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夏休みアタック②

聡の戦いは続く……

翌日。


「まぁ、そういうわけだ」


「パチパチパチ」


「おい、てめぇは喧嘩売ってんのか!?」


「売るも何も、喧嘩のイロハを教えてもらいにきたのだが?」


聡のいうことは正論。全く無駄がない。

昨日の愚痴を聡に聞いてもらっていたわけだが、この展開なわけだ。


「……わかった。習うより慣れろ! 俺と1回ガチンコ勝負な」


「は~~~~~!?」


「とっとと構えろ!」


とりあえずマジで殴っとく。


うっぷん晴らしもあるけど、何事にも一回本気でやってみてからの方がこっちとしても教えやすいのだ。

うん、我ながら頭いい!


「来い!!」 ←俺


「へやっ!!!」 ←???


「ぶはっ!」 ←俺


わけもわからず吹っ飛ばされた。

哀れな俺。恋も満足に実らない俺。俺は純で狂気にも似た、まさに完璧なる絶対防御的な恋がしたかった……


「なにブツブツ言ってんだよ!?」


「う~ん……俺は夢を見ているのか? どことなく姐さんの声が聞こえる」


「それは幻聴ではなく、俺がここにいるからだ」


「は!? 姐さん??」


目を開くと姐さんが仁王立ちしていた。


「おい、何しに来たんだよ、氷見院?」


聡はうんざりそうに言った。


「今日はお前に用があって来たんだよ、さ・い・と・うくん?」


「は? 俺に?」


「ま、まままさか、姐さんってば俺を捨てて聡に乗り換える気では!?」


と刹那、強烈な右ストレートが飛んできたのだった。


「んなわけねえだろ~~~~~!!!」


勿論、成す術もなく吹っ飛ばされる。


「くっ、姐さんのさっきの技は確か“ゴールデン・ライトニングマグナム”。初めて見たの

は俺と知り合ってから2週間目だった」


「お前って、余計なことは細かく覚えてるのな?」


「いやぁ~姐さんとのことなら全部覚えてますよぉ~」


「なら、初めてのデートで食べた飯は何だった?」


「ふふふ……それはですねぇ~」


そんな問答はすぐに打ち切られ、姐さんと聡は俺の見えないところに消えていった。





数分後。


「で、聡は姐さんと二人きりで何の話をしてたんだ?」


「……何でもいいだろ」


「よくねぇ~~~~~~!!!!」


見たところ着衣の乱れはない。顔が真っ赤ということもない。

ならば!


「お、おい、何してんだよ!?」


「無論、聡の体に姐さんの“にほひ”が付いてないか確かめているとこだ」


まぁ想像はつくだろう。

俺が聡の体に鼻を押し付けてあちこち嗅ぎまわっている図だ。


「……お前ら、何やってんだ!?」


「おぉ、我が麗しき姐さん! 聡に変なことされませんでした? まさか、姐さん俺のことが嫌いになったとかしませんよね?」


「……まぁお前が気にすることなんて何もないさ」


そうは言っているものの気になる、この2人の間に一体何が!?

やっぱり俺が羨むことをしていたのではなにのか?

むむむ……謎は深まるばかりだ。


「そんな深刻なことはないぞ」


「い~~や、何かあるはず! むぅ~~~~~」


「はぁ~氷見院がちったぁ成長したってことだろ?」


「おい、斎藤! 余計なことを」


聡は鬱陶しそうに、姐さんはやけに向きになっている。

何何??? 俺は除け者扱いか!?


「菫……ちゃんを俺に任せてくれるらしい。よかったな、これで氷見院は菫ちゃんのことを気にならず、お前と晴れてラブラブだぞ?」


「は!?」


「氷見院はお前のことを思ってシスコン病から脱却することを決意したんだと。厄介なことには変わりないんだがな」


「ということは……?」


姐さんは顔を赤くしながら言った。


「もう菫にくっつかない! 竜輔といるときは竜輔だけを見る! これで問題ないだろ!?」


「あ……あはは、そうですか。これでやっと……ぅぅぅぅぅ」


「お、おい、なんで竜輔が泣くんだよ? 泣きたいのはこっちだっつーの!」


「ぅぅぅぅ、だって、だってぇ~~~」


俺は多分嬉し泣きしているのだろう。

これで俺と姐さんを邪魔する障害がまたひとつなくなったのだから。

しかし、なんだってまた急にこんなうまい事が起きたのだろうか?

菫ちゃんに説教でもされた?……うん、ありえるかも。

あの子、結構しっかりしてるしなぁ。


「だろ、いい子なんだよぉ~~」


聡の鼻の下が伸びていた。

こ、これは獣の顔だ。おのれ、聡! いくら姐さんの妹だからって氷見院家を敵に回したいのか!?


「それ考えすぎ! まぁ菫を泣かせたら神の鉄槌を受けてもらうからな!」


「うむ、任せろ! 菫ちゃんは俺が守る!」


聡は鼻の下を伸ばしながら燃えていた。いや、萌えているのかも。

だって、可愛いもんなぁ~。


「だろだろ? もう非の打ち所がなく最高なんだよなぁ~」


聡、調子乗りすぎ。

しかも、一々読心術使って俺の心を読むな!

姐さんみたいに地獄耳なら仕方ないけど……

そういや、俺の周りにいる人みんな地獄耳だなぁ。いやはや、隠し事なんて出来ませんなぁ~。





「さて、俺は帰るぞ」


姐さんは帰ってしまうようだ。

まぁ部活には入っていないし、文化祭の係にもなっていないから当然だな。

ちなみに俺は夏休みが始まる前に(ゴミ係の)ミーティングがあったからそれでお終い。

聡はヌイグルミ係だからそれも事前に説明会は受けたらしい。

つまり、俺達3人は結構暇な夏休みを過ごしているのだ。唯一日を除けばだが。

だから俺は只今、バイト中。自給はなんと700円だ。

雇い主は聡。喧嘩のイロハ(つまり特訓みたいなもんかな?)を教えのが仕事内容。


「さて、話が終わったところで今日の分をよろしく!」


聡は手をボキボキいわせながら俺に詰め寄る。


「……あっち~~~。聡、ジュース買ってきてぇ」


「話を逸らすな!」


聡くんは最近は本当に暑苦しい。まず目が燃えている。さっきまで“萌え”だったのに……。

更に体が燃えている。

う~む、まだまだ神通力を使いこなせてはいないらしい。

……へ!?


「お、おい、聡! 背中、背中!!」


「ん? おあ!!! ややや焼け死ぬぅ~~~~~~~!!!!」


まるでカチカチ山だった。背中に火がついていたのだ。

まぁこの前もあったことだがどうも気持ちが燃えると本物の火がついてしまうらしい。


「……ついでに言えば完全燃焼の炎だな?」


姐さんが人事のように言った。(まぁ人事といえば人事だけど……)

確かに、青い炎が上がっていた。

あれって理科の時間に習った話だと赤い火より効率よく温度が上がっていくとかなんとか。

って、そんなこと考えてる場合じゃねえし!


「ね、姐さん、水水!」


「ん? ねえぞ、んなもん」


さすが姐さん、こんな時とで冷静沈着。って、助ける気0というだけ?

とにかく、水だ! 消火器が屋上にあるはずがない。


「廊下に置いてあるだろ?」


「おぉ、さすが姐さん!」


「って、何まったりとしてんだ、てめえらぁ!!」


聡はあれだけ元気だから問題はないだろう。


「問題大ありだぁ~~~~~!!!!」


聡の雄叫びが校舎に響き渡った。


「そうだ、姐さん、聡が喧嘩を教えて欲しいって!」


「なぬ!? マジか、斎藤? よぉ~し、俺が必殺技を伝授してやろう!」


姐さんはやる気満々。


「う……勘弁だ、それだけは勘弁だ! おい竜輔、750円にしてやる! だから氷見院を下がらせろ!」


「それ、む~~~り! 姐さんの心に一度火がつくと誰にも止められんよ?」


「薄情者ぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉぉぉ~~~~~~!!!!!!!」


聡は叫ぶや否や、姐さんは右腕を振り上げてこれまた叫ぶ!


「習うより慣れろ! “滅殺!! スプラッシュ・コルボナァァァラァァァ~~~~”!!!」

(説明しよう。この技は姐さんの右腕から放たれるオーラを爆発させて核爆弾1個分に相当する破壊力を生み出す究極の……とにかく必殺技だ!!)


「アルデンテェェェェェェェェェェエエエエェェェ~~~~~~~~!!!」


俺達以外にだれもいない校舎に本日2回目の少年の(意味不明な)絶叫が木霊した。





「……例の件、どうなりました?」

「え、えぇ、順調に進んでいますよ」

「そうですか……ならばそろそろ私も動くとしましょう。彼らはなかなか使えます」

「で、では?」

「はい、我らが部に入っていただきます」


暗室に2人の生徒が腰掛けている。


「……ぶ、部長、そろそろこの口調なんとかなりませんか?」


「ば、馬鹿ね! 今いいとこだったのに!」


「あ、すいません。カットカット!」


「……私らの部、2人だけでしょ?」


「あ……そうでしたね。いやぁ~、この演技だとどうにも部員が大勢いる錯覚を見せられてしまいますよ、まったく」


「その大勢の部員(部下)を作りたいのなら早く彼らを勧誘してきなさいな」


「は~い。(「私も動く」とか言っといて結局僕に押し付けるんだから。)」


「愛してるわよ、私の可愛い部員!」


「……地獄に堕ちろ。(ボソ)」


そんな2人の会話を3人が知るはずもない。


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