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父アタック

※この物語に登場する名称等は実在の人物・団体とは一切関係ありません。


※途中、姐さん視点になります。

翌週月曜日。


「姐さん、Good morning! 今日の姐さんは究極・び」


「竜輔、助けろ!」


突如訪れた転機。なんと姐さんから俺に抱きついてきた!

あぁ、俺もついにラブラブ街道まっしぐらってかぁ?

とか言ってるうちに、


「ね、姐さん、胸が胸があぁ……」


「はっ、つい意識があっちの方に逝ってしまった。しかし、今日ほどお前に会いたいと思ったことはない。実は相談があってだな……ってお前まず鼻血拭け!」


「う~ん、姐さんのダイナマイトボディに今日もメロメロぉ~。(ぐったり)」


「……相手を間違えたかもな」




それから暫くして。


「最重要任務だ。本当は不本意なんだが、こうも言ってられん。単刀直入に言うぞ! 親父に会ってくれ! というか会え!(命令形)」


「……」

「……」

「……」


は!? 今なんと仰いましたか? もう一度お願いします。


「……」

「……」


い、いや、そこより前ですから。


「こうも言ってられん。単刀直入に言うぞ!」


えっと、その次っすその次!


「親父に会ってくれ! というか」


一応確認しときますが、“親父”ってばあれですよね? つまり姐さんのお父様ですよね?


「ま、まぁ、そんなとこだ」


「つまりですよ、俺が姐さんのお父様に会って、“お嬢さんをください!”的な事を言えと?

やだなぁ、姐さん。そうならそうと早く言ってくれたら良かったのに~。俺の方はいつでもOKだったんブホッ」


「だぁ~れがお前に貰ってくれなんて言ったんだよ!」


本日の一発目は顎に○ュウや△ンもビックリな激烈アッパー。

日々進化している姐さんの愛の鉄槌にも惚れたぜ!


「ふむふむ、なるほど! つまり政略結婚って奴ですな? そいで、それが嫌だから、断る口実に“カレシがいる”という事を使う。そして、その為にはそのカレを連れてくる必要がある……って感じですかねぇ?」


殴られた顎を摩りながら確認してみる。


「知ってたんなら聞き返す必要もなかったと思うが……って、てめぇ、まだ話してもない事をなんで知ってんだよ!?」


「いやなに、昨夜、姐さんの家に“渡辺先生から購入した聴診器”を当ててたら、そんな事を言っておったのを聞きましてなぁ」


ほわほわと俺の武勇伝(?)を語りながら、懐から聴診器を取り出してみせる。


「さあて、“地獄への片道切符”と“モケモケ室の入場券”、どちらがお好みですかぁ~~~?」


「え、えっと、“姐さんの寝室のフリーパスをば」


「死にさらせぇ~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


空高く舞い上がる俺。

あぁ、今日の空も姐さんのように綺麗だ。

ちなみに今放たれたのは、姐さんにしてはレトロな技、『メガ○子タイフーン』!

メガ○子的な力を一気に解放して、とにかく空中に殴り飛ばすというもの。気力150で熱血(魂)、閃き、必中、直撃等を使わずともダメージ10万越えは期待できる大技である。大介パパ(勝手に命名)に使ったのもこの技だ。


かくして、星になった高校生、清原竜輔。彼の武勇伝はその後多くの人々に語り継がれたと言う。


余談だが、

「おぉ~、今日もよく飛んでるなぁ。真由美も見てみなよ。ほら、まだ宙に浮いてる」

「……それよりお兄ちゃん、目線を下に向けたほうが、というより逃げたほうが良くない?」

「ん? はっ!? い、行くぞ、真由美!」

「うん!」

通りすがりの高校生兄妹は自分達の身の危険を感じてか一目散に逃げ出した。

視線の先には鬼と化した柳が聴診器のような物を片手で握り潰していたとさ。





<<柳視点>>

そして当日。


「いいか、俺はここから普通の女になるからな。笑うんじゃねえぞ?」


「……はい」


「一応っておくが、“お嬢さんをください”って言うんじゃねえぞ?」


「……はい」


「お、親父に喧嘩売るなよ?」


「……はい」


私、氷見院柳は車に乗っている。行き先は我が家である。

隣に座っているのは、いつも私のことを“姐さん”だのと呼ぶ馬鹿。

この馬鹿の家に迎えに行って、我が家へと向かっているというわけだ。

しかし、馬鹿はいつにもまして大人しい。

いつもこうなら、もっと友好的に扱えるのに……


「あ、そうだ、言い忘れてた。俺の事、姐さんって呼ぶなよ? それだけは絶対やめれ!」


「……はい」


「……どうしたお前? 今日はいつもより大人しい、というか別人だなぁ? 明日は雪でも降るのかいな?」


「……はい」


「…………」


「…………」


何なんだ、この沈黙。そして、どうしたんだ馬鹿?

いつものテンションじゃないとこっちが緊張する。

ん? あぁ、そうことか! こいつってば緊張してるんだな。

へぇ、こんな馬鹿でも緊張するんだぁ?


「ま、まぁ、気軽に構えてりゃいいじゃないか? 別にこれから殺されるわけでもないしな、そうだろ? 何とか言ってくれぇ~~!!」


「ね、姐さん……」


「おぉ、何だ? なんでも言ってくれ! 俺ができることなら何でもしてやるぞ! 今日だけな」


「おしっこ……」


目に涙を浮かべて懇願するようにこちらを見る馬鹿。うわっ、なんか胸がキュンってなったぞ。メチャメチャかわい……


って、


「……はい!? マジ!? そりゃマズイ! 川端さん、今すぐトイレのある場所まで宜しく!」


「は、はい!」


運転手の川端さんは焦りながら一気にスピードを上げる。

そして、


「あぁ、すっきりしたぁ~♪ 間一髪だったぁ~」


「…………」


「ご、ごめんなさい、姐さん。家のトイレ壊れてたもんで、朝いけなかったんですよぉ」


「これからは気を付けなさいね」


「……ね、姐さん、明日は雪でも降るんでしょうか?」


「さっき言った事聞いてなかったの?」


「あぁ、そうでした。って、なんか違和感が。いつもは姐さんの愛の鉄槌が来るはずなのに、今日に限ってない! これじゃあ生殺しだぁ~」


泣き叫ぶ馬鹿。調子に乗って口説いてくるかと思ったが、そういう様子もない。これから学校ではこうしてればいいのかな?


「さぁ、はやく車に乗りなさい。お父様が待っているんだから」


「あいぃ。今行きまーす」


こちらに走って来る馬鹿の姿はいつもと違って、可愛い弟のような感じがした。

着ているものはこちらが貸したタキシードみたいな黒いスーツ。

かっこ良くなるかなと思ったら、どちらかと言えば幼い感じになった。

ちなみに私は薄い青色のワンピース。微妙にゴスロリ風なのが欠点だ。

髪はボサボサのまま放置している。

車が発信する。

竜輔の家から私の家まで車で20分。歩きだと1時間以上かかる道のりだ。

よくもまぁ、馬鹿は毎朝私が家を出る際に外で待ってるなぁと申し分けなく感じたりする。


「姐さん、俺、今日は何て呼べばいいのでしょうか?」


「ん? 柳さんとかかな?」


「や、柳……姐さん」


「……今からレッスンね?」


「……はい」


先が思いやられる。





コンコン

私はドアをノックする。

この部屋はマイ親父の書斎。


「父様、連れてきました」


「ん、通せ」


中からドスの効いた声で返事があった。


ドアを開けて、馬鹿と一緒に入る。


「ほぉ、彼が……お前の“カレ”か?」


顎に蓄えた髭をなぞりながら、親父は馬鹿を見る。

氷見院頑九郎がんくろう。これが親父の名だ。


「はい、え~と……」


しまった! いつも馬鹿とか言ってるから名前は出てきても苗字が出てこない。

誤算だ。ええい、仕方ない。


「さ、さぁ、自己紹介を……」


冷汗混じりに馬鹿を促す。

馬鹿も緊張しているのだろう。完全にカチコチ状態。

暫くして、ようやくこちらの言っている事に気づいたのか、


「は、ハジメマシテ、『清原竜之輔』デス」


馬鹿。かなり馬鹿だ。というより究極馬鹿だ。一体どうやったら世界に自分の名前を間違える奴がいるだろうか?(ここにいたりするが)背中やら額に変な汗をかいてしまったではないか。


「や、やあだぁ~、竜輔さんたら、竜之輔じゃなくて、竜輔でしょ?」


「……ア、ソウデシタ」


まさにロボットだな。

まぁ、逆に緊張している方がマジで見られるからいいけど……っていいのか!?


「ふむ、そう緊張せずとも。まぁ、座りなさい」


親父がソファーに座るように促す。

とりあえず座るが、相変わらず馬鹿は固まったままだ。


「それで、柳とはいつ頃からの付き合いなのだね?」


「えっと、去年の秋頃だったわよねぇ、竜輔さん?」


親父は私を見て、


「柳よ、少し彼と喋らせてはくれないか?」


「……はい」


この状況で、私のフォローなしにどこまで“普通”にできるかが問題だ。

ましてや、今はこの馬鹿だ。余計なこと言わなきゃいいが……。


「そうだな。柳のどのような所に惹かれたのかね?」


「……て、手デス。あと、顔も……」


「ほお、外見か……」


馬鹿。もっと普通に言えないのか!?

ほら、優しくして貰った~とか……そんなこと微塵にも思わんだろうな。

そうして、いろいろ質問を受けてなんとか答えていく馬鹿。


「そうかそうか。そんな事があったのか、ハハハ」


親父はなんかこの馬鹿を気に入りはじめているような気がする。


「そ、そうですね、あの時は本当に楽しかったですぅ」


徐々に緊張の糸が解けていく馬鹿も馬鹿だが……。


「さて、話がずれてしまったが……柳よ、本当に彼を愛しているのかね?」


「はぁ、はぁい!?」


突然聞かれた為か、声が裏返ってしまった。


「私はお前達が本当に愛し合っていると言うのなら、うるさい事は言わんつもりだ。

だが、そのだな……証を見せて欲しいのだよ」


えぇと、それはもしや……


「せ、接吻……ですか?」


「うむ、察しがいいな。そのとおりだ」


はぁ!? マジですか!? 親父殿、あなたは正気ですか!?

この馬鹿と……キッスをせよを言うのですか!?

あの~、馬鹿が移るとか、学校で冷やかされるってレベルじゃないですよ!

しかも、ちゃんとしたやつはしたことないですよ?


「何を慌てておる? まさか、まだしとらんのか?」


「あ、あの……えっと……」


「何を仰いますか、お父様! 男・清原竜輔、ねえ……柳さんと愛し合っている男として何の躊躇いもございません! さぁ」


とかなんとか言っちゃって、私の肩を掴んで引き寄せてくる馬鹿。

って、何冷静に解説しちゃってんだYO! このままでは私のふぁ~すとが!

馬鹿の顔がどんどん近づいてくる。

まずい、このまま張り倒すか? いや、この場でそれをするのは自殺行為だ。

何のために恥を忍んでこいつを連れてきたのかわからん。

てか、馬鹿はすでに目まで閉じちゃってるし! 

ええい、もうどうにでもなれぇ!

私は覚悟を決めて、馬鹿が来る前に自分から突っ込んでいった。

しかし、次の瞬間、


ゴツン!


ガタっ!


「うわっ!」


「うお!」


「……」


何が起きたかわからなかった。

とにかく、私の唇に馬鹿の唇が付いていなかったのは確かだ。

目を開く。

馬鹿の姿はない。


「あれ?」


私はソファーに座っている。

馬鹿の姿はない。姿はない、姿は……あった!って、え!?

馬鹿は向こう側の親父が座っていたはずの席に突っ込んでいた。

そして、親父が座っていたソファーは向こう側に倒れていた。

私は立ち上がる。

そして見たものは!


「おぉ~、ジーザス」


それが私の感想。

え~と、皆さんは何が起こったかわかりましたでしょうか?

正解は……“馬鹿が親父を押し倒していた”でした。



ってえ~~~~~~~~!!!!!!!


姐さん父は次回までの登場です。

なお、モケモケ室とは狭い空間に毛深いおじ様たちがひしめき合っている光景をイメージしていただければw

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