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トラック&家族アタック

※この物語に登場する名称等は実在の人物・団体とは一切関係がありません。

朝。


「姐さぁ~~~~ん、Good morning♪ 今日も一段とお美しいことで」


「……はいはい、おはようさん」


姐さんはゲンナリした様子だが、俺は気にしない。

現在、学校へ向かっている。

今歩いている通りは桜が満開で、たまに毛虫が降ってくるから、女子は絶対通らない魔のストリート。

姐さんの悲鳴を上げるところも見てみたいものだ。


「お前さ、よく飽きずに毎朝家の前に立ってるのな」


「やだなぁ、姐さんに会えるという事が一日の俺を構成しているようなもんなんですから、これくらい何ともないですよぉ」


「じゃあ、俺が休んだらどうするんだ?」


「……馬鹿は風邪を」


「馬鹿はてめぇだぁ~~~~!!!!」


本日一発目の愛の鉄槌。

派手に“車道”の方へ殴り飛ばされた俺。

う~ん、いいね。これでこそ姐さんだ。


「マジ死んじまえ!」


数秒後、大型トラックが接近してくる事に気づかない男子高校生が1人……





「いやぁ~、まさかトラックが来ているとは思わなかったねぇ」


「普通死ぬだろ!? てめぇは軟体動物か!?」


「氷見院君、軟体動物でも普通は死ぬと思うわよぉ?」


要はこういう事。車道に殴り飛ばされた俺は接近している大型トラックに気づかないまま、痛みのよいんに浸っていた。

案の定、トラックにはねられた(?)が、足をねんざしただけですんだ。

ちゅーわけで、保健室にまたまたお世話になっているわけだ。

投げ出された足には、包帯を巻いて氷が乗っかかっている。


「トラックが俺の足の上を通過して行ったんだ。しかもそのトラック、何事もなかったかのように通り過ぎていくし……。全く、困った奴だよ」


「……お前は絶対に死なない気がする」


「いやぁ~、姐さんにほめられちゃうと俺、照れちゃうなぁ~」


嬉しくなる俺。


「ほめてねぇっつの!」


姐さんは何処から取り出したのかハリセンを取り出し一発いただきました!

●代高校の▲鳥さんもビックリの特大サイズだ。


「うわぁ~、姐さんにツッコまれた~。嬉し~い♪」


「はぁ~、馬鹿に何しても意味なしですか。じゃ、俺は戻りますね」


退室していく姐さん。


「敏子センセ~、いい加減に姐さんをモノにする技を教えてください~」


「う~ん、そうねぇ……女の子なら物でも贈ればいいんだろうけどぉ……。

氷見院さんは男!って感じだからぁ効果は期待できないわねぇ~」


首をかしげながら考える敏子先生。

そして、何かひらめいたのか、ポンと手を叩いて、


「そうだわぁ! 明日は休みだから、食事にでも誘ってあげればどうかしらぁ? そして、その後は……学校の裏にあるでしょぉ? お城の形をした背の高い建物はあと。そこに連れ出して、ウフフ……」


「……せ、先生って意外と大胆ですね。一つ目はナイスですけど、二つ目はねぇ~……」


それにしたって、精神的にいろいろと難しい少年少女の園の裏手にナゼそんな建物があるのかは不可解だ。


「そお? それで今の旦那をモノにしたんだけどぉ」


い、いや、敏子先生美人だし、変な小細工しなくても男なら落ちるでしょ!?


「あ、清原君ったらぁ~、またそんなこと言って先生を口説くつもりぃ?」


言ってない言ってない!!

誤解だ。“また”ってなんだ“また”って!?

俺は姐さん一筋! 断じてこのピンク風味のお姉さんを口説くなんてしない!


「それはそれでショックよねぇ~?」


「と、とにかく、食事に誘う程度なら問題ないはずですよね。男竜輔、頑張ります!」


敬礼してから握手を求めた。





昼休み。


「というわけで、姐さん! 明日お暇なら是非是非、私めとお食事を……」


「あぁ?? 食事だぁ? ……悪いが明日は不本意ながら予定が入っているんでね、パスだ」


ガァ~~~~~ン!!


撃沈しました。

俺は明日どう生きていけばいいんだ??


「ううう、せ、せめて今の時間ぐらいはご一緒させてはもらえないでしょうか?」


「……わぁったよ。今だけな」


ヤタ~~~~~!!

そして、昼食時間を満喫する2人。


「俺は満喫の“ま”の字もないけどな」


「またまたつれないなぁ~。まぁ、そういうところもス・テ・キ(はあと)」


「馬鹿発生源はここかぁ~?」


最強の5歳児の母もビックリの頭グリグリ攻撃だ。

あぁ、この痛みもまた懐かしさを覚えます。

クラスメイト曰く、俺はこの時幸せそうな顔で失神していたそうな。

そういえば、グリグリって最近やらないよなぁ~? 倫理委員会に粛清されたのかな?





別の日。


「毎日ご苦労なこったねぇ」


「む、何のことだ?」


クラスメイトの斎藤聡さいとう さとしに言われて何のことやらと思った。


「氷見院のことだよ。何でそこまで入れ込むんだ? 女ならまだしも男だろ!?」


聡は勿論、姐さんが女だと言う事は知らない。


「あの綺麗な手、顔、そして、俺に対する愛の鉄槌……どれをとっても完璧だろ?

しかも、俺と姐さんはラブラブなんだぞ!」


「俺が言いたいのはそういうことじゃねぇ!!」


「何なら、俺の心でも読んでみたらどうだ?」


聡は神通力が使えるエスパーである。


「あ、あれ使うと疲れんの! パンでもおごってくれるか?」


「すまぬ、金欠で節約せねばならんのだよ……」


「なら言うな」


クラスで男友達と言ったら聡くらいだ。

それ以外は姐さんか、保健の渡辺先生と話しているから比較的友達は少ない。

べ、別に寂しくなんてないんだからね!

とその時、姐さんが教室に戻ってきた。

先生に呼ばれていたとかなんかで席を外していたのだ。


「おぉ~姐さん、今日も一段とお美しぶっ!」


今回は平手をくらった。


「クラスで馴れ馴れしく“姐さん”だのと呼ぶんじゃねぇ! それに今日でその言葉は2回目だっつーの!」


「あはは……仲の良いことで」


「仲良くない!! っておい斎藤、何処に行く?」


「い、いや、お二人の邪魔になるのはどうかと思ったので保健室にでも……」


聡よ、ナイスだ。俺は気の利く友を持って誇りに思うぞ!


「なぜに保健室?」


「いや、また幻聴が……吐きそう」


そう言って聡は教室を出て行った。


「あいつ、何か持病でもあるのか?」


「ははは、そんなの俺と姐さんに気を遣ってるってだ、いっ!」


「二度とその減らず口をきけなくしてやろうか?」


蹴りが股間に命中した。俺はその場でうずくまる。

まさに、クリーンヒットってやつだ。しばらく起き上がれそうにない。


「そこで無様にもがいてろ。反省したら痛いの飛んで行くんじゃねぇか?」


ね、姐さん、意外とムゴイこともするんですね。

でも、そんなところも素敵です、はい。


「あぁ、斎藤君? 来てるけどぉ、今それどころじゃないみた~い」


俺は保健室で寝ているであろう、聡に会いに来た。


「う~ん、母さん、駄目だって。そんなことしたら父さんがなんて言うか。

いや、マジでマズイって!! うっ……」


「……寝言ですよね?」


「えぇ、ベッドには斎藤君しかいないはずだけどぉ~?」


やたらデカイ寝言で、聡は苦しんでいる。いやむしろ、楽しんでいるのか?

せっかく、俺と姐さんのラブラブ伝を熱く語ってやろうと思ったのに……。


「伝言なら伝えてあげるけどぉ~?」


「いえ、いいです」


渡辺先生には聞いてもらったことだし。無理やり起こすのも邪魔になるだろう。


「竜輔~~~~、助けてぇぇぇ~~~~!!!」


カーテンの向こう側で聡が叫んでいる。

敢えて無視。生きろ、聡!


「そうだ。先生、例の物、手に入りました?」


「えぇ、手に入ったわよぉ~。でもぉ、これって何に使うのぉ?」


「こればっかりは企業秘密ですよ!」


先生から“例の物”を受け取ると、保健室をあとにした。

ふふふ、作戦どおり。





その日の夜。


「ねぇ竜輔、カノジョさんとキスした?」


「おう、したぞ」


「ぶっ!!」


「何だよ、自分から聞いといてさ」


「い、いえ、何でもないわ。そう、そうなんだ?」


「嘘だ」


「どっちよ!?」


今俺はこいつの親父さんが経営している老舗のラーメン屋『木城式』に来ている。

なんでって?

たまには来ないと“こいつ”がうるさいからな。本当は姐さんとディナーへ行きたかったんだけど……。

“こいつ”もとい、木城美佳きじょう みかは俺とは小学校からの幼馴染み。

バドミントン部で、勉強もそこそこ出来る。そのせいで美佳とは別々の高校になってしまった。

そして休みの日はこうして店を手伝っている親孝行者だ。


「ま、その人とラブラブなのは変わりないがね」


「らぶ……らぶ。そっか、そうよね」


かなり動揺している。

おや~? もしや。


「美佳……そうか。すまない、今まで気づいてやれなくて」


「な、何? ど、どしたの?」


「俺はてっきりお前のことただの幼馴染みだと思っていた」


「え!? あ、あの……」


「美佳……」


とその時、

カランカラン


「いいい、いらっしゃいませ~。おお、お1人様ですか!?」


美佳は動揺しながらも客に注文を取りに行った。

お客さんもなんてタイミングで入ってきたんだろう。

なぁ~んか惜しい事したような。ま、いっか。


「美佳、お勘定」


「はぁ~い、650円頂きます」


「ほい」


「はぁ~い、ちょうどですねぇ~」


「今日の返事、そのうち頂きにあがりますねぇ、美佳ちゃ~ん」


「え!? 返事って……あ、ちょっと!」


「じゃ~ねぇ~♪」


俺は店をあとにした。

いやぁ~、あいつを茶化すのは脳の運動になっていいねぇ。

本人は満更でもなさそうだし。

姐さんを落とせなかった時(縁起でもないが)の予備軍に入れといてもいいかなぁ?

いやいや、ネガティブ思考は良くない。

落とせないなんてことはないんだ、絶対!

そんなことを悶々と考えつつ我が家を目指した。





我が家に着いた。

誰もいないはずの家は真っ暗。


「たっだいまぁ~!」


なんとなく言ってみた。

すると家の奥から、


「おっかえり~♪」


はい!?

突如として暗闇から大柄の影が踊り出てきた。


「う、うひゃ~~~~~!!!」


俺はその影にヘッドロックをかけられ身動きが取れない。


「死ぬ、死ぬ死ぬ! ギブギブ!」


「ふふふ、息子よ、もっと強くなれ!」


腕が離れてそれは図太い声を発した。

顔がやけに赤く、ビール臭い。何処にでもいるであろう中年男、これが俺の親父だ。


「親父! また連絡なしに帰ってきやがって!!」


「おぉすまんすまん。急に日本で会議をやることになって今帰ってきたところだ」


親父は世界を飛び回る仕事をしている。

そんなに大きな会社ではないはずだが……


「そうかい、飯は?」


「適当に食った。お前はどうせ美佳ちゃんのとこにでも行ってたんだろ?」


息子の行動パターンはお見通しってわけですか。

親父はにんまりと笑って俺の髪の毛をクシャクシャにした。


「まぁ誰と付き合おうと父さんは暖かく見守っているぞ、息子よ!」


はいはい、そうですか……って、


「ちょっと待て! 俺と美佳はそんな関係じゃねぇ、俺には別にだな」


「うんうん、父さんにはわかるぞ。そんなに照れんなって! 俺もお前ぐらいの時はな……」


親父は高校時代の武勇伝(?)を語り始めた。

付き合ってられない。

俺には帰宅後の儀式というか習慣というものがある。

それを真っ先にやりに居間に向かう。

仏壇を開いて手を合わせる、これが俺の習慣。


「かあちゃん、今日も無事に帰ってきたよ。でさ、今日姐さんったらね……」


他人から見れば俺も親父も変わらない。とにかくラブラブ伝(?)を語りまくる。

言い忘れてたけど、母親は俺が小学生の時に病気で死んだ。

それから間もなく、親父は今のような海外へ行く仕事に切り替わり家を留守にすることが多くなった。

その時に世話になったのが、木城家の皆様。

特に美佳には心の支えになってもらった。だから、その恩返し(?)に時々店に顔を出しているというわけだ。

あれ? なんか話ずれちゃった? ま、いっか。

さて、宿題ちゃっちゃと終わらして早く寝よう。明日もまた姐さんと登校したいしね。


「かあちゃん、おやすみ~」


仏壇を閉めて就寝の準備にとりかかった。


登場人物が一気に増えましたが、親父はあまり登場しません。

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