表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/44

32話 いなくなったミミちゃん

首都滞在7日目──


今日も朝から元気なミミちゃんの「いってらっしゃい」を受けながら『月夜の兎亭』を出発する。今日は予定では首都滞在の最終日となっている。結局、依頼を受けるかどうかの結論は今日になっても出なかった。でも、きっと私よりも実力も知名度もある冒険者が調査をするはずだと考え依頼は断ろうと思う。


冒険者ギルドへ向かい、朝の少しひんやりとした空気の中、通勤する人や物売りが少ない通りを抜けギルドの入口へ入る。


中はやはりまだ人が少なく受付カウンターも空いている。最近よくお世話になっている受付嬢──ステラさんという──の元へ向かい、


「おはようございますアイシャさん。今日はどうされますか?」

「すみません、依頼の件で来たのですけれど」

「はい。…それで、いかがされますか?」

「大変申し訳ないのですけれど、断らせて頂きますわ。これ以上向こうを空ける訳にもいきませんので…」

「そうですか…。かしこまりました、ではまた機会がありましたらぜひ。それと、今日はどのクエストをされますか?」

「そうですわね…」


依頼を断ったあと、短時間で出来そうなクエストをいくつか受注した。これならお昼すぎには達成できるだろうし、夕方にはカルスト行きの馬車に乗れるだろう。


==========


クエストを吟味するアイシャとほぼ時を同じくして、街に繰り出す小さな影が一人。

『月夜の兎亭』の女将であるラビよりおつかいの指示を受けたミミである。彼女は母から受け継いだ純白の髪を腰までのばし、兎獣人と魔族のハーフが故に母よりも少し小さな兎耳をぴょこぴょこと揺らしながら、そして鼻歌を歌いながら彼女は街を歩く。


通勤で急ぐ大人たちとぶつからないように気をつけながら、彼女は朝市へと向かう。朝市ではその日採れた新鮮な青果や野菜、鮮魚など様々な物が売られている上、市場のおじさんやおばさんたちが頑張るミミによくおすそ分けと称して軽食を恵んでくれるため、彼女のちょっとした楽しみの1つとなっている。


無事に母からのおつかいを済ませた彼女は帰路についた。少し重たいが夜にはこれが美味しいご飯になるのだと自分を奮い立たせ頑張って持って帰る。その道中のことである。


母からはできるだけ人通りの多い道を通りなさいと言われていたミミ。しかしそのような大通りは遠回りで、より近道だが人通りの少ない道があることを彼女は知っていた。荷物が重く少しでも早く帰りたかった彼女は母の言いつけを破り、その人通りの少ない道を通って帰ることがよくあった。

今日も近道で帰ろうとした彼女。

しかし路地裏から突然、黒い服を着た男たちが現れる。

彼らはミミの背後から近寄り、それに気付かない彼女の口をその手で塞いだ。


(えっ、な、なに!?)


突然のことにミミが動くことができずにいると、1人の男がミミには聞き取ることのできない言語でボソボソと何かを呟く。

それは何かの魔法の詠唱だったのか、その瞬間ミミは意識が薄れていくのを感じた。


(あ、れ…なん…で……)


意識を失ったミミを手早く布袋に押し込んだ男たちは再び路地裏へと消える。後にはミミの買った食材たちだけが転がっているのだった──。


==========


予想通り昼過ぎにクエストを終わらせた私。報告も終わり、今は荷物をまとめるため宿に戻っているところ。

きっと宿の玄関を開ければまたミミちゃんの元気な「おかえりなさい」が待っていると期待して『月夜の兎亭』の玄関を開けた私は、自分の期待が外れたことを理解した。


普段はおっとりしているラビさんが顔を真っ青にして項垂れていたのだ。これは只事ではない何かが起きたのだと思い話を聞くと。


「ミミが、ミミがおつかいから帰ってこないの!普通なら遅くてもお昼には帰って来るはずなのよ。なのに今日はこの時間になっても帰らなくて。何かあったのかしら…」


明らかに取り乱しているラビさんをとりあえず落ち着かせる。きっと買い物に時間がかかっているんでしょうと宥めながら、私は1つの可能性を考えた。


『最近、長命種の少年少女の失踪が相次いでいるんです』


それはつい先程依頼を断った事件。ラビさんやミミちゃんのような兎獣人をはじめ、獣人族は寿命が長い。だからラビさんはこう見えて長い時間を生きている……なんて話はどうでもよくて。


ミミちゃんもハーフとはいえ獣人族の血を引いているのだから、失踪している子供たちと特徴は一致している。

だからこそミミちゃんも被害者となってしまう可能性があったにも関わらず、その事を少しも思わなかったのは『ミミちゃんなら大丈夫だろう』というある種の正常性バイアスが働いたからか。


1連の事件とミミちゃんの失踪は無関係でない気がする。そう思った私は、今日断ったばかりの依頼を受けることにした。同時にラビさんに、


「わたくしも冒険者として調査をしてみますわ。もしかしたら何か手がかりが掴めるかもしれません」


と声をかけた。



ミミちゃんは絶対に見つけて、無事にラビさんの元に帰してあげたい。私はそう固く心に誓い、冒険者ギルドへ向かうのだった──。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。


累計4,000pv突破感謝であります!いつも読んで下さる皆様のおかげでございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ