6話 いざ、冒険者です
今回こそは遅刻しない(戒め)
「いらっしゃいませ、どのようなご用ですか?」
「この子の冒険者登録をしたいです〜」
「かしこまりました、少々お待ちを。…はい、ではあちらの受付カウンターに行かれて下さい」
「はい〜」
今、私は冒険者ギルドに来ている。理由は単純、私の冒険者登録をするためだ!
「こんにちは〜」
「はいこんにちは。登録をしたいのはどちら?」
「この子です」
「はい。ではこの水晶に手を乗せて」
「かしこまりましたわ」
水晶に手を乗せると、ポウ…と淡く光った。
「はい、これで生体情報の登録は完了したわ。それじゃ、この紙に指示されてることを記入して」
その紙には、
・名前
・年齢
・種族
・スキル
・本拠地
を書く欄があった。
名前と年齢に加え、種族の欄があるの多種族国家である魔国だからこその特色かな。あとスキルは管理する以上知っておかないとまずいという判断かな。
あと本拠地…?
「本拠地を書いてもらうのは、万が一ダンジョンの氾濫や魔物の暴走なんかがあった場合に迅速に駆けつけることが出来る冒険者を知るためよ」
なるほど。
名前は…アイシャだけでいいや。イグルー王国時代の公爵家と縁…は切ったつもりもないし切るつもりも毛頭ないけれど、向こうじゃ事実上公爵籍から抜けてるだろうし。
年齢…17。
種族…人間
スキル…精霊調和
精霊調和とは、精霊と調和すること。
正確には、気まぐれな精霊たちと調和(大雑把に言えば仲良くなる)し、様々な恩恵を受けられるというもの。
本拠地…カルスト
この街の名前はカルスト、そしてこの冒険者ギルドの名前はカルスト冒険者ギルド、正式には冒険者ギルドカルスト支部だ。
「はい、書き終わりましたわ」
「ありがとう。アイシャさん…ふむふむ、人間族とは珍しいわね。スキルが精霊調和、あらいいじゃない」
「えぇ〜、アイシャちゃんのスキルってそんないいのだったのぉ?」
「いいもの…なのでしょうか?」
「いいものよ。単純に生存率が大きく変わるわ。…よし。はいアイシャさん、これがギルドカードよ。身分証明証になるわ。無くさないように。一般登録だから、あなたはFランクからのスタートになるわ。頑張ってね。これで冒険者登録は完了よ」
「ありがとうございますわ」
受付から離れ、自分のギルドカードを改めてまじまじと見る。
「わたくし、冒険者になれたのですね」
「そうだよぉ。ようこそ、冒険者の世界へ。なんちゃって〜」
ぼそりと零れた独り言を拾ってくれるルナ先輩。好き。
「きみ新人なんだって?俺たちと組まない?」
「え?」
なんてやってたら、チャラい声掛けされた。
その方に目をやると、そこにはいかにもチャラい男が数人。どう考えても私のカラダ目当てな奴らだった。
「間に合ってますので」
「連れないなぁ。きみ駆け出しでしょ?危ないからお兄さんたちが守ってあげようとしてるのにひどいじゃん」
「施しを受けるつもりは──「アイシャちゃんはわたしが守るから雑魚は引っ込んでてね〜」へ?」
「え?」
突然挟まれた言葉に私もチャラ男も揃って固まる。
「おいそこのメス、今なんつった?」
「だからぁ。雑魚は引っ込んでろっつったんだよカス」
「ヒッ!?な、なんなんだお前!?」
「あ、アニキ!こいつもしかして、『飛脚』のルナじゃ…」
「んなっ…!?」
「ふぅ〜ん、わたしのこと知ってるんだぁ。じゃあどうすればいいか分かるよなぁ?」
「あ、アニキ逃げましょう!Dランク詐欺には勝てませんよ!!」
「な、な、な…」
「お、俺は関係ないからな〜!」
顔を真っ青にして逃げだすチャラ男たち。
「る、ルナ先輩?」
「ごめんねぇ〜アイシャちゃん。こっちの面は出すつもり無かったんだけどぉ、アイシャちゃんにしつこく絡んでくるからつい出ちゃったぁ」
「いえ、それは助かったのですが…今のは?」
「『飛脚』のルナ。本来ならBランク相当の実力だが、昇格試験を受けずにDランクに居座る2つ名持ち。ったく、アンタはいつになりゃ昇格試験を受けてくれるんだか」
ルナ先輩が何かを言う前に、上から声がした。その方を見ると、燃えるような紅い髪をポニーテールに束ねた、左目に眼帯をした女性が2階の踊り場に立っていた。
ギルド職員の制服を着てはいるものの、滲み出る実力者のオーラがすごい。
「あ、支部長」
「よ、ルナ。今日は店はいいのかい?」
「ええ。店長が今日はお休みにしたの〜」
「そうかい、『月灯りの庭』のオーナーらしいね。んでそっちの子は?」
「アイシャちゃん。わたしの後輩なんだぁ〜」
「アイシャと申しますわ。本日より冒険者として活動させて頂きますの」
「月灯りの庭」とは、私のバイト先の店名。今思えばあからさますぎる店名ではあったな、ウン。前世含めてそういうお店に行ったことがなかったから分からなかったけど。
体に染み付いたカーテシーで支部長さんにご挨拶。
「礼儀正しいね。無法者の集う冒険者ギルドの華ってもんだ。アタシはここの支部長をやらされてるプリムってんだ。よろしくね」
「ちなみに支部長は引退した元Aランク冒険者なんだよ〜」
「そうだったのですね?道理で纏う雰囲気が違うと思いましたわ」
「昔のことだけどね。どれどれ…ほう、アンタ人間なのか。アタシの婆さんと同じだね。悪魔族や亜人たちには劣るかもしれないけど、頑張りなよ」
背中をばしんと叩いて鼓舞してくれるプリム支部長。
さぁ、冒険者の始まりだ──!
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