62話 作戦が練上がったそうです
レオナード公爵領の全戦力と、ひょんなことから戦力として加わった、私を含めた冒険者を使い行われることになった、反攻作戦。
その作戦の内容を練るのに数日を要したものの、実現可能性の高い作戦が完成した。
「では、この第三作戦が最も実現可能性が高いものとして採用する。異論あるか。…ないようだな、では3日後、夜明けと共に作戦を開始する。皆それまでは存分に英気を養い、作戦に備えること。以上!」
「「「はっ!」」」
なぜ作戦の開始が3日後なのか。
それは領内の全戦力に作戦を伝達し、各騎士が作戦を実行できる状態にするのに時間を要するからである。
イグルー王国の主要な情報伝達手段は早馬であることから、魔国の魔力通信ほど高速な伝達は不可能なのだ。
しかし、嬉しいやら悲しいやら、イグルー王国の領土はさほど大きくない。だから馬車で1週間もあれば王都で乗せた令嬢を魔の森の前まで連れて来れちゃうのである。そうだね、私だね!
…おほん、話が逸れたけど。馬車の速度で換算しても、2日あれば余裕で領地の端まで辿り着ける。ということは即ち、馬車という重量物を曵かず、他馬と歩調を合わせる必要もない単騎ではどうなるかというと、半日程で領地の端に辿り着けるのだ。まあ、実際には馬の休憩とか、道が悪くて最高速を出せない区間とかあるからもう少しかかるけど。
そういう訳で、長くても1日あれば情報を領地の端に持っていけるから、作戦を書いた手紙を届けるのに1日。端の戦力に作戦が伝わり、理解するのに1日。それと私たち冒険者がそれぞれの担当場所に移動するのにも時間を要するので、合計で3日の猶予を持たせているんだ。
本当ならもっと兵站とか机上演習とか色々と決めておく・済ませておくべきことはあったんだけど、それらをする時間がないことや他領の地形もある程度は理解できていることなどの要素が重なり、とりあえず進路と部隊配置を優先して決めることになった結果、
「進撃予定進路及び担当部隊を決定す。各部隊長は各々の判断に基づき戦力の適宜増減・撤退路の策定・補給線の維持について、部隊内での会議を踏まえ構築されたし」
というなんとも曖昧な命令が飛ぶことになってしまった。ごめん前線の騎士たち、なんとか頑張って!
また、冒険者については私を含め総勢6名のうち、3名がそれぞれ北部・北東部・東部に配置される予定で、他の3名は遊撃手──つまり、手薄そうな所やピンチな所に駆けつけて援護、それが片付いたらまた別の場所へ移動する役割につく予定だ。
かくいう私も、初めは遊撃手として領内各地を転々と移動しつつ、周辺他領の掌握、もしくは戦局が安定し次第お父様の部隊に合流、スカイ第一王女殿下──私はぱーふぇくと令嬢なので頭の中でだけ王女殿下と呼ぶ、人前では王子殿下と呼ぶという呼び分けが完璧にできるのだ──を護衛しつつ、王都、そして王宮までお連れする計画なのだ。
因みに、お父様の率いる本命部隊は北西部から進撃を開始、そこから王権派貴族の領地をいくつか経由しつつ王都へ向かう予定。
これで北部・北東部・東部にはイグルー王国の人間が集団で対処する魔物を1人でボコボコにできる戦闘力を持つ冒険者が、北西部にはレオナード公爵領最大戦力のお父様(お父様はイグルー王国の中でも五指に入る程の腕前)が担当することになり、北・東方面の戦力配置がなされた。そして南東部には騎士団本部に常駐する、指揮官クラスの騎士が2名ほど派遣される予定。
そして南部は海に面しているため通常の部隊配置、南西部・西部は魔の森に接している部分なのでそもそもの配置が違うのだ。
まとめると、
・北西
ベルス子爵領に面する。お父様とミハイルを含む精鋭部隊を配置
握っている弱み:有り
・北、北東、東
コルス子爵領、ノルマン伯爵領に面する。冒険者がそれぞれ配置につく
弱み:ありあり
・南東
モンテ男爵領に面する。指揮官クラスの騎士2名派遣
弱み:いっぱい
・南
海に面している
・南西、西
魔の森
という配置になるよう計画された。そしてこれにプラスして遊撃手の冒険者が3名入るので、ほぼ冒険者頼りにはなってしまうものの反撃を開始するには十分な戦力が整ったのだ。
また、当然ながらこの世界は平面で構成されていない。何が言いたいかというと、領地の境に大きな川があったり、山に遮られていたり。または谷を通る道が主要路になっていたりするので、割と双方で戦力が1箇所に集中しがちなのだ。寧ろ全体に戦力を分散させているのは海に面する南の方や魔の森に面する西の方だけだったりする。
また、これは私や冒険者でなければ出来ない戦法だけど。
魔の森やその周辺で狩りまくった魔物の残骸。それらをマジックバッグに入れて前線に持って行き、敵兵の目の前で放り出す。
「こうなりたくなかったら降伏しろ」
と脅す計画だ。
そもそもイグルー王国の人間は、何故か平民はスキルが使えず、貴族のみが使えることになっている。これはスキルの判定機を持っているのが教会であることや教会内部の腐敗により、判定にかかる金額が膨大なこと、そして『貴族は女神から選ばれた由緒ある血筋である』というイグルー王国に蔓延る選民思想により例えお金があっても平民はスキルの判定をしないことが暗黙の了解となっており、もしスキルがあってもそれを使いこなせる平民がいないのだ。
さて、話を戻すと、例え騎士や兵士だとしても、イグルー王国の人間は魔物への耐性が少ない。それが急拵えの平民たちを含んだ部隊ならば尚更だ。
つまり、魔物の死骸をどこからとも無くその辺にポイして、「こいつら、私らが狩ったんだ。こうなりたくなきゃ、わかるよね?」と降伏勧告ができるのではないかという戦法だ。
作戦の概要は以上(所々かなり駆け抜けた気はするけど)。3日後の早朝に向けて色々と準備しよう!
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