ヤ●ザアタック後編
主人公はチート野郎ではありません。
少しばかり運と腕っ節を兼ね備えているだけです。
「おらぁ!!」
扉を蹴破りどんどん進軍(?)していく俺とおとちゃんと菫ちゃん。
途中で何人もの黒服ズに出くわしたが、
「残念だったな。今日の俺は誰にも止められないぜ!」
と言う感じでバンバンなぎ払ってきた。
と格好よく言っているが、当然ながらギリギリだった。
菫さんのスタンガンにより怯んだところを俺がとどめという具合だ。
チート野郎に俺もなりたい!
……現実なんてそんなもんだ。
「さあて、そろそろ美佳がいるはずの部屋に着くはずなんだけど……」
「ここかしら?」
おとちゃんはいかにも社長室と書かれていそうな扉を見つける。
ふちやノブが金色で黒塗り。いかにも他の扉とは違う雰囲気をかもしだしている。
おっし、ラスボス戦いくか!!
「どぉりやぁ~~!!」
扉を蹴破ると見事に向こう側に倒れてくれた。
中にいるのは2人。あのヤクザ屋若頭(勝手に命名)と美佳。
「なんだ、てめぇは?」
「りゅ、竜輔!?」
2人はなんかいいムードを邪魔されたような顔をしていたように見えたのは俺の幻覚ということで無視。
「おうおう、そこのヤクザ屋若頭(勝手に命名)! 美佳を返してもらうぜ?」
「な、なんだよおめぇは?」
「俺か? ふふふ、そんなに聞きたいか?」
「いや……」
ひゅ~~~~~~
この部屋の気温が一気に100℃は下がったように感じた。
「ま、まぁいいさ。さっさと返してもらうぜ!?」
「ふん、誰が……おい、お前等」
若頭が指をパチンと鳴らすと、何処からとも無く黒服ズがでてきた。
総勢20人はいるだろうか?
もちろん、全員が懐からチャカを取り出したではないか。
ピーンチ!
しかも、全員が『ワルサー』だ。
感激というか最悪というか、もうわけわからん!
「さあて、死ぬ前に言い残しておきたい事は?」
ありがちな言葉を吐きながら、若頭が勝ち誇った顔をする。
え!? 俺達に選択権ないの?
「あはは、え~と……」
「私は竜くんとまだすることしてないから死ねないのよ~~~!!」
おとちゃんは手に持っていた鉢植えを投げつけた。
しかし、20人の一斉射撃で見事に空中で粉々になってしまった。
いや待て、20人で一斉とかどんだけ弾の無駄遣いなんだよ!?
「ふふふ、こいつらは俺の選び抜いたエリート達だ。海軍、空軍、陸軍出身のやつ等ばかりだ。下にいた奴らと一緒にすんなよ!」
今度こそ絶体絶命。
虎の子の菫さん専用10万ボルトスタンガンは0距離武器だから銃には無力。
ここまでか……
しかしその時、後ろからジャラジャラと鎖を引きづるような音が聞こえてきた。
「何?」
「何なんだ?」
ジャラ、ジャラ
ゴクッ。
こんな緊迫した雰囲気は中東の某国でテロリストに拉致されそうになった時以来だぜ。
……ウソだ。
俺はさっきまであった扉の跡(今は横穴といえばいいのだろうか)を凝視した。
後ろでは20丁の銃がこちらに向いているのに。
そして、それは現れた。
「おいおい、結構なパーティーやってんじゃねえか? 俺も混ぜろよ?」
「はい!?」
よく見ると……姐さん!? なぜにこんなとこに?
手首足首に鎖がついた手錠のようなもの(千切れてはいるが)がまきついていて、服もなぜかボロボロ。顔や腕などの露出したとこにはすすや擦り傷だらけ。
一体何が?
「誰だ、てめぇ?」
「答える必要なし!」
刹那、姐さんはあっという間に若頭のところに移動して、殴り飛ばした。
「うげっ!!」
若頭KO。
驚いて黒服ズ達が振り替えるや否や、銃をものともせず突進。
1人から銃を奪い取ると、立て続けに発砲。
見事六人ほどから銃を弾いた。
これを機に大乱戦。俺達も参戦して20人+αは壊滅した。
「ふぅ~、片付いたな。じゃ、俺行くから!」
「え!? 姐さんってば俺が恋しくなって追いかけてきたんじゃないんすか?」
「うっさい、俺は今それどころじゃねえんだよ!」
そう言って、姐さんは疾風のごとくその場を去っていった。
「……あぁそうだ、美佳!」
「竜輔……」
「よかった、無事だったんだな?」
半ば放心状態の美佳を抱き寄せて声を掛けた。
「竜輔ぇ怖かったよぉ。ふぇ~~ん」
「よしよし、怖かったか。ごめんな」
美佳が俺に泣きついてきたわけだが、すぐに後ろから強引に美佳から剥ぎ取られる俺。
案の定、犯人はおとちゃんだったりする。
「ちょっと、竜くんったらなに鼻の下伸ばしてんのよ!? それにくっ付きすぎ!」
「ちょ……今いい雰囲気だったのにってぐるじい……」
どうやらスリーパーホールドをきめられているらしい。
う~ん、意識が遠くなってきた……。
ここは病院だ。例のごとく俺は病室のベッドで目が覚めた。
そして、今までと違った事が起こっている。
左側におとちゃんがいる。まぁ考えられたことだ。
しかし、右側には美佳がいる。しかも、俺の手を握ってくれている。
美佳は幼馴染みであり、恋人ってわけじゃないし、そもそも俺の本命は姐さんだ。
なりゆきで、助けることになってしまったわけこの状況は何?
確かに仲は良すぎる(自称)くらいかもしれないが……
「あ、竜輔起きた?」
「お、おう」
「大丈夫? 痛いとこない? 喉渇いてない? お腹すいてない? リンゴ剥いたけど食べる?」
次々と聞いてくる。
「あ、あぁなんとも無い」
「そう、よかった」
今まで見たこともない笑顔で答える美佳。
ドキっとしたのはきっと疲れているせいだろう。
あれ? 俺ってばどうして病院にいるんだっけ?
「清原さんは大丈夫みたいですよ」
「そう、それはよかった。菫ちゃんもなんともないみたいだしね」
<<聡視点>>
病室の廊下。
俺は竜輔のせいでデートをふいにした。
そもそも路地裏でからまれている男女を助けようとしたのが原因だ。
相手の1人が銃を持っていた。本当にヤバかった。
警察を呼ぼうとした時、菫ちゃんはもうすでに黒くてぶっとい物を持って突っ込んでいったのだ。
あの時はまじでびびったね。意外にも菫ちゃんは勇敢な女の子なのかもしれない。
「ふふふ、心配おかけしました」
「それはいいんだけどさ……はぁ~」
「どうかしましたか?」
「いやぁ~せっかくのデートがこんなことになって残念だなと思ってさ」
もう最悪。初デートが『乱闘』で終わるとは……
「じゃあ、これから行きましょう!」
「え!? だってもう夜になってきたし……」
「時間なんて関係ないですよ! 今日が休日には違いありませんし」
菫ちゃんは俺の手を引いて病院を出た。
何処か嬉しそうに見えたのは持病の幻覚だろうか?
<<竜輔視点>>
「あ、あのさぁ~……」
「美佳ちゃん、いくら幼馴染みといえど竜くんにくっ付かないでくれる?」
「明音ちゃんこそ、姉なら弟に手をだすのは法律違反じゃないの?」
緊迫した雰囲気がこの病室に漂っている。
そもそも俺は患者だ。
おとちゃんのスリーパーホールドで失神しただけだが、一応病人にカウントされる……はずだ。
しかし、ここで騒ぐなぁ!と叫んだところで両人に聞こえるはずもない。
「そもそも、美佳ちゃんがあそこでカレシとイチャついてたのが悪いんでしょ?」
「あれは不可抗力よ! まさかあんな男だなんて思ってなかったもの」
いやいや、美佳さんや。あれは見た感じ危ない奴らだったぞ!
だから俺は助けに行こうとしたわけで……
「とにかく、今後一切“私の”竜くんに近づかないで! 半径50m以内に入りしだい、抹殺するわよ?」
「お生憎様。竜輔は週に最低一回は来てくれるわ。私たちはそういう仲なの! ねえ、竜輔?」
あの~、美佳さんって性格かわりましたね?
なぜですか? やっぱ、あそこで助けに行ったせいで俺に惚れちまったってか?
いやぁ~、モテる男はつらいよねぇ~。
「なに鼻の下伸ばしてんのよ?」
「うひ! い、いやぁ~……美佳の言うことは事実だよ、おとちゃん」
美佳は勝ち誇った顔をしておとちゃんの方を見る。
「どう? うそじゃないでしょ? それにこの前なんか私の部屋で仲良くしてたもんね?」
はい!?
いやいやいや、美佳さんや! そんな誤解を招くようなことは言わんでくださいよ。
たしかに木城家の皆様にいつもお世話になっているし、美佳の部屋にも入りはした。
でもそれはいつものやつだ。
ビデオゲームが趣味である美佳はいろんなジャンルのゲームを取り揃えている。
対戦型だろうが、RPGやアクション系のソロプレイ物だって2人でやっていたりする。
たま~にからかいたくなって、気のあるような振る舞いをしたことがあったが、必ずオチをつけて、幼馴染の境界を越えないようにやっていた。
嘘じゃないが、勘違いされたのか、やはり男女の友情なんぞ存在しないのか……
めちゃめちゃ動揺してんな、俺。
そういえば、昔の2人はこんなに仲は悪くはなかったはずだ。
恋愛事情で女って黒い意味で変わるんだな。
だが、悪い気はしない。もてる男はつらいなぁ~。
「……だから竜輔は“私のもの”なの。ねえ、竜輔?」
色っぽ過ぎる目で美佳が俺を覗いてくる。
「ふっ、残念だったわね! 竜くんにはね、ちゃんとしたカノジョがいるのよ。少なくともあなたには振り向かないと思うわよ?」
馬鹿か、おとちゃん。つまりそれは負けを認めたのと同じだ。
間違ってはいないんだけどさ。
「ふん、いつかは奪って見せるわよ! ちょっと私より綺麗ってだけじゃない!」
それは致命傷かと思うぞ? それに俺が姐さんに惚れたのはそんなちんけな理由にあらず! 美佳もまだまだお子ちゃまよのぉ~。
しかし……この調子が長引くと自宅にいづらい、美佳の家(ラーメン屋)にも気軽に行けなくなる。
とりあえず俺の108のスキルの一つ、<<隠密>>を発動して病室を抜け出し、2人が言い合いが終わるまで売店で時間を潰すことにした。
その病院からは1日様子をみるということで1泊したが、病室に戻ると2人ともベッドにもたれかかって寝息をたてていた。
しょうがないやつらだ。
お姉さんとのフラグは絶対に立ちません。




