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夏休みアタック③

元々の文章に矛盾などの問題があったので、書き直していたら昨日は投稿できませんでした。しかも、時間をかけた割には……

「ふぃ~、今日もいい天気だなぁ~?」


「うむ、実にな。そして今日の俺も燃えている」


「聡の場合、“燃えている”ではなく、“萌えている”だな」


やはり学校の屋上。

この学校って本当にいいとこだ。

普通の学校なら屋上の出入りは禁止されているそうではないか。


「しか~し、この岳倉橋高は他の高等学校とは違う! そう、しいて言えば格だ、格!」


「……読心術は止めてくれないか?」


最近の聡も人が変わり始めている。そう、すべては夏だからだ!(根拠はない。)


「なぁ、聡よ」


「ん? なんだ!? 今日の特訓はナシとか言ったら、俺の特性電気玉をお前の口に放り込むぞ!」


「う……それは勘弁だけど……なんだってそんな喧嘩にこだわるんだ? ファンタジックなもんが使えんなら別に特訓しなくてもいいんじゃないのか?」


そう、聡は俺に特訓してくれと言ったのはいいが、理由をまだ聞かされてはいなかった。

それに、こんな時間があるなら菫さんとデートすりゃいいのにさ。

そうだろ!?


「ふむ、菫は一旦フランスに戻るとかなんとか言って、昨日の深夜に旅立った」


いつの間にか恋人の名前が呼び捨てになっている。

そういや、おとちゃんは戻ってないな。菫さんと戻ればよかったのに。


「隙あり!!!」


バシ!!


聡の手刀が見事に俺の頭に食い込んだ。


「ぐっ、俺としたことが……」


おとちゃんのことばかり考えていたので不覚にも聡に一本とられてしまった。

隙をつけるのならそもそも俺が喧嘩を教える意味がないな。


「にしても、暑くてとけそうだ」


「……だんだんコツを掴んできたんだ。もう少し付き合え!」


屋上の気温は多分32℃。

真夏にしては割と涼しいほうかもしれないが、暑いことには変わりがない。


「聡ぃ~、もうやめようぜ? 熱中症って結構怖いものらしいぞ?」


「ふん、そんなもん、気合で乗り切れ! 気合で!」


相変わらず熱血な聡。これは熱いのを通り越して熱くるしい。


「なぁ、いい加減その喧嘩に目覚めた理由をだな……」


「問答無用! でぇぁぁぁ!!!」


聡は恐ろしいほどの勢いで拳を振り上げながら突進してくる。

これは今日俺が教えた、敵に近づくときのやり方。とにかく、叫んで相手を威嚇しながら突進して、その後拳を入れる戦法。

戦法でもなんでもない。俺の中でのルールみたいなものだ。

勿論、この手は俺に通用しない。

前にこの手の戦術で来た不良の顔面に拳を殴っているからだ。

まぁ素人には扱いやすいからというだけで教えたものだ。


「だから、こうなる!」


聡が突き出した拳を左手で受け止めて、その後、前にかがんで腹に目掛けて拳をめりこませる……はずだった。

しかし、聡はその前に左足を俺の開いた股に目掛けて突き上げた。

―――――――嫌な音がした。ちなみに効果音は“ぷちゅ”だった。

俺はその場でうずくまる。


「あ……うぅ……ぐふっ……」


「ふふふ、ついに俺はやったぞ! これぞ、斎藤流フェイントフィニッシュ!」


まったく……それは反則技だっつの。

バーリトゥード(なんでもあり)である喧嘩に反則もクソもないことは確かだが。

それから俺は痛みとの喧嘩が始まった。デッドオアアライブだ。





<<柳視点>>


時刻は少し前。


「あ、あ、あ……」


屋上の出入口の影でこんなに暑いというのに冷汗(?)をかいている男子生徒がいる。


「な、なんだって僕があんな人たちを」


何やら自問自答している。

怪しげなのでしばらく監視することにする。


「大体、自分のとこに引き入れたいなら自分で行けばいいんだ。これだから、春日さんのお願いは聞きたくなかったんだ」


男子生徒は影から竜輔たちを盗み見している。

声をかけてもいいのだが、なんか面白そうなので保留だ。


「むぅ~、なんだか強そうだし怖いし……」


頭を抱えてその場にうずくまる。


「おい、あんた。」


「ひっ!」


突然声をかけたのが良くなかったようで、男子生徒は前のめりに飛び上がり、壁にぶつかった。


「いたたぁ……」


額を打ったらしく、手で押さえている。

大丈夫、出血は無さそうだ。


「いきなり声かけたのは悪かった。大丈夫か?」


「は、はい、おかげさまですっかりです、あはは……」


なんか腰が低そうだなとも思った。まぁそんなことはどうでもいい。


「で、お前、何してんだ?」


「はぁ~、これには色々事情がありまして……あれ?」


男子生徒は何か思い出したのか、ポケットに手を突っ込んだ。

そして、写真を一枚取り出し、なにやら私とそれを見比べている。

こちらが頭に“?”を浮かべていると、彼は顔から脂汗をかきながら床に座ったまま後ずさりをした。


「せ、鮮血の拳、氷見院柳ぃ~~~~~???」


悲鳴のようにその単語を叫んだ。


「おいおい、その通り名、もっとマシなやつにならないのか?」


“通り名”は去年から事情を知っている連中の間で広まった2つ名である。

今は卒業した空手部の部長を去年の学園祭のイベントにて5秒でKOしたのがきっかけ。

あの時の私は瓦30枚を叩き割るイベントに参加して、手に怪我をしていた。

で、正拳突き(技名:アトミック・フィニッシュ)を放ったら、巻いていた包帯から血が滲んできて、それが空手部の部長の血だと勘違いをされたらしく、それ以来“鮮血の拳”と呼ばれていたりする。


「はぁ~……だからあの時以来、喧嘩の助太刀であちこちから呼ばれたのか」


「あ、あ、あ、あ……あの!」


「ん? 助太刀なら今は請け負ってないんだ。喧嘩は好きだが、あんまり学校内で変な噂が広がっても欲しくないしな」


男子生徒は壁に寄りかかりながら、立ち上がるといきなり頭を下げてきた。


「お、おねがいです。うちの部を救ってください!」


「は!?」





<<竜輔視点>>


「……ょうぶか?」


「や、やりすぎたか?」


「こんなくそ暑いとこであんな暑苦しいことしてたら誰だってこうなるっつの!」


声が聞こえる。

あれ? 俺はどうなったんだっけ?

そうだ、聡に不覚にも股(正確にはもっと複雑なとこ)に蹴りをくらって……うむ、そんな感じだ。

だんだんと意識が戻ってきた。


「あ、姐さん! 今日もご機嫌うるわしう~。デートのお誘いなら是非ともお供させてください!」


「お、おう、元気そうでなによりだ。……デートはまた今度な。」


せっかくの夏休みなのに何か寂しい。

いや、まだ始まったばかりじゃないか!

大丈夫、まだチャンスはある!!


「ところでどちら様?」

姐さんの影で少しおびえた様子の男子がいた。

見たことがあるようなないような……


「あぁ、こいつは……本人から聞いてくれ」


「え、えぇ~~~~、氷見院さんが言ってくださいよぉ」


「こら! これはお前らの問題だろ!?」


むっ、これは……妙に姐さんに慣れなれしい。

俺にライバルもとい、敵が現れたということなのか!?


「竜輔、変なこと想像しているだろ?」


「いえ、油断ならないと思っただけっす。」





おおまかな事情を聞いた。


「……つまり、あんたらの部に俺らが入ってほしいってこと?」


「は、はい……だめ、ですか?」


男子生徒の名前は藤原幸介ふじはら こうすけというらしい。学年は俺達と同じ2年生。


「“ふじわら”ではなく、“ふじはら”です」


妙にそこを強調していたりする。そりゃ名前は大事なものだろうが。

彼の所属している部は彼と部長の2人だけだという。

これでは部が成り立たない。そこで部の消滅を防ごうと部員を増やしたいとのこと。

ようは勧誘ってやつだ。


「一つ聞きたいんだが、今の時期に勧誘ってことは文化祭で何かやるのか?」


「はい、勿論です!」


嫌な予感がしてきた。こういうシチュエーションは何かと問題が起こりえる。

むぅ~一体どんな部活なんだろう?


「竜輔、俺はとりあえず協力してやることにしたんだが……お前も入るよな?」


姐さんがやる気満々ならきっと格闘技か何かなのだろう。

柔道、剣道、空手、合気道、少林寺拳法とかあったっけ?

レスリングとかムエタイって高校なら同好会レベルでやるもんだろ?(←偏見)


「ちなみにウチの学校は柔道、剣道ともにインターハイの出場が決まっている。人数には問題ない。空手部は去年の文化祭をきっかけに廃部だ。理由は氷見院が知っているんじゃないか? ちなみに合気道と少林寺は元からないぞ」


聡が博士の如く解説した。しかもまた読心術を使われたらしい。

つか、空手部の件がすげー気になる。

お前よく知ってるなと振り返ると、分厚い本を持っていた。


「ちなみに聞くが、それは……?」


「うむ、岳倉橋高70年の歴史書だ。持ち出し禁止になってたが、なんとなく持ってきた」


「すぐ返して来い! そりゃマナー違反だ!」


「ちなみに空手部の廃部と同月に“鮮血の拳”の名が広まったらしいぞ」


聡はかまわず続ける。

そういえば前に聞いたことがある。

確か姐さんが誰かと喧嘩したときに野次馬の誰かがそんなこと言ってたような……

てか、歴史書になんでそんなことが書いてあるんだよ!?


「あのぉ~、どうですか?」


藤原が聞いてくる。


「……何部?」


「僕達の部は様々な条件の下に、くじけず、やつれず、元気にやっていこうという部でありまして……」


藤原はすごくいい部なんですということをアピールするために色々と言葉を羅列しているが、何かを誤魔化そうとしているのがみえみえだ。


「あ~~~、そりゃもういいっての! 率直に言えば、“演劇部”だ」


姐さんはまどろっこしいと言わんばかりに説明してくれた。

いや、こちらの質問に的確に答えてくれた。


「へぇ、そうですか……って、演劇部ぅ~~~~!!!!」


「これまた意外なものだな……?」


聡も結構顔を引きつっている。

そりゃそうだ。あの姐さんに限って演劇部に入ろうなどと誰が想像しただろうか?


「あ、あの……どうですか?」


「貴様ぁ~~、姐さんのどんな弱みを握ってやがる!? 言え!吐け!ぶちまけろ! 今なら尻叩き100回で許してやらんでもないぞ?」


こうなっては落ち着きようもない。

俺は藤原の襟元を掴み上げて尋問する。

あの姐さんが「はい、そうですか。入りましょう」なんていう姿が想像できない。

見たくもない。俺は本能(?)のままに拳を振り上げる。

が……


「何やっとんじゃ、わりゃぁ~~~~~!!!」


左頬に俺のとは違う拳が飛んできた。


「ぶはぁ~~~~~!!!」


藤原を掴んでいた手が離れて俺は屋上の出入り口の戸に激突。戸が衝撃で外れて、そのまま中にまで突っ込んだ。

ちなみに巻き添いをくらって藤原も吹っ飛ばされていた。

沈黙。


「最近、仲が良くなってきて、てっきり鉄拳制裁が減ったとばかり思っていたが、そうでもないんだな?」


「やっぱ、少しはやっとかないと腕が鈍るんでな。それにこれは“愛の鞭”ってやつだ」


「……」


なんか満身創痍でいるのは俺だけ。


「お~い、大丈夫か? すまんな、腕が鈍り気味らしい」


「は、はい、大丈夫です」


藤原の所に駆けつける姐さん。

あぁ、なんだって俺のとこには来てくれないんだろう?


「そりゃ、いきなり掴みかかればお前が悪いなんて明白だろ?」


「聡ぃ~、俺はどうすればいいのさ?」


「うむ、弁護・忠告・助言のしようがない。大体、氷見院が素直に入部したからといって必ずしもゆすられているとは限らんしな。あいつならボコボコにしてトラウマでも植え付けることだって容易な話だろ?」


「そ、そうか。ならなんでだ? 姐さんの心読んでくれよ」


聡は少し渋った。


「あのなぁ~あれは腹は減るし、仮にも氷見院は女! 心を覗くなんて着替えとか入浴中を覗く以上なもんだぞ!?」


「確かに人道には反するが……男(つまり俺)ならいいのか?」


「……お前に羞恥心ってデリケートさがあるのか?」


「俺って一体……」


釈然としない気分にとらわれていると、姐さんがこっちにやって来た。


「馬~鹿。困っている奴がいたら助ける、これ基本!」


びしっと人差し指を俺に向ける。

あぁ、そういうことですか。やっぱ姐さんは女神様です。


「で、なんで演劇部なんだ?」


聡はやっぱりうんざりそうに聞いた。


「現在の演劇部は何故か2名。この藤原と部長だけらしい。人数が足りないから廃部になることになったんだが、部長が文化祭でデカイことをすれば部は存続を許されることを約束させたんだと、あの校長に」


「で、やっぱ2人じゃ足りないから部員集めを?」


「はい……そうなんです。ど、どうか、僕らの部を救ってください」


藤原はドケザした。

そこまでしてくれんでも……ねぇ?

ドケザなんかしてもらっても俺、H沢でもO常務でもないから。


「OKOK、わかった、入ってやるよ。他ならぬ姐さんの頼みだ」


「別に頼んでないんだが」


「またまたぁ~照れちゃって♪」


「……俺も入りゃなならんの?」


聡が恐る恐る聞いてくる。


「当たり前だ」「お前も道連れじゃぁ~~~!!!」


「はぁ~、俺はどうも俺はこういう星の元に生まれてきてしまったようだ」


こうして俺達は夏休みを演劇部員として過ごすことになったのだった。


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