ヤ●ザアタック前編
前後編構成ですが、今回長めで次回短めとバランスが悪いです。
まぁそんなわけで(何が?)無事休みの日をむかえた。
「今日は竜くんとでえと♪」
俺の部屋で馬鹿みたい(実際そうかもしれない)にはしゃいでいる美女。
フランスの大学生の彼女は悲しくも我が敬愛するお姉さま、清原明音、通称“おとちゃん”である。
「あにょねぇ~、デートはお昼かりゃ! 朝はいろいろせにゃにゃらんことが沢山あるのにゃ! でてくにゃ~~~~!!!」
なるべく柔らかくいうつもりが、間違った方向に行ってしまった。
何をやっているんだ、俺……
そして失敗した後に起こりうることがそのまま現実になった。
「か、かわいい~~~、お姉さんのぺっとにしたげるぞぉ!」
そう言って、俺の顎を撫でてきたのだ。
「う、うひゃひゃ、くすぐったいって」
「うふふ、でえと♪ 早くお昼にならないかなぁ~?」
なりませんなりません。
今は9:00です。きっかりです。
あと3時間はありますよ?
それにあと3時間で出された宿題をやってしまわねば俺に明日は無いのだ!
いやまてよ。
「そうだ、おとちゃん! 勉強って得意だったよね?」
「へ? まぁ出来るといえば出来るけど?」
「じゃあ、ここ教えて!」
ここは十分利用してやる。
おとちゃんは中学生の頃は上から数えたほうが速いってくらい成績がよかったはずだ。
フランスとやることさえ同じならば高校の勉強だってできるはずだ。
「ん~? どれどれ……」
今回は俺の目算が当たり、宿題は3時間もかからずに終わってしまった。
普通にやったら一日潰れてしまっていただろう。
やっぱ、おとちゃんはすごい。
「尊敬しちゃいます、お姉さま!」
「え~? じゃあ、今すぐデート行こ!」
「却下」
「え~~~~~」
調子にのせることなどおとちゃんの前では禁断の行為だ。
でも、マジで感謝してるよ。
残りの時間は……ゲームでもしとくか。
そしてその時がやってきた。
「ここはどう?」
「別にどこでもいいよ」
今は駅前の繁華街で昼飯を食うとこをさがしている。
「んじゃ、ここ♪」
「ん? どれどれ?」
おとちゃんが提案してきたとこは外装は白くて、派手。
看板に休憩¥○○○○、宿泊¥○○○○と書かれたものを構えている店…………ってここ店じゃない! その気のホテルだ!
「だ、だめっ! 絶対だめ! 死んでもダメ! ダメ以外にありえん!」
「え~~。だってどこでもいいって言ったじゃない?」
「屁理屈禁止!」
「ぶっ~」
頬を膨らませたが、上目遣いに睨むのが出来ないおとちゃん。
そりゃおとちゃんの方が背が高いからしょうがない。
でも見ていておかしかったりする。
結局、ファミレスに入ることにした。
「私、タラコスパゲティ!」
「んじゃ、梅茶漬けにしとこ」
「……竜くん、それってボケてるの?」
「ぼ、ボケてない! ここの梅茶漬けは絶品なの! おとちゃんも頼んだら?」
「竜くんの分けて?」
「……」
まぁいいさ。
注文し終えて数分後、タラコスパと梅茶漬け(と言っても雑炊に近いんだけど)がやってきた。
「いただきまぁ~す♪」
「(ジュルジュル)」
「竜くん、お行儀悪い」
「おとちゃん、茶漬けは音を立てて食べるもんなんの!」
そりゃ、マナーに関してうるさそうな国に6年ちょっといればカルチャーショックを受けるのはわかりますがね。
でもって、やっぱりそのおとちゃんは行儀よく、フォークにクルクルと麺を巻いて音も立てずに口に持っていった。
(でも、スパってイタリアンだよな?)
俺はなぜか付いていたお椀にちょっと茶漬けを入れておとちゃんに渡してやった。
「え?」
「分けろって言ったじゃん」
「『分けろ!』とは言ってないけど?」
「……」
もういいです。あなたといると妙に疲れることがよ~~~~くわかりました。
「でも嬉しかったり♪」
そう言って、おとちゃんはこれまた音を立てずに飲み込んだ。
うわぁ~、なんかいい飲みっぷりなのに違和感があるな……
「ふぅ~、竜くんの味が染み込んでておいしかったよ(はあと)」
「……」
俺はただただ溜息をつくしかなかった。
そのあとは、この辺りのガイドブックを眺めているおとちゃんを待ちながら外の景色を眺めていた。
「あ~あ、俺何してんだろ?」
ブラコンの姉とデート。
まぁそれはいいとして、俺には姐さんという恋人がいる。
普通はこんなことはしない。
でも、仕方が無いじゃないか。今日は姐さん、予定が入ってるって言ってたし……
「ねぇねぇ、ここ行こ!」
「はいはい、ホテルその他類似した場所は却下ね」
「何えっちぃこと言ってるのよ?」
「おとちゃんが言ったんでしょ! つーか言ってる側からダメじゃん」
やっぱり開いたガイドブックはすべて“アレ”なスポットばかりだった。
「……いいじゃない。この前は1人で夜を過ごしたんだよ。それはそれは寂しすぎて自分を慰めようとした右手に杭を打って我慢してたのよ!」
「……」
今までよくそんなんで1人でフランスにいられましたね?
溜息しかでてこない。
はぁ~、また俺の幸せが逃げたな。
とその時、
「あれ、竜輔?」
「へ!?」
振り掛けると俺と同じくらいの年の女の子が立っていた。
「……誰?」
「わ、私よ、美佳よ!」
「うへ、美佳!?」
確かによく見ると美佳だった。
なんでわからなかったかと言うと髪はいつも後ろにまとめてあったのを今日は下ろしていて、服装はいつもは地味だったのに、明らかにヨソ行きの格好。しかもなんか大人な感じがした。
「ほぉ~、馬子にも衣装とはこのことだな」
「わ、悪かったわね」
今日も顔を真っ赤にして訴えてくる美佳嬢。
「あれ、美佳ちゃん?」
「……誰?」
俺と同じことになってるな。
「あぁ、美佳よ、この方はな……」
「ちょっと、竜輔! あなたにはラブラブ全開のカノジョさんがいたんじゃなかったの?」
「う……いや、これは違うんだ!」
「あんた、まだ女癖がなおってなかったの?」
「い、いや……」
「そうでぇ~す、竜くんは私のカレシでぇ~す♪」
ピースしながら大声で叫ぶおとちゃん。
いや、この状況であんたが喋ると話が余計にややこしくなるって!
「いや、だから……」
「ふん、見損なったわ。やっぱりあんたって女とはろくな付き合いができないのね! 氷見院さんに同情する……」
しかたない。ここで真実を言っても伝わらんだろうし、いじるか?
「そういう美佳ちゃんはどうしたの? もしかして……デート?(ニヤニヤ)」
「う……そ、それは……」
「お~い、美佳ちゃ~ん! 次行こう!」
向こうからちょい悪な感じの男が美佳に声をかけてきた。
「う、うん。じゃあ、私はこれで」
そういうと、逃げるようにファミレスを出て行った。
「……あれが美佳のタイプなのか?」
「へぇ~、あの美佳ちゃんもついにカレシかぁ~。でもちょっとヤバそうな人だったね?」
たしかに。あれは何かヤクザ屋さんに繋がっていそうなタイプだな。
と、なぜかこの前、姐さんがボコボコにしたホスト男が思い浮かんだ。
もしかして、ウチの生徒か?
なんか嫌な予感がした。
「ど、どうしたの?」
「ごめん、おとちゃん! どうしても気になることが……」
「……美佳ちゃんが気になるわけね?」
「ごめん! どこかで埋め合わせするからさ」
おとちゃんは少し考えた身振りをして、
「キス1回で!」
「却下」
「え~~~~」
そんなおとちゃんを放って、とっとと清算を済せファミレスをあとにした。
美佳はヤクザ屋の若頭(勝手に命名)と寄り添って歩いている。
というよりもあの若頭が一方的に美佳にくっ付いているといった感じなのだが。
おのれ~、よくも我が予備兵力である美佳を奪ったな! 生きて帰れると思うなよ!
2人は細い路地に入っていった。
「ねぇ、なんかやばくない?」
「むむむ。しかし、もしかして美佳は脅されてて……裏ではあんなことやこんなことをやられているかも! 許せん!」
今日も俺はなんか燃えていた。
姐さん以外のことで燃えるのはかなり久々って感じだ。
「よし、おとちゃんはやばくなった思ったらすぐ逃げてね」
「だいじょうぶぅ! 竜くんが守ってくれるでしょ?」
む~、1人ならなんとかなるかもしれないけど……自信ねぇ~~!!
せめて姐さんがいてくれたらなぁ~と思う俺って情けない?と思った俺だった。
2人が入っていった路地に入ると、すぐに鉄の扉にぶつかった。
「ここかしらね?」
「店の裏口には見えないけど……」
ノブを回してみたが開かなかった。鍵がかかっているようだ。
「くそっ、ここまでか!?」
「な~にがここまでなのかな?」
「!!!!」
後ろにグラサンの黒ずくめの男が5人立っていた。
スキンヘッドやら、角刈りやら、ロンゲやら髪型は多種多様。
口元を緩めてヘラヘラしている。
「ここは君達みたいなカップルが来るようなデートスポットじゃないよ?」
「あぁ、ここって一目がないから一発やろうって考えてた?」
「そんなら俺達が手伝ってやるよ?」
好き勝手なこと言ってくれちゃってさ。しかしおとちゃんは、
「そうでぇ~す、私と竜くんはカップルなのですぅ♪ だからヤクザ屋さんたちはあっちにいってくださぁ~い!」
馬鹿おとちゃん……。 こんな時まで一方通行のバカップルをアピールしてどうすんの!?
「ほう、嬢ちゃんが俺たちの相手してくれんの? なら、場所を移そうか?」
黒服ズの1人がおとちゃんに近寄ってきた。
もう我慢できん!
俺は黒服ズ一号(勝手に命名)の手首をつかんでねじりあげてうつ伏せに押し倒した。
「ぐっ!!」
黒服ズ一号は顎を打ったらしくうめき声を上げている。
「え~~~い!!」
おとちゃんはどこから持ってきたのか、一抱えある鉢植えを一号の頭におもいっきり振り下ろした。鈍い音がして一号は意識を失った。
うわっ、おとちゃんってそんなむごい事するんだ?
「て、てめら、よくも……」
二号発進?
ロンゲな二号は手にコンバットナイフ(というのかな?)を持ってこれまた突進してきた。
こういうのは得意だっつーの!
さらりと避けてすれ違いざまに腹に膝蹴りを叩き込んでやった。
二号の手からナイフが落ちて腹を押さえながらうずくまる。
おとちゃんはまたもや一抱えある鉢植えを持ってきて振り下ろそうとしていた。
「ちょ、待った~~~!!」
すんでのところで鉢植えを取り上げて、
「この人死んじゃったらどうすんの?」
「え~、だって私と竜くんのラブロードを邪魔をする“奴等”なんか殺していくしかないよ。血は血で……っていうでしょ?」
え~と、なんかそれなりにすごい話に持っていかれたような気がするのですが?
「あのさぁ~俺とおとちゃんはそんなに修羅の道を歩まないといけないの?」
「当然です!」
「……もういいです」
俺は二号の首筋に手刀を叩き込んで昏倒させた。
さらっとやってが、映画みたいにスムーズはいかない。
手首が少しヒリヒリする……
「これで2匹」
残った3人を見る。
いずれもまさか子供ごときにここまでやられるとは思ってもみなかった顔をしている。
「さぁ~て、どうするの? おたくら」
「ちっ、もう容赦しねぇ!!」
1人の男が懐に手を潜り込ませたと思ったら、黒くて細長い物を取り出した。
ん?あれって……チャカですか? 銃刀法違反ですよ?
といった一般論も通用するわけも無く、あっという間に追い詰められてしまった。
「うわぁ~~、それってば噂に聞く『ワルサーP-38』とかいうやつじゃないっすか?」
あれって確か3代目の大怪盗の愛銃だったはずだ。
俺は昔はあのアニメを見て将来、凄腕のガンマンになる!と言ったこともあったっけ?と当時の幼き日を思い出してしまった。
「これでお前等もTHE ENDってわけだ。じゃあな、カップルのお二人さん!」
マジですか? こんなとこで俺の人生終わっちゃうの?
まだ姐さんとはすることもしてないのに…… ここでマジで終わっちゃうの?
思わず目をつぶる。
しかし、一向に銃声も聞こえなければ、痛みも無い。
サイレンサーでもついてたのかな?と思ったが……
あれ?もしかして俺もう死んだ?
なぜか俺の頭によぎる言葉―――――
“お前はもう死んでいる!”
ふっ見事だ、ケン……
「あ……あああ……(バタンっ)」
「へ!?」
目を開けると黒服ズの残りの3人は白目をむいて失神していた。
「あれ、なんで?」
おとちゃんが何かしたわけでもないようだ。
これまたよく見ると、黒服ズが倒れた場所の後方に2つの影が立っていた。
しかもよく見知った顔。
「あれ、聡に菫ちゃん?」
「あ、ほんとだ。すみれちゃ~ん♪」
菫さんに駆け寄るおとちゃん。
よく見ると、菫さんの手には太巻きの2倍くらいの黒い物が握られていた。
「あ、あの……一応聞いておくけど、その黒いのは?」
「あぁ、これは護身用のスタンガンです。10万ボルトくらいはでるそうですよ」
平然と答える菫ちゃん。
まぁこんな可愛い子がSPもつけずに街中歩くのは危ないかもしれない。
ほんと世の中物騒のなったもんだ。
「ま、お陰で助かったわけだし、ありがとね」
「ほんと、助かっちゃった」
さすがのおとちゃんも腰を抜かしそうになるほど脱力していたようだ。
だからって俺に寄りかからないで欲しいんだけど……。
「感謝しろよ、こっちはデート中だったんだぜ?」
「わるかったな、聡。でも、君達がねぇ~(ニヤニヤ)」
「な、なんだよ?」
「……いや、何でもない」
だって、菫さんが顔真っ赤にしてるんだもん。これ以上追求したら彼女がかわいそう……
って、あやうく目的を忘れるところだった。
俺は一番意識が残ってそうな二号(勝手に命名)の胸倉掴んでビンタをかました。
「うっ……」
「おい、てめぇ! 美佳を何処にやった?」
「な、なん……なんだおま……えら?」
「うるせっ、いちいち説明するのも面倒なんだよ! さっきこの扉に入った柄の悪そうな男と髪の長い女の子、知ってんだろ!? さっさと教えんかい!」
二号は唇を歪ませながら言った。
「へっ、だれ……がおしえっかよ!」
どうやら話してくれそうにない。
よし、拷問タイムだ。(ここより先は自主規制)
10分後。
「お、おおにし……ぐるぷの……ひこ……とさん」
「んで、なんで美佳と一緒だったんだ?」
「……しら……ね……でも……ずいぶ…………んと気に入って……たぜ」
まずい、このままでは美佳があ~んなことやこ~んなことを!! ゆるせん!
「おい、この扉の鍵は?」
「ううう……」
二号はスーツのポケットから鍵を取り出した。
「おし、いくぞ!」
「うん! 竜くんの行く所なら例え火の中、水の中」
「おい、俺までいかにゃならんのか?」
「聡は無理すんな! 菫ちゃんと安全なとこで……」
「私も行きます! これで応戦しますから。(バチバチバチ)」
スタンガンのスイッチを入れながら気合十分の菫ちゃん。
おぉ、それなら頼もしいかぎりだ。
「おっし、いくぞ!」
扉の鍵を開けていざ、美佳のもとへ!
後半へ続く。




