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52話 派遣要請です

『イグルー王国…。確かお前さんのいるカルストと魔の森を隔てて接してる国だったか』

「そう。朝方うちに所属する冒険者がそこの兵士を拾ってきてね、さっきそいつと話したんだが公爵騎士団…つまり公爵領を代表して支援を頼むと言ってきた」

『そうかい。放っておけ…と言いたい所だけど、放置すると色々と面倒そうだ。だが魔国全体から冒険者を派遣すると内政干渉と取られかねない。前提からして彼らはアタシたち魔人についていい印象を持っていないようだからね。そうさね…、プリム、お前さんで派遣する冒険者を選んで数人派遣する。これならギリギリ、国境関係なく活動できる冒険者ギルドからクエストを受注した冒険者がクエスト達成のために越境したと言えるだろう。だけど逆に言えばこれ以上は魔国という国家レベルの話になっちまうということだ。今言った程度であればアタシは許可するよ』

「分かった。ありがとう、所長」

『なんのなんの。いい報告を待ってるよ、プリム。今度はお前さんから直々に報告を貰いたいところさね』


プリムは水晶に込めていた魔力を遮断し通話を終了する。最後に先んじて釘を刺されたことは意識の外へ吹き飛ばし、誰を派遣するかについて考えることにした。


==========

(アイシャ視点)


「まあ、こんな感じさね」

「内戦…レオナード公爵領が…」


レオナード公爵領が敵に囲まれている。確か周りの貴族たちは纏めてかかってきた所でレオナード公爵家に勝てるような連中ではないはずだけど、もしものことがあったらお父様やお母様、可愛い弟のミハイルが危ない。勢力図は分からないけど、レオナード公爵家と敵対しているということならば、恐らくは王権派対貴族派の対立のはず。

こうして考えている間にも家族が危険に晒されているというのなら、今すぐにでも駆けつけたい。けれど私は国外追放になっているからイグルー王国へ入ることができない。もし勝手に入ろうものなら、私だけでなく私の家族までもが極刑に処されてしまう──。


「…アイシャ、アンタの身に何が起きたのか、過去を掘り下げることはしない。だけど1つだけ言わせてもらうと、この派遣は『魔国冒険者ギルドカルスト支部に所属するCランク冒険者アイシャがクエストを受注し活動する』のであって、それ以上の意味は持たないよ」

「え、そ、それは…」

「アンタにアタシら冒険者の鉄則を教えよう。『冒険者はあらゆる国家に縛られない』。冒険者という形であれば、例え海の向こうだろうが大陸の端だろうが関係なく行くことができるのさ」


──きっと、これは気遣われてるんだろうなぁ。たぶん私の過去は支部長は知っていて、その上でこうしたことを言ってくれてる。


「──でしたら、イグルー王国に支援に行っても誰も文句は言いませんわね」


ここまでお膳立てされれば、そして冒険者ギルドが自分から巻き込まれてくれたのなら、私も動いてやろうじゃないの。

ずっと心残りだったんだよね、家族と一言も会話できずに別れることになったのが。それに、イグルー王国では私が死んだことになってるみたいだし、私が死んで喜んでる連中にあっかんべーでもしてやろうかしら。


「支部長。イグルー王国への派遣に、わたくしが立候補させて頂いても?」


----------

カルスト・アイシャ宅──


「──ふむ、森を抜ける、のう。アイシャよ、それが如何に難しいことか、分からぬお主ではなかろう」

「勿論ですわ。準備は万端にして参りますし、死ぬつもりはありませんもの」

「そうか。意志は固いようじゃの。しかしのー、アイシャ程度の実力でどうにかなるか我には分からんからのー」


ちらっちらっ。


…はぁ、まったくこの放浪魔王は。大人しく『我も連れてけ』と言えばいいのに。大方、自分が出ると言ったら色々と問題になるとかそんなことでも考えてるんでしょうね。


「レベッカ、あなたにも協力をお願いしたいのですけれど…」

「む!そうか?じゃがのー、我強いからのー、アイシャの出番無くしてしまうかもしれんからの〜」

「あ、じゃあいいですわ」

「嘘じゃ嘘嘘!我も連れてってくれ!」

「はぁ、最初からそう言えばよろしいですのに…」


ちょっと前にママ…ミリアママから『姉さん(レベッカ)は調子に乗ると面倒くさいから気をつけるのよ』って言われてた理由が分かったよ。


「こほん。少々ふざけすぎたが、我は魔国の住人じゃ。故に越境には少し手間取るやもしれん。じゃから森までは共に動くが、森を抜け隣国に入ってからは我は後から合流するものと思ってくれるか」

「かしこまりましたわ」

「うむ。さて、では我も調子を整えねばの。アイシャよ、血をくれ」

「はぁ、仕方ありませんわね」


レベッカは吸血姫である関係上、定期的に血を吸わなければならない。正確には日常生活を送るだけなら血を吸わなくてもいいのだけど、スキルなどで血液を使う際は自身の造血機能だけでは血が足りなくなり飢餓に陥るため血液の補給が必要なのだ。



…その後私の家でしばらく艶めかしい声が漏れていたのは内緒の話。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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