53話 準備は万全に、です
冒険者としてイグルー王国へ行くことを決め、『血の魔王』レベッカもついてくるということで血を吸われた私。
「ぁ…はぁ…」
「うむ!我の調子は最高じゃ!」
レベッカ曰く、私とレベッカは体の相性が良いということで何故か私の血を吸うと他に比べて遥に少量で足りるらしい。そのため私がスキルを使うまでもなくレベッカの吸血は終了した。
ちなみに、吸血行為で吸われると、めちゃくちゃ快楽が与えられる。性行為に匹敵するほどのそれは、自慰行為によって与えられるそれの数倍といわれ、毎回終わった頃には私の足を液体が伝っているのである!
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しばらくして回復した私は私の準備をするためお得意の店に赴いていた。
「おう、アイシャの嬢ちゃんじゃねえか。今日はどうした?」
「こんにちは、ゼネスさん。今日はわたくしの衣装の調子を見て頂きたくて参りましたわ。明日、少しばかり森に入りますので」
「森っつうと、ここの南に広がってるあの森か。危ねぇから入るな…とは言えねえな。分かった、最高の状態に仕上げてやろうじゃねえか」
「ありがとうございますわ。お代はこちらにおいていきますわね」
「おう、ありがとうな。そんじゃ、3刻くらい経てば終わってるだろうからまたそん時に来てくれい」
「かしこまりましたわ」
まずは戦装束であるバニースーツの調子を診てもらうため装備屋のゼネスさんの所へ。少し前、首都フィヨールから帰ってきた時に修理してもらってはいたので目立った破損とかはないと思うけど、万全を期すため一応診てもらう。
3刻後には出来上がるということなので、その間に次の店に行っておこうかな。
次は私の得物である『備前秀虎・天岩切』という刀──といっても脇差なのだけど──を診てもらうため、武器屋のユーリさんの所へ。彼女は武器を売っているだけでなく、自身で武器を製造するスミスでもあるのだ。
「いらっしゃいませ…って、アイシャさんじゃないッスか!お久しぶりッス!」
「お久しぶりです、ユーリさん。またこちらの調子を診ていただいてもよろしくて?」
「勿論ッス!ではお預かりするッス!」
ユーリさんは私から刀を受け取ると、真剣な目つきになり刀身を眺める。また、時折指で叩いたり布で拭ったりしている。
刀は刃物である関係上、日常使いしているとどうしても刃こぼれや錆といった劣化が進むから、私自身定期的に研いだり外見的な調子を見たりはしている。
いやー、魔国に砥石が普通に売っててよかった。それも種類が沢山あったから、前世でじぃちゃんに教え込まれた研磨や手入れの知識が活かせたんだよねぇ。
けど、幾ら外見を綺麗に整えられたとしても、内部の微細なヒビだったり金属疲労だったりを見抜ける訳じゃない。その点ユーリさんは鍛治職人であり日々様々な武器と向き合っている上、彼女自身が作り出したおもしr…珍みょ…個性豊かな武器達のメンテナンスも行っている(彼女曰く『いつか誰かが買ってくれるかもしれないので、常に最高の状態に仕上げておくッス!』とのこと)から、ダメ元で1度刀を診てもらうと、『この子の調子が分かったッス!』と満面の笑みで答えてくれた。
以降、私は定期的にユーリさんに刀の調子を診てもらうことにしているのだ。
「……うん、異常なしッス!いつ見ても惚れ惚れする調子の良さッスね!」
そんなこんなで点検は終わり、異常なしというお墨付きを貰った刀を受け取る。
「それにしても、このカタナって武器、ダンジョンからのドロップなんスよね?」
「ええ、そうですわね」
「う〜ん…ダンジョン産の武器って、錆び錆びだったりボロボロだったりすることが多いんスけど…ドロップの時点でその状態だったんスよね?」
「ええ。その瞬間から主武装として使える状態でしたわ」
「ん〜……。まあ、そういうこともあるって考える方が面倒くさくなくて楽ッスね。あ、お代は大丈夫ッスよ!?」
話を聞きながらお代を出そうとしていた私を慌ててユーリさんが止める。
「しかし、毎度毎度無料でして頂く訳にも…」
「アイシャさんの武器の手入れ、あたしにとってもいい勉強になるんでこちらとしても助かってるんスよ。だから大丈夫ッス!」
「そ、そうなのですね…」
頑なに料金を受け取ろうとしないユーリさんである。
けどこのお金を受け取る受け取らない対戦は全戦全敗していて悔しい(?)ので、しれっとユーリさんのポケットに1万レソ硬貨を入れておいた。
「ありがとうございましたッス!」
「こちらこそ、助かりましたわ」
ふふふ、後でポケットを確認しておろおろするユーリさんが見える見える。
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数刻後、ゼネスの装備屋──
「おう、ちょうどだな嬢ちゃん。ほれ、どこにも傷やほつれなんかは見つからなかった。大事に着てくれてるようで有難いこったな」
「ありがとうございますわ、ゼネスさん」
「いいってことよ。…気をつけてな」
戦闘時に身につける衣装において、布や糸のほつれは馬鹿にできない。そのほつれに絡まって動きが阻害されたり、衣服の繋がりが解けて防御力が消滅しかねないから。
ゼネスさんの小さな気遣いの声を背に私は店を後にする。
消耗品についてはレベッカと戦った時の残りがまだ潤沢なので大丈夫。
──さぁ、家族を助けに行こうじゃないの!
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