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31話 クエストの相談だそうです

首都滞在4日目──


私は首都にいる間、簡単な狩猟クエストや採集クエスト、たまにCランク以上が受けられる討伐クエストを受けて過ごしていた。

採集クエストや狩猟クエストは目標より少し多めに狩って『月夜の兎亭』に余りを寄付した。ミミちゃんやラビさんの笑顔が見られるなら安いもんよ。ケイさん?あの人の笑顔は人をダメにする、整いすぎている!


と、そんなこんなで過ごしていたところ。


「指名クエストの相談…ですの?」

「はい。詳細は上司の方から説明するとのことですので、ご都合が宜しければ奥の応接室までお越しください」


いつものように納品と達成報告をしに来たら、こんなことを言われた。応接室とはギルド1階、受付カウンターの奥にある部屋で、フリースペースの脇にある通路を通って行くことができるそう。

特に用事もないしまあ話くらいは聞いてもいいかな。もし時間がかかりそうなら断ればいい話。流石に7日間も『月灯りの庭』の仕事を休んでるのに、これ以上長期滞在する訳にはいかないのだ。


案内された応接室で待つこと数分。ノックと共に開けられたドアから現れたのは、スキンヘッドに眼帯を付けた、屈強な大男だった。


「ああ、すみません。お待たせしました」


その男は見た目とは裏腹に、丁寧に頭を下げた。こちらも自然と背筋がのびる。


「アイシャさんですね。私はハルト、ここ冒険者ギルド魔国本部の管理部長をしています。まあ、お偉方と思って頂ければ結構です」


そう言ったハルトさんが握手を求めてきたので、応じない訳にはいかないと思い手を握る。掌のゴツゴツとした感触とその力強さから、彼もまた冒険者である、またはあったことが伺える。


「今回お呼びしたのは、とある調査のクエストを依頼したく。といいますのも、最近この周辺でとある事件が頻発しているのです」

「事件…ですの?」

「はい。その内容は、少年や少女らが相次いで失踪しているというもの。それも、ここ数日間という短期間に5人以上が、さらに獣人や悪魔族など、長命種の子どもばかりが失踪しているのです」

「それは…確かに不自然ですわね」

「そうでしょう。ですので我々ギルド側もこれを事件と判断し、調査をすることに致しました。そこで推薦があったのが…」

「わたくしというわけですわね」

「そうなります。本来であればここ本部を拠点とする冒険者に任せたいところでしたが、生憎住人の方々に聞き込みをしたり子どもたちから怖がられなかったりする人相の良い者で素行に問題のない冒険者が全員出払っておりまして。ならばと所長の推薦でアイシャさんの名前があがりました。このような理由であなたに調査を依頼したいというわけです。勿論強制は致しませんし、断ったからといって何か不利益が発生することはありません」


お話とはクエストの依頼についての相談だった。なら首都を拠点にする冒険者たちに任せればいいじゃないと思ったけど、そうもいかない理由がある様子。だけどもこちらにも予定がある。3日後にはカルストに帰る予定だし、宿は3日後までしかとっていない。宿に関しては追加料金を払うことで延泊できるけど、ルナ先輩や店長にかなり無理を通してもらって休みを貰っているのだからこれ以上迷惑をかけたくない。


でも子ども達が危険に晒されているし被害がこれからも発生する可能性がある上、ギルド本部の所長からの推薦を簡単に蹴ってもいいのかという葛藤が即座に断ることを躊躇わせる。

結局口に出た返事は──


「少し時間を頂けます?こちらの予定と比較して受けるかどうか考えますわ」

「かしこまりました。ではお受け頂ける場合は受付でお申し付け頂ければ受注の処理をいたします。先程も申し上げた通り断っても不利益は発生しませんのでご安心ください」


その会話を最後に私は応接室から退室した。

今は断る気持ちの方が大きいから、明日にでも断ろう。


----------


『月夜の兎亭』の玄関扉を開くと、やや軽い「キィ」という音が響く。その音を聞きつけたミミちゃんが現れて、


「アイシャお姉さんおかえりなさい!」


と元気いっぱいにお出迎えしてくれた。


「ふふ、ええ、ただいま戻りましたわ」


頭を撫でると「ふにゅ〜」と鳴くのはいつものこと。

それにしても、子どもの失踪ね…。少し前の私なら自分には関係ないからと即断っていただろうに、何故1度持ち帰ることにしたのか。それはきっと、ミミちゃんと仲良くなったからだろう。

ミミちゃんくらいの年齢の、未来ある子どもたちが失踪する。もしも明日ミミちゃんが行方不明になったらという想像が依頼を断ることを躊躇わせる。


依頼を断って予定通りにカルストに帰る?

それとも依頼を受けてさらに店長やルナ先輩に無理を言う?


私はどうするのが正解なんだろうか──。

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいねでの応援・星評価・感想コメント等をいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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