24話 首都に行きます
数日後──
「それでは、行って参りますわ」
「行ってらっしゃい!楽しんでおいで〜」
「お店はわたしたちで切り盛りするから気にしないでね〜」
お昼の内にお店の清掃や準備を終わらせた私は、旅立つためしばしの別れを告げる。店長とルナ先輩は快く送り出してくれた。
私は着替え数着(日常生活は普通の服を着てても大丈夫、戦闘力が下がるだけ)とバニースーツ、一応名刺、冒険者カード、そして支部長から押し付…持たされ…お預かりした書類をマジックバッグに仕舞っているため一見軽装に見える。
余談だけど、魔国では冒険者カードを使って支払いが出来る。流石に屋台とかは無理だけど、そこそこのレストランとか店では冒険者カードを専用の機械にかざすと冒険者カードに紐付けられている口座から金額が引かれる仕組み。これは前世のクレジットカードとか交通系ICカードみたいな感じだ。ファンタジー万歳!
しばらく歩いて、馬車駅へ向かう。受付──前世でいうところの、昭和の改札のような感じだった──で冒険者カードを提示すると本当にチケット無しで通れた。冒険者ってすごい。
「首都直行便は…おおよそ10分後ですわね」
10分ならあっという間だ。最近買った本でも読んでいようか。確かマジックバッグに入れたはず。ん〜と…お、あったあった。
「『うそつきライア』…。嘘つきとかけてますの?…いえ、たまたまみたいですわね」
何気なしに読み始めたところ、どう足掻いても10分では読み切れない内容だったので馬車の中でも読むことにする。
読み始めてまだ10ページくらいしか読んでいないけど、馬車の時間になったので1時中断。他の乗客と共にいそいそと馬車に乗り込む。他の所へ行く馬車はどうかまだ分からないけど、首都行きの乗合馬車は幌付きで所謂ロングシートの構造。そしてシートにはなんとクッション付きだった!
私がイグルー王国から追放される時に使われた王家所有の馬車でさえ座席は木の硬いシートだったのに、こちらは首都と地方都市を結ぶ路線とはいえ民間向けの一般的な馬車にも関わらずこのクオリティ。
前々から思ってはいた国力の違いを見せつけられた気分だ。もう国外追放になって祖国への愛は枯れ果てているからそれ以上の感想はないけれど。
「間もなく首都行き直行馬車が発車します。お乗り遅れになりますと次は次の刻になりますよ!」
馬車駅の駅員が手持ちのベルをカランカランと鳴らしながら、馬車の発車を知らせる。乗り遅れた乗客が居ないことを確認すると御者が馬に合図を入れ、馬車は静かに発車した。
今回の便の馬車に乗っているのは、私を含め6人。
まずはどことなく制服を連想させる服を着た龍族の女の子。とはいえ龍族は寿命がとても長いらしいので実年齢は私よりも上かもしれない。龍族は種族的特徴として頭から鹿っぽい角が、そして腰からは鱗に覆われた長い尻尾が生えている。それが大変かっこいいのだ。まあこういった背もたれのある座席は辛いかもしれないけど。
次に民族的な衣装に身を包んだ悪魔族のおばあさん。
悪魔族と淫魔族は外見的に似ているけれど、前にミリアさんたちに尻尾の形と羽の大きさで判別できると教えられた。あと男性だったらまず間違いなく悪魔族とも教えられた。淫魔族の尻尾は先端がハート型になっているのに対して、悪魔族は先端が鏃の形になっている。おばあさんの尻尾は鏃型なので悪魔族というわけだ。
そして私の向かい側に座っている、狐の獣人族であろうお姉さん。
と、その娘さんと息子さんらしき子ども2人。
退屈そうにしている男の子と女の子を宥めるお母さんといった感じで大変そう。
ここまでの5人に私を含めた6人での旅路となる。
あと、流石の私でも今はバニースーツは着ていない。普通の女性用のファッションだ。というか今回は男性があの男の子だけで他は全員女性だったから良いものの、これがもし周りが全員男性で私がバニースーツを着ていたら、それは「犯してください」と言っているようなものだし、首都に到着する頃にはエ○同人みたいな惨状になっているだろう。そんな環境でバニースーツなんて着ていられる訳がないのだ。
…なんて脳内で大きな独り言を喋りつつ、私は読書に励んでいる。え?本の内容理解できてるのかって?
元公爵令嬢を舐めるでない。ライアやディアナ、アンナといった主要な登場人物の生い立ちや関係図は、全てインプットしている。
既に物語は佳境に入っており、起承転結でいうところの転と結の間くらい。
馬車の旅はまだまだ続くので、読み切ったらどうしようと考えつつ読み進めているところ。
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30分後くらい。
読み切ってしまった…。
面白い小説だと思っていたら、最後に
『この物語は事実に基づいて製作されています。願わくば、この物語が聖女の愛した、自分に嘘をつき続けた少女に届かんことを。ディアナ・ティガ』
って書いてあって大変びっくりしました、はい。
正直物語の余韻に浸っていたいけど、首都直行便とはいえ魔物や盗賊などの襲撃に遭わないという確証はないので何時でも出れるように準備をしておく。C級以上の冒険者が馬車に無料で乗れるのには、こういった理由もあるらしい。無料で乗る代わりにもしもの時は守ってくれということなんだと思う。
馬車の旅はまだ始まったばかり、この先何の問題もなく首都に着きますように──。
本編中に出てきた「うそつきライア」のお話は、分かる人には分かる内容になっています。具体的には、作者の過去作にその全てが記録されています。良かったら読んでね(˙▿˙)
↓過去作URL↓
「私はどうせ、代わりだから。」
https://ncode.syosetu.com/n2819lj/
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