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46話 カルストに帰ります

翌日。私は今日、本拠地であるカルストに帰ります。


「大変お世話になりましたわ」

「こちらこそ、色々とありがとうございました」

「アイシャお姉さん、いつか絶対に行くからね!」

「ふふ、えぇ。お待ちしておりますわ」


『月夜の兎亭』の皆さんとの別れを済ませ、建物をあとにする。まずは冒険者ギルドに行って、持ち帰る(持ち帰らざるを得なくなった)人を迎えに行かなくちゃ。荷物?マジックバッグに入れられる物は全部しまって、後は手持ち。いやー、見た目は変わらないけど持ち帰る物も増えたものだね、まったく。

魔国の歴史書に魔国がある地にかつて栄えていた国が滅亡した詳細についての本、恋愛小説に官能小説…。あ、あとカルストのみんなに渡すお土産。

え?本ばっかりじゃないかって?だってカルストよりも売ってる本のバリエーションが多いんだもん!興味を惹く本をいっぱい売ってる本屋サイドにも問題があると思います!


----------

フィヨール冒険者ギルド──


「おはようございます、アイシャさん」

「おはようございます、スピカさん。例の方はまだ起きていらっしゃらないのかしら?」

「ええ、そのようです。いかがされますか?」

「あちらのフリースペースで待たせて頂きますわ。そうそう、実は今日でカルストに帰ることにしましたの」

「そうですか。寂しくなりますね。またフィヨール冒険者ギルドに立ち寄る時までご安全に。よき冒険者ライフを!」


お決まりの台詞でカウンターを後にしフリースペースへ。ねぼすけ魔王が起きてくるまで本でも読んでいよう。ん〜と…お、これは。


昔イグルー王国に無謀にも攻め込んで、ボコボコにされた国の歴史書だ。「負けた」と書くだけでこの厚み?


----------


「すまぬの。ちと寝坊してしもうたのじゃ」

「おはようございます、レベッカさん」

「うむ。おはよう。して、カルストへはどう行くのじゃ?我はカルストにあまり立ち寄ったことがないのでな、転移はできぬぞ?」

「馬車を使いますわ。元々カルストとフィヨールの間には直行便が走っておりますので」

「そうかそうか。馬車の旅も悪くはないのう。アイシャよ、近しい者との別れは済ましたか?そうか、ならば行くとしよう」


ねぼすけ魔王レベッカは私の返事を聞くやいなや、直ぐに出発しようとしたので慌てて荷物を片付ける。

時計を見ると、次の馬車の発車まで30分くらいある。急いでもしょうがないじゃないの!


「ちょ、ま、待って下さいまし!?」


あの魔王、あとでお説教してやるんだから。


----------

フィヨール中央駅──


「間もなくカルスト行き急行馬車が発車します。この馬車が発車すると急行馬車は夕方までありませんので乗り遅れのないようご注意ください!」


カランカランとベルを鳴らす駅員。そのベルはカルスト行きの急行馬車の発車が近いことを知らせるもので、私たちは素早く馬車に乗り込んだ。

急行馬車とは、通常の馬車に比べ途中で停車する村や町が少ない代わりに通常よりも少ない所要時間で目的地に到着する種別。ただし、野盗や魔物に襲われて遅延したり、前を走る馬車がそういったトラブルに巻き込まれて遅延した影響を受けたりするのはお察しの通り。


「早く出て良かったじゃろ?」

「それはそうですが…。急行がこの時間に出ること、知ってましたの?」

「いや?たまたまじゃ。早く駅に着いた方がよかろうと考えた結果じゃな」


そんな…私は一刻毎に馬車が出ることを見越して計画を練ってたのに…。


「なんだか納得がいきませんわ…」

「クハハ、まあそれも旅じゃ。それに見よ、今回の馬車は我らの貸し切りのようじゃぞ?」


確かに言われてみれば。既に馬車は発車しているけれど、私たち以外に乗客はいない。通勤客が多い時間だと思うけど、なんでだろ。


「それは、地方に行く方の馬車だからではないかの?都市部に集まる者は多いじゃろうが、このような朝も早よから地方に行く物好きなど少なかろうて」

「それはそうですけれど…。いえ待ってくださいまし、今物好きと仰いまして?わたくしが?あとチケットの代金は後で返して下さいますわよね?」


通常のチケット代金に加え、急行料金で合計2,000レソも払っている。なんでも隠れ住んでいる内に1文無しになってしまったらしく、しぶしぶ私が立て替えたのだ。


「もちろんじゃ。カルストには旧い知り合いがおるからの。そやつに貸してもらうことにするのじゃ」

「自分で稼ぐつもりはありませんの!?」

「クハハっ、冗談じゃ冗談。真面目な話、冒険者なり娼館なり、働く道は幾らでもあるからの。瞬く間に大金を稼いで見せようぞ」


ほんとかなぁ。なんだか心配になってきたよ、私。あと娼館で働くレベッカを考えたら、なんでか分からないけどモヤモヤしたので娼館では働かないでほしい。切実に。


こうして冗談や世間話などを交えながら、和気あいあいとカルストへの急行馬車の旅は進んで行くのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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