51話 火急の知らせだそうです
カルストに帰ってきて、『月灯りの庭』でのバイトを再開した私。カルストへの帰還から一月程が経ち、レベッカという同居人が増えつつも、いつもと変わらぬ日常を過ごしていたある日。
「Cランク冒険者アイシャさん、Dランク冒険者ルナさん、緊急招集です。お忙しいところ申し訳ございませんが至急冒険者ギルドまでお願いします」
突然冒険者ギルドに呼ばれ、開店が遅くなってもいいから行っておいでというアカリ店長の判断で、ルナ先輩と共に向かう。到着すると、まだ昼過ぎだというのに冒険者ギルドは混雑しており、そして全員がなぜ呼ばれたのか分かっていないようで、騒然としていた。
「俺たちなんで呼ばれたんだろうな」
「あれ?お前も呼ばれたのか?」
「なんだ?また魔物の溢れでも起きたのか?」
冒険者たちは自分たちか呼ばれた理由を憶測と共に語り合ったり、見知った相手が呼ばれていたことに驚いたりと様々。
「やあ皆、突然集めてすまない」
するとそこへ、プリム支部長がやってきた。支部長直々に説明するって…なんか面倒事の予感。
「今日集まってもらったのは、人間族と魔族の奴らってことは周りを見れば分かると思う。その理由についてだが、端的に言おう。アンタら森を抜けて隣国に行かないかい?」
「…え?」
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カルスト冒険者ギルド・支部長室──
「ああ。アイシャ、アンタの言う通り隣国ってのはイグルー王国さ。んで、何があった、か。そうさね、どっから話すべきか…」
支部長から突如隣国へ行かないかというお誘いもとい、派遣要請があった。
ここでの隣国とは、つまり私の故郷イグルー王国ではないかと思った私は支部長にその事を聞いてみると、案の定隣国はイグルー王国だった。
「これから話すことは、今はまだアタシ達職員にしか共有されてない情報だ。他言無用で頼むよ」
「かしこまりましたわ。わたくしは口が堅い方なのでお任せを」
「ありがとう。そうだね…はじまりはこうだった──」
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(三人称視点)
時は数日前に遡る。
イグルー王国にて発生した内戦において、レオナード公爵領から魔の森へ脱走した志願兵の一団はその多くが魔物に喰われるか迷い命を散らすかの末路を辿ったが、何の奇跡か魔の森を抜け、魔国へ辿り着いた兵がいた。その兵は偶然その近辺で活動していた冒険者に保護されカルスト冒険者ギルドへ護送される。
「こ…ここは…?」
兵が目を覚ましたとき、彼は冒険者ギルドの医務室にいた。
「目が覚めましたか」
その時、カルスト冒険者所属の人間族の看護師が部屋に入ってきた。
「俺は…死んだのか…?」
「いいえ、あなたは生きております。ここは魔国、カルスト冒険者ギルドですよ」
「魔国…?知らない国だがこの際どうでもいい…。あんた頼みを聞いてくれないか…?」
「まずは治療に専念してください。大怪我とはいえ、よくあの森を生きて抜けられましたね。『ヒール』」
看護師が基礎的な回復魔法の『ヒール』を唱えると、兵の体に劇的な変化は起こらなかったものの、鎮痛の効果があったのか兵の顔から苦悶の表情が薄らぎ、やがて静かな寝息が聞こえだす。看護師はそれを見届け、厄介事の気配を感じ上司であるプリムへ連絡を入れるのだった。
やがて適切な治療と回復魔法によってある程度回復した彼は、医務室へ入ったプリムと対面する。
「あんたは…?」
「アタシはここカルスト冒険者ギルドを纏めてるプリムだ。アンタのその格好…うちの国の連中じゃないね。何があったんだい?」
「ああ…。実は──」
そして兵は彼の知る限りのイグルー王国の現状をプリムに話す。志願兵として召し上げられた際にある程度のことは聞いていた彼はイグルー王国が内戦状態にあること、自分のいたレオナード公爵領の周りは敵対勢力ばかりであること、自分は恥ずかしくも恐怖に耐えきれず魔の森に逃げ出したことを話した。
「そうか。内戦ね…。ちとまずいかもしれないね…」
「頼む…。俺はどうなっても構わない、誰でもいい、公爵閣下を…俺の家族を助けてくれ…!」
「…アンタ、それは今アンタが身につけてる勢力を代表しての頼みかい?それともアンタ個人の頼みかい?」
「俺は逃げ出したただの農民だ…。だけどこの服が効果を持つなら俺はなんだって使うつもりだ」
「分かった」
そう短く答えたプリムは医務室を離れ執務室へ。そこで彼女は『遠話水晶』と呼ばれる魔道具を取り出し魔力を込める。
『遠話水晶』とは、文字通り遠く離れた所にいる相手と話すことのできる魔道具で、まず使用者が水晶に魔力を込め魔道具を起動する。そして使用者が話したい相手を指定すると相手の持つ水晶が反応し白く点滅する。そこで受信者である相手が自身の持つ水晶に魔力を込めることで回線が開通し会話ができるようになるのだ。
『──こちらグレイシア。どうしたんだいプリム』
「所長、ちょいと複雑な話になるが、時間は大丈夫かい?」
『ああ。丁度暇になったところさ。何があったんだい?』
「実は──」
イグルー王国の公爵から、支援要請があった。
書いてて長くなったので分割します、ゴメンナサイ。
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