の長文和訳を教えてもらう事に。
「ふむふむ。ここはbe動詞がきてるから、受身の訳をするんだ。じゃあ、やってみ」
「え~と、“タケシはサヤカに抱きつかれた”……!?」
ドキドキドキドキ
はっ俺なに想像してんだYO! 勉強に集中しろ!
「……つ、つぎは?」
「え、えっと、ここは関係動名詞だから、主語を訳してここから後を……」
自然とヤナギさん(言いにくい)の肩があたる。
ドキドキドキドキ
馬鹿! 集中集中!!
やましいことなんて何もない。俺はただ勉強を教えてもらっているだけ!
「お~い、聞いてるか?」
「は、はい! 大丈夫ッス」
「じゃ、訳してみ」
「え~と……」
こんな具合でなんとかラスト一文。
「ここは長いけど、自分でやってみ」
「……“彼は彼女に紛れもなく大人の作法でキ、キ、キキ……」
多分、訳自体は頭の中に思い浮かんでいるのであっているのだろう。
でも……ドキドキドキドキ
言えるかぁ~~~~~!!!
助けを求めるように姐さんの顔を見てしまう。
姐さんはなんだか恥ずかしそうに明後日の方向を見ている。
オォ、カミヨ! アナタハワタシヲミステタノデスカ?
「ど、どうしたんだよ? は、はやく訳せ!」
うひ~、そんな無茶な。
あ~もダメだ。これ言ってしまうと俺が俺で無くなっちまいそうだ!
誤算だ。(さっきも言ったが、数学はできる方だ。)
まさかこんな過去問ごときに落とし穴があったとは……
竜輔も竜輔で何躊躇ってんだYO!
たかが英文だろ!? 噛み付いてこないからとっとと終わらせろ!
「や、ヤナギサン……」
「う……な、なんだよ?」
「ヤメマセンカ?」
逃げたな。だが、退くことも勇気だ! この場合、君のその判断は私を救った。
英雄だ! ではご褒美に私の熱いキ……
右手で思いっきり自分の頬をはたいた。
何考えてんだYO! 馬鹿か? こんな時にしてしまったら……その……
「ドウカシマシタカ?」
無機質な声をだしてこっちを見ている。
「イヤ、ナンデモナイ」
真似して誤魔化してみた。
「……」
「……」
再び沈黙。
「あのさ~」「え~と……」
声がハモった。
「「あぁ、そちらからで……」」
「……」
「……」
「「ぷっ!」」
2人して笑い出す。
「姐さん、さっきからおかしいですよ?」
「うるさい、お前もだろ!? って姐さん言うな、敬語も禁止!」
堂々巡りだ。
このままどうやって行動に出せばよいやら……そうだ。
<<竜輔視点>>
「リュウスケ、エイガデモミルカ?」
無機質な声で姐さんが聞いてきた。
「いいっすねぇ! 何があるんっすか?」
姐さんがテレビの下の台から一本のビデオテープを取り出す。
って、VHSですか?
姐さんの家はお金持ちだからDVDレコーダーが部屋に一台あってもおかしくないのになぁ~。
タイトルは……
「何て読むんっすか?」
「うむ。私にもわからんのだ。気になってはいたのだが、なんだか気持ち悪くてな。
一緒に見てくれんか?」
ラベルに書いてある字は日本語でも英語でもなかった。
スワヒリ語的なインチキ臭い文字体なのは確かだ。
とりあえず、デッキに入れて再生してみる。
「なぁ、もしホラーだったら……やめていいか?」
姐さんってそういうのダメなんだ? やっぱ、女性っすね。
「はいはい、そんときは俺に抱きついてきてもいいっすよ」
なんとかいつもの調子で言ってみる。
「……頼む」
はい? 姐さん今なんて? もしかして満更でもない?(ドキドキ)
「あ、でも、えっちぃビデオだったらやめてもいいっすか?」
「な、なんでだ? 男のお前なら喜ぶとか……しない?」
「え~と、多分その時点で姐……柳さんを襲っちゃいますよ、あはは・・」
ボケをかましたつもりだ。しかし、
「そ、そんときは……いいんじゃないか?」
……あ、あぁ、そういうことですか!
ついに姐さんもボケの世界にはまってしまったんですね?
そうですか、そうですか。
「何なら教えましょうか?」
「お、襲われ方か?」
……あなたが一生懸命なのはよくわかりました。百点とは言わず、千点差し上げますから今日はそこまでにしてください。いや、大胆な姐さんも素敵かもしれませんが……。
そう言ってるうちに、ビデオの中身が始まった。
真夜中の海に大きな船が一隻。
夜風にあたっているのか、女性が手すりにもたれて陰鬱な顔をしている。
……どうやらただの洋画のようだ。
「なんだぁ~普通じゃないっすか~。期待しちゃった俺が馬鹿みたい~(はぁ~)」
「そうだな、がっかりだ……」
え~と、今日俺はいつもの調子に戻れそうではありますが、姐さんがおかしいです。
言ってる事全部がマジに聞こえるのは俺だけ?(ドキドキ)
<<柳視点>>
洋画なんて久し振りな気がする。
たまにはいいか。
でも、なんかがっかりだな。
ここでちょっと刺激的なことがあれば……
な~んて、甘いこと考えていた私が馬鹿だった。
どうやら、恋愛物らしい。
どうせ、親父かお袋殿の物がなにかの拍子に紛れ込んだのだろう。
しかし、ラベルは外国語だったのに日本語吹き替えなのが意味不明。
そして物語はクライマックスへ。
「ジュディ、一緒に来るんだ! 僕は君がいないと……」
「トニー、私は一緒には行けない。やっぱりお父様を放っておけないわ」
「……そうか、でもいつか向かいに来る! その時は結婚しよう」
「えぇ、待ってるわ、トニー」
2人は抱き合い、キスをした。
いつも思うのだが、こういうシーンは苦手だ。じっと見てるのが恥ずかしい。
思わず顔をそらすと竜輔も同じ事をして、私と見つめ合う形になってしまった。
「……」
「……」
なりゆきに任せて顔を近づけてみる。
頭の中は真っ白。目の前には竜輔の顔しか見えない。
同じく、竜輔もこちらに近づいてきた。
「りゅ、竜輔……」
私は成り行きで目を閉じた。
唇が触れるか触れないかまで来た。
とその時、
トントンっ
「っ!!うあわわわ!!!」
「おわぁっ!!」
2人はお互いの後方に飛び退いた。
「いっつ~、はい?」
「お嬢様、お茶をお持ちしました」
芹沢さんが紅茶が乗ったお盆を持って中に入ってきた。
くそぉ~、竜輔が来てから2時間以上は経っているというのに、今ごろお茶ですか?
図ったな、芹沢さん!
「あらあら、お2人とも何のお遊びをなさっているのですか?」
まぁ、疑問に思うのも無理はない。
私と竜輔は部屋の端と端にいて、壁にへばり付いている状態になっているからだ。
「あはは……気にせずに」
「そうですか? では、ごゆっくり~♪」
邪魔者退場。
映画はすでにスタッフロールが流れていた。
2人の間に気まずい空気が漂う。
<<竜輔視点>>
ここのメイドさん達はご主人に親切じゃないな。
この前も思ったけど、謙虚さってのがない。
ここは気遣うだろ、普通!
あ~あ、あれ逃したら今度はいつになるかわからなかったのになぁ~。
失望感と絶望感でテンションダウン。
姐さん、俺はここまでのようです。
とその時、
『オメェ、情けねぇなぁ~。愛しの姐さんなんだろ? ここは押し倒す勢いでいかなきゃ振り向いてくれないぜ? キスぐらいとっととやっちまえ!』
頭の中で角と羽が生えている悪魔が現れた。よく見ると顔は目つきの悪い俺。
『いけませんよ、姐さんを大事に思うのであれば、ここは謙虚にいけばいいのです。思い切った行動は後々良くない方向にいってしまい、挙句の果てには破局。ここは次の機会を待つべきです!』
白い羽を生やした天使も出現。こちらも例によって俺の顔、しかもキラキラ目。
『うるせぇ、お前なんてお呼びじゃねぇんだよ! 遅ければ取り返しのつかんことだってあるんだぞ!』
『そうやって急ぎすぎると足元をとられて取れる物も取れませんよ!』
脳内戦争勃発!
積極的で大胆な自分。
謙虚で確実派な自分。
さて、勝者は……
プスプス
「お、おい、頭から煙出てるぞ。大丈夫か?」
フッ、ナニモカモモエツキタZE。(ガク)
通算100回目の気絶(失神も含む)達成!
来年ギネスに申請してやると心に誓う俺だった。
<<柳視点>>
まさか、こんな事になろうとは……
誤算だ。(数学は得意な方だ。)
さっき電話があって、親父とお袋殿は思いつきでニューヨークに行ったらしい。
あの2人らしい行動だ。
私には妹がいるが、留学中で今はオーストリアにいるはずだ。
故にメイド軍団を除けば……竜輔と2人きり!?(ドキドキ)
い、いや、落ち着け。今までだって2人きりの場面など数えられないくらいあった。
一昨日は、清原宅で一緒だったんだし……
「や、柳……さん?」
気絶から復活した竜輔が私を呼んだ。
「ん? 何だ?」
「やっぱ、悪いで……悪いヨ。俺今日は帰りま・・るヨ」
日本語になってない。そこまできついのか、普通に喋るのが?
「ま、まぁ~待てって。喋り方はもう五月蝿く言わんからいつも通りでOKだ。でも、せめて飯ぐらいはいいだろ? 帰りは車で遅らせるからさ」
「はぁ。ならお言葉に甘えて……」
なんとか抑えた。
今日中にさっきの続き(?)にケリをつけたい。
<<竜輔視点>>
なんとかいつもの調子を取り戻しつつある俺。
なぜなら、たった今しゃべり方はどうでもいいとお許しが出たからだ。
それに、先ほどの脳内戦争はなんと悪魔側の勝利に終わった。
メイドの方々は夕飯作りの為、周りから消えている。この機を逃せば後はない。
そんなわけで、
「姐さん、目ぇ瞑ってください」
「なななな何でだ?」
「いいからいいから、ささ、はやく!」
「こ、こうか?」
姐さんは目を閉じた。
そして俺は姐さんの唇に自分の唇を重ねた。
その間、5秒。
なんてムードのないと言われればそれまでだ。
でも、いいんだ。
「……いいい今なな何した?」
口元を押さえて姐さんが聞いてきた。
姐さん、鈍いです。
「さっきやりたかったやつですよ」
「ささ、さっきっていつだ?」
「芹沢さんが割り込んできた直前にやろうとしてたことっすよ」
真面目に答える俺って馬鹿?
「そ、そうか……ふぁーすと……これでよかったんだよな?」
「え!?」
「なんでもない」
「!!!!っ」
始めは何が起きたかわからなかった。
気づいた時には姐さんの顔が視界一杯にあった事。
次に、口で息ができなかった事。そして、唇に柔らかい感触があった事。
コンドハネエサンカラデスカ!?
「……これで貸し借りナシな」
貸し借りって何?
いや、そんなのどうでもいい。これで俺達は立派な恋仲……でいいのかな?
そのあと、食事の準備ができたという事で食堂へ向かう。
「おぉ、おいしそう!」
「この前が豪華過ぎただけで、いつもはこんな感じだ」
並べてある物は普通だった。
ご飯、お吸い物、ハンバーグ、野菜。
確かに、普通の家庭では何処ででも目にする事ができるメニュー。
しかし、俺の家で見ることはまずない。
「いっただっきま~す♪」
速攻でハンバーグを貪る俺。
こういうの貧乏性というのだろうか?
「おいおい、そんなに急いで食べることない
「あ~、言わんこっちゃない。ほら、水飲めだろ?」
「だってこんな……ぶほっぶほっ」」
言いながら、姐さんが背中を摩ってくれた。
「えっほっぶっほ(ゴクゴク)……ぷは~た、助かった~」
「……行儀悪いぞ」
「き、気をつけます」
それから他愛もない話をしながら食事を終えた。
そして、荷物を取りに一旦姐さんの部屋へ。
「さて、忘れ物は……ないな。 じゃあ、今日はこれで」
「私も一緒に送ってく」
俺と姐さんは車に乗り込んだ。
<<柳視点>>
真っ暗な道を走っていく。
冬でもないのに車の中がやけに寒い。
「姐さん、別にわざわざ一緒に来てくれなくても……」
「好きでやってる事だから気にするな」
「さいですか」
竜輔に関して、前はもっと積極的だったのに、最近は控え目になったなと思った。
以前の私ならこんなに嬉しい事はないと思っていただろう。
でも今は違う。逆に腹立たしい。
……やっぱ男装してないとダメなのか?
そう思っているうちに車は竜輔の家に到着した。
「じゃあ姐さん、また明日」
「あぁ、ちょっといいか?」
私も車から降りた。
「何っすか?」
「ちょっとこっち来い!」
竜輔を引っ張って車が見えないところまで連れてきた。
「やっぱり、これダメか?」
そう言って、髪をいじる。
「え!? どういう意味ですか?」
「いつもの調子でいてほしいし、顔ぉ見ずらいだろ?」
何を言っているんだ、私?
「あ~……じゃあ、(ごにょごにょ)」
「……は、正気か?」
「正気も正気、マジ本気っすよ。それならいけると思いますよ」
「わ、わかった、校則に触れない程度に頑張る。けど、ウソとか言うのはナシだぞ!」
「は~い。じゃあ、おやすみなさ~い!」
竜輔が背を向けると、
「竜輔!」
「え?……んん!!」
本日3回目。
あ~あ、初めての日に3回もやっちゃたよ。
「あ、 ああ……あははは……」
暗がりでよくわからないが、目の前の彼はかなり恥ずかしそうだ。
「おやすみ」
私は早足で車に乗り込んだ。
何気に姐さんはウブという話でした。
見返すと少し恥ずかしくなります。
修正はちょくちょくしていこうと思います。




