65話 ノルマン伯爵、陥落です
ただいまより、ノルマン伯爵への突撃を開始する!
まずは小手調べということで、正面突破を試みる。玄関に吊るされたベルを鳴らし、使用人が出てきたところで
「レオナード公爵領より参りました、アイシャと申しますわ。ノルマン伯爵閣下にお会いさせて下さるかしら?」
これで駄目だったら強硬手段も辞さないよ。
「失礼ですが、事前の通達などはございましたでしょうか?」
「あら、内戦状態にあるというのに、敵対派閥の屋敷にわざわざ通達をして伺うことがあるんですの?事前の通達なく、突然敵対派閥の者が現れた時点で『そういうことだ』と、閣下にお伝え下さる?聡い者ならばそれで理解するはずですわ」
「は、はぁ…」
「ご理解頂けないようでしたら、このお屋敷に魔法を以て大穴を空け、無理にでも押し通りますが…いかがでして?」
「そ、それは困ります!ただいま主人の回答を頂いて参りますのでしばしお待ちを!」
「ええ、よろしくてよ」
私の服装もあるかもしれないけど、初めは怪訝そうに見ていた使用人も、私が本気だということを理解した途端大慌てで中へ走っていった。
というか私の顔と名前を見て聞いてもピンと来ないのはどうなの?普通、貴族の使用人ならせめて周辺の貴族関係者の名前と人相書きくらいは覚えておくものでは?
しばらくして。
「お待たせ致しました、主人が会うとのことですので、どうぞ中へお入りください」
「懸命な判断ですわね」
壁破壊RTAの開催は避けられたみたいだね。
そうして使用人に案内され中へ入る。
…ふむ、感知できる殺気が10人以上。もう少し隠す努力をすればいいのに。少し揺さぶってやろう。
「…18、ですわね」
「は?なにを…」
「先程からむやみに殺気を放たれていらっしゃる人数ですわ。どうかしたのかしら?」
「はて…そ、そうですな、実はつい先程、ネズミが現れてしまいまして。皆その対応で殺気立っているのでしょう」
「あら、そう。ならお客様が感じ取れる程強く殺気を放ってしまうのはいけませんわね」
「…ご忠告、痛み入ります」
使用人が何やらハンドサインを出すと、放たれていた殺気が消えた。この程度かぁ。
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「それでは、主人はこちらの部屋でお待ちです」
「そう。ご案内どうも」
「それでは入るとするかの」
…ん?
「ちょっと待ちなさい」
「なんじゃ?」
アイェェェ!?レベッカ!レベッカナンデェェェ!?
「レベッカあなた…いつからいたんですの?」
「今来たところじゃ」
「はぁ、この間からあなたという人は本当に神出鬼没なんだから…」
作戦会議の時といい、今回といい、なんで毎回いきなり私の隣に転移してくるかな。ほらもう、案内してくれた使用人も目を白黒させちゃってるじゃないの。
「そもそもあなた、自分の持ち場はどうしたんですの?」
「ちょいと本気を出して蹴散らしてきたからの、後は我がおらずとも攻められるじゃろうと思うて来たのじゃ」
「勝手なことを…」
「まあこれは冗談で、実際には向こうのリーダーから『もう我々だけでもこちらは大丈夫です、他の所の支援に回ってください』と言われてしもうたのじゃ」
え、厄介払い?
「満面の笑みで言うておったから本心じゃろ。それよりもほれ、早よ入ろうぞ」
「言いたいことは山ほどありますけれど、今はこちらに集中するべきですわね」
私はドアを開け、ノルマン伯爵のいる部屋に進入した。
「レオナード公爵令嬢…」
「失礼いたしますわ、ノルマン伯爵閣下。伝統に則れば、しばし茶を嗜みながら会談をさせて頂くところではございますが、この際これは省略して早速本題に入らせて頂きますわ。ノルマン伯爵閣下、大人しく投降してくださいまし」
「これはこれは。一体どういうことですかな。あなたが来たことと私が投降することに何の関係が?」
「わたくしがレオナード公爵領を代表して来ていること、現在わたくしと閣下が敵対関係にあること、そして事前の連絡なしにこの場にいること。これ以上にどのような理由が必要なのかしら?そもそも勘違いして頂きたくないのですけれど、わたくしは今すぐにでも閣下の首を撥ね武力を以てこの場を制圧できますけれど、そうしないのは温情を与えているに過ぎないからでしてよ?」
「ぐ…。そ、そうだ!今でこそ我々は敵対していますが、そもそもかつては王権派として手を取りあっていたではありませんか。そちらにも私への恩があるでしょう!」
「表向きは、ですわね。しかし実際には貴族派のスパイ。事実、貴族派のトップであるハロルド公爵閣下と何度も密会していた記録がありますのよ。一介の伯爵に過ぎないあなたが、どうして対立派閥のトップと頻繁に会談をすることができるのでしょうね?」
「うぐ…そ、そう!私は唆されたのです!従わなければ命はないと脅され…!」
「その際の会話の履歴も控えてありますわ。それに、唆されたといっても現に敵対している以上、容赦は致しませんわよ」
「グ…ググ…!クソッ!貴様が国外追放になったことで私の内通は完璧に隠蔽されるはずだったのだ!クソ、革命家などという邪魔が入らなければ!そうだ!この場で貴様を殺せば隠蔽は完璧になる!お前ら、やっちまえ!」
そう言うと、部屋の色々な所から武装した連中が襲いかかってきた!
しかしこちらを侮るなかれ。
「頭が高いぞ、穢れた血共」
「その程度で、わたくしを殺せるとでも?」
私と隣で黙って応酬を聞いていたレベッカで、2人同時に強烈な殺気と圧を放つ。方や魔王、方やその眷属から放たれる重圧は、いくら暗殺者や騎士と言えども人間に耐えられるようなものではなく全員が床に押し付けられた。
「ガハッ!?」「ぐあっ」「な…ガッ」
「その首、今すぐにでも貫いてやろうか」
「いけませんわよレベッカ、こういうのは少しずつ生命力を奪う方が証拠が残らないんですのよ」
「ヒイッ」
「さて、閣下?こちらに数々の内通の証拠と、他にも多数の不正の証拠がございますわ。これらを国全体に明らかにして欲しくないのであれば、大人しく投降するのが得策ですわよ」
「ぐ…ぐぅぅっ!わ、わかった…!」
「懸命な判断ですわ。わたくしが国外追放になったことで上を目指そうとしたのでしょうけれど…判断を焦りましたわね」
「クソォ…」
これにて一件落着、ノルマン伯爵、陥・落!ドドン!
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