64話 ノルマン伯爵屋敷にカチコミです
魔物の死骸で境界付近に陣を構える部隊を脅し、もう少しで崩壊させられそうな私。
うーん、あと1個くらいあれば前線は崩壊しそうなんだけど…あ、思いついた。
「そうですわ!まだこれらが本物かどうか疑わしいのであれば、少しだけわたくしたちの実力をお見せして差し上げればよろしいですわね!剣でも魔法でも、どちらでもよろしくてよ?」
「あ、私は魔法だけでお願いしますー」
チラっと私を見たリンさんがこれに乗ってきた。
向こうはどうかというと、ハッタリだの偽物だの色々言って士気と統制を維持しようとしていた指揮官らしき人が言葉に詰まっていた。
「そうですわね、では今回はわたくしがお見せしますわ!左側の皆様?そちらに魔法を放ちますので移動した方が宜しいですわよ?」
と言うと、左側にいた騎士だか兵士だかの人たちが我先にと避難した。私は指を鳴らして早着替えの魔法を放ち(本当は動作無しで使える魔法だけど分かりやすくするためあえて動作をつけた)、バニースーツに着替える。双方からの視線が痛いけどもう気にしない気にしない。気にしたら負け!
「お、いつものアイシャさんですね」
と、他の面々に聞こえないように小声で言うリンさん。いつものやめい。事実だけど。
「こほん、それではいきますわよ?『風弾』!」
私が放った風弾は、一直線に相手の陣の土壁に飛んでいき──
ズガァン!!
という派手な音と共に、その周囲の土壁を吹き飛ばした!
…あれ、風弾ってこんな威力あったっけ?
………あ、分かった!レベッカの眷属になってるからこっちにも上昇補正がついたんだ!最近殆ど魔法使ってなかったから気づかなかった!
さて、ボロボロになった土壁を見た相手の反応はというと。
「こ、こんなの敵うわけがない!もう無理だ!!」
と逃げ出す者がついに発生。それにつられて、1人また1人と逃げ出す騎士だか兵士だかの者たち。指揮官が必死に止めているけど効果はなく。
ついに、ノルマン伯爵領の境界を守る前線は崩壊した。
「今ですわ!総員突撃!」
後ろに控えていた騎士たちに発破をかけると、彼らはワアッと鬨の声を上げ駆け出した。
尚、彼らは私が魔法を放った時、「お嬢様すげえ!」とか「お嬢様の服、すごくすごいぞ!」とか盛り上がっていた。豪胆というかなんというか、どうしてこうも差があるのか。
「俺たちがお嬢様に遅れを取ってどうする!行くぞぉぉ!」
「戦意のない者は捕縛または確保!戦う意思のある者とのみ剣を交えなさい!」
「ウォオオオ!!」
紛争や戦争だけでなく、喧嘩などにおいて、戦意の強い者と低い者がいた時。恐らく勝つのは前者である。タイマンの喧嘩ならまだ反例があるかもしれないが、実力の近い集団同士がぶつかり合う場においては、前に進もうとする意識が全体に行き渡っている方が生き残る可能性が高いことは歴史が証明している。逆に防衛する場合、死ぬ気で防衛する者と逃げ腰でする者。後者は必ず隙がある。その隙を突かれると、集団は一気に瓦解することが多い。
今回においてもそれは同じ。
精強たる我らが騎士団は、勇猛果敢に突撃を敢行、所在の敵を蹂躙し、我らレオナード公爵騎士団は反撃の狼煙をあげたものと認む!(大本営発表)
これにより、私たちはノルマン伯爵領に進入することが可能になった。
「ひ、ひいっ!い、命だけは!」
逃げ出した1人を捕まえる。めちゃくちゃ怯えてら。
「ご安心を。ノルマン伯爵の屋敷にご案内頂ければ、危害を与えるつもりはありませんの。ご案内くださること?」
「わ、分かった…。絶対だな!?」
「ええ」
後になって「あれは嘘だ」とか言いませんから安心してどうぞ。
その後、ビクビク怯えながら案内する彼に連れられ、ノルマン伯爵領内を進む。話を聞くと、彼はレオナード公爵領との境界に近い村の村長の息子らしく、ノルマン伯爵の屋敷には何度か足を運んだことがあるんだそう。それゆえ案内の足には迷いがなく、ずんずんと歩いて行く。
罠じゃないかって?
いやいや、今さっき戦意喪失させてあげた上、余計なことをしなければ危害は加えないと宣言したばかりなのに罠を仕掛けてくることはないでしょ。それに村長の息子という立場を教えてしまった時点で、もしものことがあった際に「あなたの村の人々は皆殺しにされてしまいました、あなたのせいです、あーあ」が発生しうる状態に彼自らしてしまっているんだから、まず罠を掛けてきてるという可能性はないでしょう。
…それでも一応、いつでも抜刀できるように構えておこうかな。
----------
それから小一時間程、途中で馬を借り走ったことで相当な時間短縮に成功し、ノルマン伯爵の屋敷に到着した。
これで村長の息子は用済みとして解放。彼はおっかなびっくり帰って行った。
さぁて、裏切りを唆しスパイ行為をしていた悪徳伯爵にカチコミといきますかぁ!
最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。




