34話 新聞を買いました
魔力通信便を使い、カルストにいる店長──アカリさんとルナ先輩に向けて首都への滞在を延長することを伝えた私。
さあ調査を始めよう、とその前に。
何か有用な情報があるかもしれないと思い、魔力通信局の隣にある『ユズリハ新聞』に赴いてみる。
その建物は4階建てで、1階は新聞を販売するスペースになっていた。
見ると、今日の夕刊が発売されていたので1部購入することに。
「すみません、1部頂いても?」
「あ、はーい。1部180レソになりますー」
この国の物価からするとやや安めな値段設定。ありがたく購入させていただきます。
なになに〜?
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ユズリハ新聞 魔暦263年○月△日発行
1面:後を絶たない失踪…首都で発生している少年少女失踪事件
最近、首都で少年少女の失踪が相次いでいる。記者の取材により、冒険者ギルドはこれが何者かによって意図的に行われた事件である可能性が高いと見ていることが判明した。失踪した子どもたちには一定の規則性があると考えられるが、未だ冒険者ギルドや国からの発表はない。幼い子どもを持つ親の気持ちは。
我が子が事件に巻き込まれたと思われる○○さん(仮名)は、「どうにかして解決されてほしい。我が子だけでなく、行方不明になってしまった子どもたちが無事であってほしい」と切実に語った。
2面:イグルー王国にて政権不安定化、クーデターの可能性
我が国と魔の森を隔てて国境を接しているイグルー王国。記者の調査により、彼の国で動乱が起きようとしていることが分かった。かつてより貴族の権利増大を主張する貴族派と王家への集権を主張する王権派の対立が発生していたイグルー王国。以前は均衡を保っていたが、第2王子の婚約破棄騒動によってそのバランスが崩れたことは知られている通り。これまでは睨み合いが続いていたが、1部過激派によるクーデターの予兆があることが判明。隣国が内戦状態に陥る可能性が高く、我が国への影響が懸念されている。
尚、第2王子の婚約破棄を受けたアイシャ・レオナード公爵令嬢の行方は未だ判明しておらず、既に暗殺などの手段により死亡しているという説が有力となっている。
3面:サンライト王国前女王エリカ・サンライトの処刑から半年、「正義は果たされた」
大陸の人間族支配領域における中央に位置するサンライト王国。かの国で稀代の悪女と評されたエリカ・サンライト前女王が処刑されて半年。現女王シェリル・サンライトとその伴侶であるシドル・サンライトは各国外交官との会合において、「正義は果たされた」と述べた。これはエリカ前女王の処刑が正しいものであったという見解の現れであると考えられる。国民の処刑を求める声に流されたのでは、という外交官の疑問に対しシェリル女王は「私は姉が変わってしまったのを最も近くで感じていた。しかし処刑が急であったことは心残りではある」と述べ、血を分けた姉妹の複雑な心境を露にした。
4面:ホルク王国・サフィル侯爵家別邸放火事件から3年…犠牲となった少女が伝えた「火災の新常識」
我が国と魔の森を隔て国境を接するホルク王国。かの国で聖女の誕生という喜ばしきことがあった一方で、その聖女でさえも救うことのできなかった少女の死という痛ましい結果が残った、サフィル侯爵家別邸放火事件から早3年。この事件が世界に与えた衝撃と教訓は大きく、今も記憶に鮮明である。火災が密室で発生した際に、窓を開ける等をして急激に空気が送られることで火災が爆発的に広がるという現象が確認され、それまで常識と考えられていた「開口部を大きく開き中に突入する」という対策を根幹から覆す新常識によって、世界の防災意識は大きく変わることとなった。
また、 王子である人物が元婚約者はおろか、現婚約者までもを殺害する目的で火を放ったという醜聞は大陸中に広まり、ホルク王国には批判が集まった。
5面:最近話題の書籍はこれだ!書店に聞く売れ筋について
このコーナーでは最近売れている・話題となっている書籍についていくつかピックアップして紹介する。
1.悪女物語
この本はサンライト王国の2人の王女を巡る物語である。一貫してエリカが悪、シェリルが善として描かれており、サンライト王国の民衆に与えた影響は大きいといわれている。著者:ライサ・エイリー
2.魔国の観光これ1冊!魔国観光ガイド
広大な国土を持つ我が国、魔国。それ故、国土の端と端では文化や種族などが大きく異なる。この本はそんな魔国を上手に観光するためのガイドブック。これを読めばあなたも魔国中を巡った気持ちになれるかも?
著者:フェルナンド・アローン
3.嘘つきライア
ホルク王国で発生した放火事件をもとに著された物語形式の1冊。犠牲となった少女に指導を受け、最期の瞬間を共に過ごした聖女本人によって著された本書は、聖女の少女に対する愛が伺える。また、当時の状況を詳細に描いたことで人々の防災意識の向上に一役買っている。発売から1年以上が経過した今も愛読者が絶えないロングセラー。
著者:ディアナ・ティガ
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早速1面から事件についての記載があったけど、特に有用な情報はなかった。
それどころか、故郷であるイグルー王国がとんでもないことになっていることが分かってしまった。私を追放して貴族派の令嬢が王子妃の座に収まったことで貴族派の勝利で終わりじゃないの?
もしイグルー王国が内戦になったら、きっと私の家族──レオナード公爵家やそこで働く使用人たち──はもちろんのこと、私を助けようと尽力したスカイ殿下までもが狙われる可能性がある。
しかし今の私はただのアイシャ。それに国外追放を受けているのでイグルー王国に入ることすらできない。心苦しいけれど、私にできることはないと諦めて。
目の前のクエストをこなさなければと気合いを入れる。
けど、思ったよりまだ情報が出回っていないようで進展はなし。
地道に調査しないといけないってことなんだなぁ。
この時点での世界の状況についてを説明することができればと思い、新聞記事という形で紹介させて頂きました。
私の過去作を読んだことがある方は「あれ?」と思ってもらえたら嬉しいなって。
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