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閑話 イグルー王国、内戦勃発

イグルー王国。国王・王妃夫妻が外交のため出国中、その道中にあるサンライト王国で発生した事件の余波を受け、出国から1年ほどが経った今も、未だに帰国出来ずにいる状態が続いている。

そのような中で、段々と派閥競走が激化、表立った対立へと変化した。


そんな中、イグルー王国の運命を決定づける事件が発生する。

事の発端は、やはり民の不満だった。

数ヶ月前、イグルー王国を地震が襲った。その規模はさほど大きくないものではあったが、震源地に近い村落や領地では少なくない被害があった。

その震源は、かつてアイシャが学園で発表した地震頻繁地域であったことから、論文を読んだ知識人達は憤った。なぜあのような論文がありながら、王家はなんの対策もしなかったのか、と。1部の貴族は、各貴族に権限を移譲しておけばこうはならなかったと批判した。


しかし、貴族はまだしも、知識人たちはあることを思い出した。


『そういえば、対策予算が組まれることになると発表があったはずでは?』


と。かつてアイシャの論文を読んだ国王が近い内に対策を講じるとして、予算を組む指示を出していたはずだ。それはどうなった?と疑問に感じたのである。王宮に確認を求めるも、『予算については答えられない』の一点張り。

王家への不信が募った。

予算の行方についてだが、貴族派の中でも第2王子を擁する欲深き1部貴族や第2王子の私腹を肥やすために使われたとされる。


また、数年前から続いた大雨や干ばつの影響により不作となった領地への補償が行われていたが、今年はその額が大幅に減らされた。これに疑問を感じた領主たる貴族は問い合わせをするも、返ってきたのは『不作への補償はもう十分』という回答だった。現在進行形で不作に苦しむ者もいるのに、である。

民や貴族からの王家への不信が高まった。




こうして積もり始めた不信に、ある日とうとう火がついた。始めこそ酒場で人々が愚痴を零す程度だったそれは、いつしか打倒王家という訳のわからぬ大義へと変化していた。これは後世で、他国による政治介入の疑いが持たれている。


『王家は最早我が国を捨てた!国を捨てる王家に価値はなし!今こそ立ち上がる時である!』


このような自称革命家による演説が各地で発生した。人々は熱狂し、「打倒王家」という言葉はいつしかスローガンと化した。しかしこの自称革命家たちについて、その名を知る者がほぼいなかったことが後に判明している。



----------

かくして、革命の火蓋は切って落とされた。貴族派に属する1部貴族や民衆が蜂起したのである!


これには第2王子を擁し傀儡化することで貴族派の勢力をのばそうとしていた貴族達にとって想定外のことであった。彼らの目的は貴族の権限を大きくすること、つまり自分たちがより権力に溺れられるようになることで、王家そのものを排除することではない。彼らは自分たちの権力が1番と考えており、どこの馬の骨だか知らないような革命家如きに権力を渡してなるものかと反発した。

また、王権派の貴族は王家を守るために革命に反発する。しかし貴族派と手を組むかと聞かれれば、彼らは揃って「否」と答えるだろう。彼らはそもそもの原因である第2王子のことを憎んでいるまであるのだ。

あの才女であるアイシャを追放し、さらには革命などという馬鹿げた騒動を許したという失態を受け、王権派は国王・王妃、そしてスカイ第1王子のみを王家と信じるという派閥と化した。


かくして、イグルー王国は三つ巴の大内戦に突入したのであった──!


----------

そしてここに1人、限界を迎えた者がいた。


第1王子スカイである。


「レイア、私はどうすれば良かったと思う?君のお父上が貴族派につき、それでも君といたいからと王権派との調整を続けてきた。なのに、貴族派の欲に眩んだ者共はランドを次の王位につかせようとしているし、革命などという馬鹿げた思想に民は熱狂し私たちに剣を向けている。私を持て囃す貴族派だった連中はランドのせいで王権派に流れた。対立していた筈の王権派に!結局彼らは長い物に巻かれなければ自分の立ち位置すら決められなかったんだ。そして私が助けられなかったアイシャの死亡説が日に日に大きくなって…。私って、何のために存在してたのかな?もう限界だよ…」

「殿下…。例え殿下がどれだけ窮地に立たれようとも、わたくしは常に殿下のお側におります。例え国を追われようとも。それに、アイシャ様の生死に関しても、少なくともわたくしはあの方が生きておられることを信じておりますよ」

「うう…レイア…」


2人だけということもあり、普段では絶対に見せない弱さを見せレイアに抱きつくスカイ。

はじめは涙を見せていたスカイだったが、レイアに頭に撫でられる内に落ち着きを取り戻す。


そこへ大急ぎで駆けつけた近衛兵が報告にやってくる。


「ご歓談中のところ失礼致します!敵対勢力が王宮へ到達しようとしております!王都は既に落ちたものとみられております!」

「なんだって!?」

「つきましては、レオナード公爵閣下より、スカイ第1王子殿下とレイア・ハロルド公爵令嬢様を保護したいとの意向を伺っております!お二方、迅速にご移動を!」

「わ、わかった」

「殿下…」

「レオナード公爵は優しいお方だ。ご自身の愛娘を助けられなかった不徳の私を匿おうとしてくださる。レイア、行こう」

「かしこまりました。わたくしの全ては、常にあなたと」


----------

イグルー王国・レオナード公爵領・領主の屋敷──


数日後。

決死の逃避行の末、なんとかレオナード公爵領へ辿り着いた二人。


「殿下、ご無事でなによりです」

「久しくであるな、レオナード公爵。あの時そなたの愛娘を助けられなかったことは断腸の思いであるよ」

「は、もったいなきお言葉。しかし儂は、アイシャが生きておると信じておりますので」

「殿下、お部屋はこちらにご用意してあります。どうぞお使いください」

「ああ、ありがとう公爵夫人。私もできる限りのことをしよう」

「失礼します!父上…と、殿下!既にご到着でしたか!」

「楽にして貰って構わないよ、レオナード公爵令息。それよりも、何か公爵に報告があったのではないかい?」


公爵領に到着し、領主であるアルベルト・レオナード公爵、その妻であるリーリヤ・レオナード公爵夫人。そしてアイシャの弟であるミハイル・アルベルトと対面したスカイとレイアの2人。


「はっ!では父上、報告致します。先日より敵対勢力との戦闘を開始した我が騎士団ですが、志願により緊急の騎士となった者の1部が内戦の恐怖などに耐えられず逃走しました」

「そうか…。元は戦いを知らぬ民だからな。よい、逃げたことは咎めることはないと伝えよ」

「それが…」

「どうした?」


妙に歯切りの悪い表情のミハイル。


「彼らが逃げ出したのは、魔の森なのです」

「なんだと!?」

「熟練の騎士が何名か引き止めに向かいましたが…連れ帰ることはできなかったそうです」

「なんということだ…。あの森は、人間同士の争いが可愛く思える程の地獄なのだぞ…!」


戦闘慣れしていない新兵が魔の森に逃げ出したと聞き驚愕するアルベルト。それもそのはず、魔の森は入ったが最後、生きて出ることはほぼ不可能と言われる魔境なのだ。強大な魔物が闊歩し、それらを避けながら進むため迷ってしまうのだ。

これにはアルベルトも落胆を隠せずにいるが──。




──なんの因果か、偶然にも魔の森を抜け魔国に辿り着いた者の存在により、魔国で活動するとあるC級冒険者が動くこととなる。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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