マザコンアタック前編
※全て柳視点です。 ややこしくて申し訳ありません。
今日は……なんだそのー……イメチェン?
ボサボサの髪を真っ直ぐに下ろして、“普通の女子の制服”を着てみた。
そして、昨日、美佳さんから借りた写真と鏡に映る自分と見比べてみる。
「……確かに似てるかも……」
写真に写っていたのは“竜輔”と美佳さん。そして、大人の女性。
竜輔のお母さん、朋代さんだ。
少し釣り気味な目、耳が隠れる程度のショートヘアー。
活発的な容姿だが、どこか優しさが感じられる。
『竜輔のお母さんの生き写しみたいだね。』
美佳さんにはそう言われ、写真を見せてもらった。
似てると言われればそうかもしれない。
朋代さんは竜輔が小2の時に病気で亡くなったらしい。
それから心を閉ざしてしまった竜輔を美佳さんは一生懸命努力して今の状態にしたという。
きっかけを作っただけとは言っていたが、それでもすごいことだ。
窓の外を見る。あいつはもう家の前で待っていた。
「さて、行きますか」
学校には事情を話してある。あとはクラスメイトだな。変なこと言われなきゃいいが……。
気合だ!! 気合で乗り切る!
そして外に出た。
「おはよ」
付き合うことになった男、清原竜輔に短く挨拶した。
「か、かあちゃ~ん」
「お、おい、抱きつくな。落ち着け!」
いきなり抱きつかれる。
割と抱きつこうとしてくるため、反射的に殴るか蹴るかするのだが、なぜかそれがはばかられた。
そして母ちゃんってなんだ!?
「ううう、かあちゃん、かあちゃん、会いたかった」
確かに似ているのはわかったが、そんな涙を流してまで喜ばんでも。
しかし、このままってのも恥ずかしい。
なによりも同居人に見られるのも具合が悪い。
「さぁ、学校行くぞ。遅刻しちゃうだろ?」
「……うん。(ぐすん)」
途中、手を繋いでくれとせがまれたのでそれに従ってやった。
「よう、竜輔!……って誰よ、その美人さんは? しかも手なんか繋いじゃって」
教室に入ると斎藤が竜輔に挨拶してから、予想通りの質問を投げかける。
竜輔は物言いたげな表情で私を見る。
まるで、新しい学校に転入してきた小学生のようだ。
はぁ~、こいつってこんなに可愛い顔してたんだな。
苦笑いしながら、クラスメイトの質問に私が答える。
「斎藤、俺だよ、氷見院だ」
「氷見院!? ……わ、わりぃ、俺どうやら幻覚見えてるらしい。保健室行って来る」
斎藤は頭を押さえながら教室を出て行った。
まぁ、予想通りのリアクションだわな。
「え、氷見院君?」
「うっそ~、氷見院君って女だったの?」
「○マだろ?」
「いやいや、むしろコスプレ?」
「なんか綺麗な顔してるとは思っていたけど……」
「俺……なんか惚れちまった」
好き勝手なこと言ってくれるとこも想定の範囲内だ。
「あぁ、やっぱりこんなことに……みなさーん、とりあえず席に着いてくださ~い」
HRにはまだ早いというのに、土方先生が入ってきた。
事情を説明しに来てくれたんだろう。
クラスメイトは座席に戻る。
私もつこうとした時、まだ竜輔と手をつないでいることを思い出した。
「もういいだろ? 離せよ」
「……いや」
竜輔は繋いでいた手を離そうとしない。
「ちょ、先生来ちまっただろ? お前も席つけよ!」
「いや!」
竜輔は私の手を両手で更に強く握ってきた。
「学校までって約束だろ?」(←約束はしていないが)
「い~や~」
口調がいつもより幼い。
まるで駄々をこねてる子供だ。
「どうしました、氷見院さん?」
「あ、あの~、清原君が手を離してくれないんです」
先生は不思議そうに竜輔に近づく。
「清原君? どうしました?」
「かあちゃん、この人だあれ?」
は!? おいおい、冗談は止めてたもれぇ~!!
「おい、どうしたんだよ? 竜輔! 先生だろ、土方先生だ」
「????ひじたせんちぇい?」
「おい、どうしたんだよ、清原!?」
「清原君、かわいいのはいいけど、今は先生が……」
「だあれ?だあれ?かあちゃん、ぽんぽんへったぁ~」
はぁ!? ぽんぽんへったぁ~?
「……氷見院さん、とりあえず保健室に!」
「はい!」
先生に促されるまま保健室に竜輔を連れて行く。
「う~ん、たぶん~古傷を押さえていたカセが突発的に外れちゃってぇ~記憶が浮き出しちゃったって感じかしらぁ~」
「記憶ですか」
「暫くすれば治ると思うんだけどぉ~、今日中に治るかどうかと聞かれるとぉ自信ないわねぇ」
分厚い辞書(?)を手にしながら渡辺先生は困った顔をする。
「『健忘症』だと思うんだけどぉ~……頭を強く打ったとかぁ~、精神的なショックを与えたとかって見覚えあるぅ?」
あ~……どちらも身に覚えがあるのですが……
でも、頭を強く打ったとか、実はシャレにならないが、自業自得な部分もあるからいいとしよう。
「今日のこれはまずかったかもしれないな。」
女子生徒の制服とそれにあわせて身だしなみ。
突発的に思いついた事をしでかしたらここまで威力を発揮するとは。
相当追い詰められていたのだろうか。
今、竜輔はベッドに寝ている。(隣では、うなされている斎藤がいたりする。)
疲れて寝たんだろう。
……はっきり言います。メチャクチャ可愛いです。顔だけ!
このまま抱きしめて持って帰りたい衝動に駆られています。
誰か助けてください!
「う~ん、でもぉいつもと違ってどこか可愛いわねぇ。私の子供にしちゃおうかしらぁ?」
「……先生、ここにいられなくなりますよ?」
「や、やあね、冗談よぉん♪ でも、早いとこ旦那にせがんで子供作らなきゃ!」
この先生の言う事は冗談には聞こえない所が怖いな。
それにしても“かあちゃん”か……。
そういえば、私は幼い頃、お袋殿のことを何と呼んでいたのだろう?
そこまで一途だったのだろうか?
「んん~。かあちゃん、ポンポンへったぁ~」
「ぽんぽん?」
「へった~??」
竜輔は突然起き上がり、私にせがんできた。
渡辺先生は大ウケしている。
「あはははは~、ポンポン。いいわぁ~何が食べたいでちゅかぁ~??」
「かあちゃん、このひとだあれ?」
「あぁ、この人はね……」
うんざりだ。いくら可愛いとはいえ、見た目は高校生。
最近はどうだか知らないが、始めて会った頃は自分と同等に渡り合えるほど喧嘩が強かったはずだ。それが今では……
とりあえず、渡辺先生の弁当を少し貰って竜輔に渡してみた。
食べ終わると、おなかいっぱいになったのかまた寝始めた。
「ふぅ~、何か疲れますね」
「そぉ? 子育ての予行練習には丁度いいと思うけどぉ?」
「……なら、あとはよろしくお願いしますね」
私は保健室をあとにした。
そのあと、私がいないことに大泣きした竜輔をなだめる為に渡辺先生が苦労したのは言うまでもない。
「はぁ~? “眠りの森の王子作戦”!?」
教室に帰ってくるなり私は大声で叫んだ。
「そうだ、これしかない! 本来ならば、王子が姫にだが、今回の眠れる~のは男だからな!」
えらい事になってました。
私は作戦実行員に勝手に任命されていて、クラス中が会議をしていたのです。
「あのさ、話が見えないんだけど~……」
「無論、清原竜輔を元に戻す為の会議だ。
た、たしかにあのままでも俺としてはいいのだが……」
『どこかだよ!』
私はクラス委員の……前田にクラスメイツから罵倒を浴びせる。
「わ、わかった。軽いジョークだ。
して、この作戦、要は……俺の口から言うのもなんだから藤堂、言ってやってくれ!」
もう一人のクラス員の女子生徒に話をふった。
「り、了解。落ち着いて聞いてね、氷見院さん。
要は……清原君にキスしてやれ!って事よ」
「……」
「あちゃ~、不味かった? なんなら他の作戦でも考えようか?」
「いや、何が何でも氷見院にやってもらうぞ!」
大体、そんな作戦で元通りになれば苦労はしないが……キスかぁ。
これまたキツイな。竜輔とは付き合っているとは言え、“ふぁーすときす”がこんな形で終わるのはなんとも気が引ける。
「藤堂さん、是非別のいい案を!」
まともそうな藤堂さんに救いの船を求める。
「ええ!? う~ん、この前読んだ小説に、主人公が今の清原君みたいなのになって……
そうだ! 一番好きな人と一緒にいればよかったのよ!
やっぱり氷見院さんしかいないわねぇ」
はぁ~、やっぱり私しかあいつを元に戻せないわけね。
って創作物を参考に現実問題を解決しようとするなよ!
ま、私が原因でなったもんだからやるしかない。
「……早退する。先生には言っておいて!」
もうこうなったら当たって砕けろ!
なにがなんでもあの馬鹿を元通りにしてやる!
固く決意し、保健室に戻った。
迷走してした時期に書いたものでした。色々とカオスです。
また、クラスメイツはあまり登場しません。あしからず。




