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54話 魔の森突入です

祖国イグルー王国で窮地に立たされている家族を助けるため、その準備として装備のメンテナンスをしてもらった私。


その翌日、私を含めた数名の冒険者たちはカルストの南に広がる森──イグルー王国では魔の森と呼ばれていた──の目前で出撃の時を待っていた。


「カルスト冒険者ギルド(うち)にいる実力のある連中だけでなく、遠方の冒険者も遥々やって来て森の魔物の対処を買って出てくれた。今頃森の中で魔物を狩ってるだろう。アンタらはその隙に一気に森を突破、隣国に突入するんだ。ここまで理解できてないアホはいるかい?…いないみたいだね。それじゃ、あと5分後に正式にクエスト受注申請を受諾するからね。いいかい?アンタら、絶対に死ぬんじゃあないよ!」


支部長から作戦の概要と激励を貰い、出撃に向けての最終確認をしておく。武器ヨシ、防具(バニースーツ)ヨシ、ポーションや食料といった消耗品ヨシ、あとレオナード公爵領周辺各貴族の弱みヨシ!


「…のう、アイシャよ。なんじゃその小さな書類の束は」

「これですの?ふふ、保険ですわ」


主に各貴族の脱税の記録とか裏取引とか二重帳簿の控えとか…。いやー、バカ王子の婚約者時代に集めておいてよかったわ〜。あのパーティの日も万が一のために携行(谷間に挟んでいた)してた私グッジョブ!


……まあ、こんな形で使うことになるとはあの当時は思ってもいなかったんだけど。


「…時間だね。アンタたち、行っといで!」

「応!」

「はい!」

「行ってきます!」


時間になり、私と同じく越境する冒険者たちはそれぞれの返答の声を挙げ、森へ突入していく。


「では我らも行くとしようかの」

「そうですわね」


私とレベッカは、それに続く形で魔の森へと足を踏み入れるのだった。


----------


魔の森の中は、先に入って魔物の対処をしてくれていた冒険者たちのおかげか、ほとんど魔物と遭遇することなく進むことができていた。

魔の森に入ったのって、よく考えればイグルー王国を追放された時以来になるので相当久しぶりだなぁ。

あの時お姉様方に助けられてなかったら、とっくの昔に私は死んでいただろうね。運命とはつくづく不思議なものだと思う。


「あ、アイシャちゃ〜ん」

「その声は…ルナせんぱ…い゛っ!?」

「うん?どうしたの〜?」


聞きなれた声のする方を見てみると、なんとルナ先輩が彼女の身長の数倍はある大蛇の亡骸をズリズリと引きずりながらこちらへ来ていた。その衝撃でちょっと変な声が出てしまった。


「あ〜、これ?ついさっき仕留めたんだぁ〜。これから素材剥いで魔石取るの」

「そうなんですのね…さすがはルナ先輩ですわ」

「えへへぇ。褒めてもお小遣いしか出ないよ〜?」

「お気持ちだけ受け取らせて頂きますわ。頼りにさせて頂きますわね」

「もちろん!…って言いたいとこなんだけど〜…。わたしより強い人が結構はしゃいじゃってるからわたしの出番あんまりないかも〜」


あぁ、そういえば支部長が遠くからも援軍が来てるって言ってたっけ。

彼ら彼女らは森で魔物を狩ることで稼げる、私たちはクエストを達成させることで稼げる。WinWinの関係になってるはずなのでこちらにちょっかいをかけてくるようなことはないと信じたい!


「アイシャよ、話はそのくらいにするがよい。遅れてしまうぞ?」

「そうですわね。ではルナ先輩、また後で」

「うん、頑張ってね〜」


私たちはルナ先輩と別れ、再び森の奥を目指す。今回は魔物がほとんどいないので、魔物から逃げ回る必要がない。そのため一直線に進軍しているため迷う心配も幾分か減らせる。あと目印として何本か木の枝を折ったり木の表面に傷をつけたりしてある。これで迷うことはないでしょう。

あとの問題は、万が一魔物と遭遇した時に私は魔物を倒せるかということだね。


----------


──なんて、心配をしてたんだけど。


「はぁっ!」

「せいやぁ!」

「ぬるいわァ!」


流石に奥に行けば行くほど魔物との遭遇率は上昇し、既に何度か魔物と対峙しているんだけど。

その度にレベッカが瞬殺してしまうため私の出る幕がない。いや出る幕がらないことに超したことはないんだけどさ。


「フゥ。──む?どうしたアイシャよ。やけに複雑そうな顔をしておるではないか」

「いえ、まあ…。あれだけ意気込んで準備までしてきた手前、ここまでおんぶにだっこ状態だと少々…」

「クハハ、そのようなことを心配しておったか!安心せい、森を抜けてからはお主の出番が嫌でも来るじゃろ。それに向こうは人間族しかおらぬのであろう?ならば我も変装せねばならぬじゃろう。その際に少しばかり時間を要するのでな、余計にお主に任せることになる。じゃからここは我に任せ、お主は温存してほしいのじゃよ」

「まぁ…はい、そこまで言われては従うしかありませんわね。では頼りにさせて頂きますわ」

「うむ!任せるがよい!」


自信満々だなぁ、この魔王。まあ腐っても魔王な訳だし、私じゃちょいと手こずる魔物も楽々倒してしまうんだけど。

なおこの会話、全速力で走りながらしております。

魔王パネェっすわ…。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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