7話 装備を買いました。
冒険者頑張るぞー!おー!
……と威勢のいいことを思ったとしても、勢いだけで冒険者が出来るかと言うと、否である。
「こっちだよぉ」
「ほ、本当にこんなところにお店があるんですの?」
「あるんだよ〜、これが。…ちょっと店主の癖が強いけど」
「何かいいました?」
「ううん、何も〜」
私はルナ先輩に連れられて通りを歩いていた。
ねど気のせいかな、どんどん裏通りの方に行ってない?あ、今装備屋らしき建物あったよ?素通りしたよこの先輩??
「着いたよ〜」
しばらく歩いて、人通りのほとんど無くなった裏通りに入ったところに、その店はあった。
ショーウィンドウもなく一見すると店かどうか分からないそこは、かろうじて鎧のマークが描かれた看板があることによって店と分かる。
「お邪魔しま〜す」
「し、失礼致しますわ…」
店内に入ると、そこには──
「な、なんですのこれは…!?」
「面白いよね〜。これも全部売り物だし、装備として十分なんだよ〜」
衣装立てに着せられてずらりと並んでいた、イロモノな衣装の数々。
私のバイト先みたいな際どいバニースーツに加え、必要最低限の面積しか守られていないビキニアーマーや、布面積のやたら少ない踊り子衣装。挙句の果てには何かしらの加護か何かが付いているらしいニップレス3枚(どこに付けるかはお察し)も商品として並んでいた。
「ん〜?客かぁ?っと、ルナの嬢ちゃんじゃねぇか」
「ゼネスおじいちゃん、やっほ〜」
ルナ先輩がゼネスと呼んだ店主が店の奥からのそのそと出てきた。その人はドワーフらしく、身長が小さいが立派な白髭を生やしており、キラリと輝く頭皮をお持ちだった。
「どうした?また衣装が壊れちまったか?」
「ううん、今日はこの子の装備を見繕って欲しいのよ〜」
「ん〜ってうお、べっぴんさんじゃねぇか」
「よ、よろしくお願いします…?」
正直私はこの爺さんが何をしてくるか分からないので警戒している。ビキニアーマーとかを着せようとして来たら、即逃げ出すつもりだ。
「ふむ…そうだな、お前さん乳のサイズはどれくらいだ?」
「んなっ!?そ、そんなことを教えるわけがないでしょう!?」
「あ〜、聞き方が悪かったな。すまんすまん。どんな装備を見繕うにしたって、サイズが合わにゃ話にならん。下手に小さいサイズのを選んで冒険中に息苦しかったら本末転倒だろう」
「あぁ、そういう…。えっと、93ですわ」
「…大体の数値で良かったんだが」
「なぁっ…そ、それなら最初に言ってくださいまし!!」
これじゃただ人前でバストサイズを発表した痴女みたいじゃん!
「アイシャちゃん、そんなにおっきかったんだ〜」
「やめてくださいまし先輩…」
「なんかすまんな。そんでお前さんはどんなスタイルで戦いたい?剣か?魔法か?それとも拳か?」
う〜ん…前世の経験だと剣術だろうか。前世で死んだじいちゃんに刀を厳しく教えられてたんだ、懐かしいな。
「そうですわね、剣を使おうかと」
「なら前衛ってこった。そんなら…よっこらせっと。…あー、あったあった。まだ新人なら懐に余裕も無いだろう、この辺りがいいんじゃねぇか?」
そう言ってゼネスさんが取り出したのは、革を素材とし、所々に金属の補強を加えたレザーアーマーだった。
「こいつなら胸と尻を縫い変えれば簡単にサイズが変えられる。値段も工賃込みで2万レソでいいがどうする?」
「意外とまともな装備ですのね…ではそれでお願いしま「ちょっと待ってね〜」すわ…?ルナ先輩?」
「おじいちゃん、この子、そこそこ予算があるのよ〜?」
「そうなのか?いくらだ?」
「え、ええと、18万レソほど…」
「なに?それならもっと上等なのを用意してられるじゃねえか、もっと早く言えってんだ」
ガサゴソと在庫を漁るゼネスさん。
「こいつはどうだ?ウォーターサーペントの革と鱗に、フェンリルの毛を組み合わせてある」
取り出したのは水色の鱗が主体となった鎧とズボンで、ところどころにふさふさした白い毛の装飾がしてある。
うん、いいじゃん。けど、けどさぁ、
「どうして胸元がこんなに空いてるんですの…?」
「通気性とサイズ調整だ。これなら多少サイズが変わっても問題なく着れる。こいつはいつかデカ乳のカワイコちゃんが来た時用に作ってた奴だな」
「言い方が腹立ちますけれど、かなり上質ですわよねこれ」
「その分値段も張るがな。10万レソだ」
「う…」
「いいじゃない。買っちゃいましょ〜」
公爵令嬢を経ても治らなかった貧乏性が値段に待ったをかけてくる。
が、ルナ先輩の誘いもあって私はこれを買った。
「まいど!」
「ふと気になったのですけど、何故これほど上等な装備があるのに店頭に飾られている装備がその、いかがわしいものばかりなんですの?」
「ん?そりゃロマンってもんよ!」
「普通にこういう装備を飾ればお客さんも増えるのでは…?」
「バカもん!男にはなぁ、ロマンを求めなきゃならねぇ本能ってもんがあるんだよ!」
言いたいことは分かるけど…う〜ん…。
「ゼネスさんのロマンというのは、こんないかがわしい装備を女の子に着せることですの…?」
「がっはっは!そんなことした死んじまったカミさんにどやされちまうよ!俺がこういう装備を作ってるのは、そういう欲望を内に秘めた女の子たちを助けるためだ!」
「そんな人いるんですの…?」
「この間は4人パーティの女の子たちがそれぞれ買っていったぞ?」
「いるんですの!?」
世界は広しとはまさにこのことだね…。
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